「株価上昇期待度が高い」企業ランキング 3位ソフトバンク、2位東電、1位は?
(画像=Tupungato/stock.adobe.com)

東洋経済オンラインが興味深い調査データを発表している。「投資信託に買われた日本企業ランキング」だ。高い投資成果を目指す投資信託で買われているということは、それだけ株価上昇の期待度が高いということになる。実際、どのような企業が買われているのか。

資産運用会社と投資信託の関係について

「投資信託」(投信)は金融商品の一種で、資産運用会社の専門家が運用している。個人投資家はその投資信託を購入・保有することで、プロに資産運用を任せることができる。購入する株式銘柄を選びきれない人などにとって、おすすめの投資方法であると言える。

投資信託には「アクティブファンド」という種類の投資信託があり、アクティブファンドでは資産運用会社の専門家が投資する株式銘柄などを機動的に選ぶ。そのため、アクティブファンドでどの銘柄が多く買われているかを知ることができれば、専門家が株価上昇を期待している銘柄を知ることができるというわけだ。

東洋経済オンラインによるランキング結果を紹介

では、東洋経済オンラインはどのようにして、「投資信託に買われた日本企業ランキング」を作成しているのだろうか。

東洋経済オンラインが参考にしているのが「会社四季報」だ。会社四季報には上場企業の株主情報が掲載されており、それを網羅的に分析して前年と比べると、どの企業がどれだけ投資信託で買われたのかを知ることができる。

では早速、ランキングを紹介していこう。最新ランキングでは、2020年10月~2021年3月と2019年10月~2020年3月の期間を比較し、投資信託に買われた株数がどれだけ増えたかで順位付けをしている。

「株価上昇期待度が高い」企業ランキング 3位ソフトバンク、2位東電、1位は?

上位3社の株価はその後、上昇した?

1位は日産自動車、2位は東京電力ホールディングス、3位はソフトバンクという結果となった。では、これらの3社は実際に株価が上昇しているのだろうか。

ランキングで分析の対象となったのが2020年10月~2021年3月であるため、2021年4月以降に株価がどのように推移しているか、紹介する。

1位の日産の株価の推移:やや下落基調

日産はカルロス・ゴーン元会長の逮捕と逃亡劇もあり、2020年前半にかけて大きく株価が下落していた。その後、2020年11月ごろから2021年2月ごろにかけて株価が急回復を見せたが、2021年3月以降は株価がやや下落基調となっている。

そのため、2020年11月以前に日産の株式を買った投資信託は大きな成果に結びついているが、2021年2月以降に同社の株式を買った投資信託は、期待していたような成果を出せていない。

2位の東京電力ホールディングスの株価の推移:右肩下がりの状況

東京電力ホールディングについては、2019年1月をピークに、株価は2020年12月にかけて下落一辺倒だった。業績の落ち込みが主な理由として挙げられるが、2021年3月期の最終損益は回復した。そのような背景もあり、株価が底を打ったとみた「押し目買い」により、多くの株式が投資信託で買われたとみられる。

では2021年4月以降の株価の推移はどうか。残念ながら右肩下がりの状況となっている。2021年9月時点では、2020年12月の底までは株価が下落していないものの、今後の上昇のためにはさらなる業績の回復が必要となりそうだ。

3位のソフトバンクの株価の推移:見事に株価が上昇

3位にランクインしたのは、通信大手のソフトバンクだ。ソフトバンクに関しては、2021年4月から6月にかけては横ばいの状況が続いていたが、その後は見事に株価が上昇した。投資信託のファンドマネージャーもほっと胸をなでおろしていることだろう。

投資信託で買われたからといって、確実に株価が上がるわけではない

このようにして上位3社の最近の株価の推移を比較してみると、決して株価が右肩上がりの企業ばかりではないということが分かる。ただしこの点については、この期間の株式市場の相場全体が強気相場か弱気相場かにもよるため、一概に「選球眼が悪かった」とも言いにくい側面もある。

一方で、分かってもらいたいこととしては、投資信託で多く買われた銘柄だからと言って、決してその後の株価の上昇が約束されているわけではないということだ。もちろん、銘柄選びの参考材料にはなるが、実際に購入する銘柄を選ぶ際には、さまざまな視点から分析を行うことが求められる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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