家業を継ぐメリットとデメリット
家業を継ぐ場合には、自分自身で事業を立ち上げる場合とは異なるメリットとデメリットがある。
家業を営むメリット
・家族経営がベースの組織力で自分の裁量で仕事ができる
家業を継ぐ場合、会社・個人事業主のどちらにしても家族経営がベースとなる。そのため組織としての規模は小さくても結束力は強い傾向だ。コミュニケーションもとりやすく家族全員で一丸となって事業に取り組める。事業展開を含め軌道修正もしやすく事業の方向性を自分の裁量で定めることが可能だ。
またサラリーマンのように時間的・場所的な拘束性もないため、家族の協力が得られれば自分の裁量で自由に仕事ができる。
・経営基盤ができているためリスクが少ない
先代から受け継いだ経営基盤がすでにあるため、リスクが少ないことが挙げられる。親の代からお世話になっている固定客がたくさんいることは、事業を行ううえで大きなメリットだ。親の突然死などで家業を引き継いだ場合は別だが、技術やノウハウを先代から学ぶこともでき相談もできる。固定客をうまく引き継げれば一定の経営基盤がすでに確保されていることは心強い。
・事業収益を独占できる
事業が順調であればサラリーマン時代よりも収入が増える可能性がある。通常の会社では、事業収入を自由に処分することはできない。しかし家族経営の会社は、も多くが家族労働であり事業で得た収益は一緒に働いている家族へ分配できる。
・不景気に耐えられる
家族経営の場合、事業が一時的に不調になっても柔軟に対応できる。収益が悪化したとしても自分たちの報酬を減らすことで事業の継続を優先できる柔軟さがある。
通常の会社のような離職や解雇などの労使トラブルによるリスクはないといってもよいだろう。生活ができるだけの収入が確保できれば不景気にも強いといえる。
・定年退職がない
近年は、経営者の高齢化に伴い70~80代の経営者も珍しくない。家族経営の事業には、定年退職はないため、引き際は自分で決めることになる。健康であれば何歳になっても仕事を続けられるため、定年退職がないことは家族経営のメリットの一つだ。
・将来家族に事業を譲ることができる
家業を引き継いで事業を安定成長させることができれば、将来子どもや孫に事業を任せられる。自分が引き継いだ家業をさらに子どもや孫へとつなげていけるのだ。
家業を営むデメリット
・事業承継が難しい
家業は、家族の誰かが引き継ぐことが一般的だ。しかし誰を後継者とすべきか決めるのは、非常に難しい。特に創業者が1代で事業拡大してきた場合は、自分の才覚で事業を拡大してきた経緯があり、カリスマ性もある。しかし親子間の事業承継の場合は、事業規模が大きくなるほど後継者の能力が試され、創業者と常に比較されるだろう。
後継者選びで子どもの経営能力を見誤ったために親が大きくした会社をダメにしてしまうケースも少なくない。
・事業拡大が難しい
家族でできる仕事の量・範囲は、おのずと限られるため、事業拡大が難しい一面がある。「家族が生活できる範囲で」と保守的な考えが生まれ事業拡大意欲が薄れることもあるだろう。事業拡大を考えるなら従業員を雇って器を大きくすることも必要だ。
・事業転換が難しい
歴史があるほど「先祖代々受け継がれた家業を守るため」という意識が働き事業転換が難しくなるケースがある。歴史や技術、文化を守ることは大切だ。しかし事業である以上、時代に合わせて転換していかなければかえって衰退させてしまう可能性がある。
・ワンマン経営で経営判断を誤りやすい
ワンマン経営では、客観性を失い経営判断を誤ることがある。家業は、事業主(社長・オーナー)の考えが経営判断に直結するため、経営判断を誤ると取り返しがつかない事態になりかねない。時には、第三者の意見を聞きアドバイスを受け入れる度量も必要だ。
・負債も背負うことになる
無借金経営が理想だが個人で多額の資金を用意することは、非常に困難である。そのため中小企業は、金融機関から運転資金や設備資金の融資を受けて事業を運営することが一般的だ。設備資金を長期で借りていると多額の負債を引き継ぐことになる。
・経営を学ぶ必要がある
事業経営は、会社員の抱えるリスクとはまったく異なる。家族経営といえども必要な知識とスキルは、サラリーマンとはまったく異なってくるため、経営状況や今後の見込みなどを検討し運営しなければならない。業界の専門知識や技術、マーケティング、税金、財務、会計などの知識も必要になるだろう。
従業員がいれば労働保険や社会保険、労務管理の知識も必要になる。