シンカー:日本の生産動向は輸出の需要に左右されているという印象が強い。しかし、国内のサービス消費に左右される度合いが増してきているようだ。国内のサービス消費の需要が拡大するにつれて、必要となる財の需要が拡大してきた。デジタル革新により、サービス消費の拡大に、デジタル関連製品を中心に、より多くの財が必要になってきているとみられる。鉱工業生産指数の動きは、経済産業省予測指数、在庫率指数、そして実質輸出で説明し、予測をするのが通例であった。近年は、日銀消費活動指数、景気ウォッチャー調査、政策金融公庫中小企業貸出態度DIなど、内需関連の指標を予測モデルに加える必要が出てきている。実質輸出はかなり回復し、水準は過去最高になっている。しかし、生産活動の強さが戻るには、内需のしっかりとした回復が必要である。米国を中心に外需の動きばかりにとらわれて、内需の分析をワクチン接種率だけで済ませていると、日本経済の動きを見失うリスクがある。緊急事態宣言が期間延長・地域拡大される可能性が、経済活動の弱体化が懸念される。企業のリストラが再発し、3%程度で耐えている失業率が上昇してしまうリスクがある。生産の強い拡大には内需のしっかりとした回復が必要だ。経済対策の補正予算で企業・家計への支援を拡大することが急務になっているようだ。
6月の鉱工業生産指数は前月比+6.2%と、コンセンサス(同+5.0%程度)を上回る結果となった。半導体不足の影響で自動車工業の生産が大きく減少するなどして弱かった5月の同―6.5%からリバウンドした。自動車工業の生産は5月の同-19.4%から6月の同+22.6%へリバウンドし、半導体不足の影響が緩和してきている。5月はゴールデンウィークが緊急事態宣言下であったため、休日を長めに設定し、生産を止めたところもあったとみられ、6月には反動で増産となったようだ。6月の在庫指数が∔2.3%と、3か月ぶりに上昇し、これまでかなり抑制されてきた在庫水準を復元する動きもみられる。
6月の実質輸出は前月比+0.5%と増加トレンドが続いている。半導体不足で出荷が遅れていた自動車の輸出が持ち直した。一方、機械投資の拡大の追い風を受けてきた資本財、デジタル投資の拡大の追い風を受けてきた電子部品・デバイスの輸出の増勢に、半導体不足の影響などが出て一服感が出ている。7・8月の経済産業省予測指数は同-1.1%・∔1.7%と、増勢トレンドが鈍化する予想となっている。経済産業省は「生産は持ち直している」と引き続き判断した。生産の拡大が強くなるには、半導体不足などの供給制約の解消が必要となる。
日本の生産動向は輸出の需要に左右されているという印象が強い。しかし、国内のサービス消費に左右される度合いが増してきているようだ。国内のサービス消費の需要が拡大するにつれて、必要となる財の需要が拡大してきた。デジタル革新により、サービス消費の拡大に、デジタル関連製品を中心に、より多くの財が必要になってきているとみられる。鉱工業生産指数の動きは、経済産業省予測指数、在庫率指数、そして実質輸出で説明し、予測をするのが通例であった。
近年は、日銀消費活動指数(プラス)、景気ウォッチャー調査、政策金融公庫中小企業貸出態度DIなど、内需関連の指標を予測モデルに加える必要が出てきている。実質輸出はかなり回復し、水準は過去最高となっている。しかし、生産活動の強さが戻るには、内需のしっかりとした回復が必要である。米国を中心に外需の動きばかりにとらわれて、内需の分析をワクチン接種率だけで済ませていると、日本経済の動きを見失うリスクがある。緊急事態宣言が期間延長・地域拡大される可能性が、経済活動の弱体化が懸念される。企業のリストラが再発し、3%程度で耐えている失業率が上昇してしまうリスクがある。生産の強い拡大には内需のしっかりとした回復が必要だ。経済対策の補正予算で企業・家計への支援を拡大することが急務になっているようだ。
各説明変数の標準偏差に係数を掛けたものの絶対値で、鉱工業生産に対するインパクトを計測する。大きい順に、予測指数(3.64)、先行き指数(1.04)、日銀消費活動指数(0.90)、在庫率指数(0.86)、中小企業貸出態度DI(0.71)、景気ウォッチャーDI(0.46)、実質輸出(0.28)となっている。生産の予測に内需指標が必要になっていることがわかる。
鉱工業生産指数=23.0+0.71予測指数-0.22先行き指数-0.09在庫率指数(1ラグ)+0.04実質輸出+0.24日銀消費活動指数(1ラグ)+0.06景気ウォッチャーDI+0.71中小企業貸出態度DI+1.5アップダミー(1標準誤差以上)-1.6ダウンダミー(-1標準誤差以下); R2=0.99
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岡三証券チーフエコノミスト
会田卓司
岡三証券エコノミスト
田 未来