効率的な企業経営を実現するにおいては、経営管理をしっかりと行うことが重要だ。しかし、経営管理は広い概念であり、どのような業務内容を指すか、どのような能力が求められるのか、どのように進めれば良いか、などが曖昧な人もいるかもしれない。
そこで今回は、経営管理やその種類、経営管理で求められる能力、経営管理の活動でやるべきことなどについて解説していこう。
目次
経営管理とは
「経営管理」とは何だろうか。広い概念であるものの一般的には、組織や企業がその活動目標・事業目標などを達成するために、「ヒト、モノ、カネ」といった社内リソースを管理すること、またそれらを改善していく一連のプロセスや手法のことを指す。組織全体が目標達成のために、より効率よく活動するための工夫と捉えれば良いだろう。
代表的な手法としては、財務管理や生産管理、販売管理、人事管理、労働管理などが挙げられる。経営管理は、組織単位あるいは組織内の事業部単位などで行われることが多い。特に規模が大きい組織の場合、リソースのバラツキが起こりやすく、全社観点もしくは事業部観点に立った経営管理が重要と言える。
経営管理の目的
それでは、経営管理の目的は何だろうか。経営管理の究極の目的は、組織や企業がその目標を達成することだ。もう少しブレイクダウンすると、「ヒト、モノ、カネ」といった社内リソースを管理および改善していくことで、経営者の意思を浸透させたり、各人が最大限のパフォーマンスを発揮させるための仕組みを作ったり、関係者のモチベーションを向上および維持させたりするところにある。
組織や企業を運営していくには、リーダーの運営方針を各部門に浸透させる必要がある。経営理念やビジョン・戦略を各部門に共有する方法のひとつとして、経営管理が活用される。
また、リソースが枯渇している部門は、高いパフォーマンスを発揮しづらい。リソースが枯渇していると、その部門に属している関係者のモチベーションが下がることにつながり、ますますパフォーマンスが落ちるという悪循環も陥りかねない。
反対に、ある部門のリソースが飽和状態となっていると、その部門の関係者の負担は低くなるかもしれないが、他の部門にそのしわ寄せがいったり、組織全体で見ると無駄が生じて非効率だったりする。
そのため、「各部門に今、どの程度のリソースがあるのか」「必要なリソースと比べて飽和しているのか。もしくは枯渇しているのか」を把握し、必要に応じてリソースを調整・調達することが経営管理の大きな役割となっている。
経営管理と経営企画の違い
経営管理とよく似た言葉に「経営企画」というものがある。経営管理と経営企画は何が違うのだろうか。どちらも広い概念であるものの、一般論として経営企画は、会社の中長期的な経営計画を立てて、それを実行していくことを指す。一方、経営管理は、経営企画の活動をモニタリングして、リソースの調整を行うことを指す。
例えば、経営企画の担当者(担当部署)が「向こう○年で売上を2倍にする」という目標を立て、そのための施策を打っているとする。そのとき、経営管理の担当者(担当部署)は、その施策が実行できるようにリソース調整を行う、といった具合だ。企業活動を行ううえで、「経営管理」「経営企画」どちらも必要であり、表裏一体の関係とも言える。
経営管理の種類
経営管理の種類にはどのようなものがあるのだろうか。前述のように、経営管理の主なミッションはリソース管理であるため、「ヒト」「モノ」「カネ」に紐付いた管理があると捉えれば理解が深まるだろう。
ヒトの管理
まず挙げられるのが「ヒトの管理」だ。一般的な企業で言えば、人事評価制度の確立および改善、採用活動、社内規則の策定、残業時間の把握、業務負荷の可視化、社内交流を活発にするためのイベント開催など、各人のパフォーマンスを最大限発揮してもらうための制度、心身の維持に関わるあらゆる事項を管理する。
モノの管理
「モノ」は、商品や備品といった有形の資産、知財やサービスといった無形の資産などさまざまだ。「モノの管理」とは、これらの管理を行うことを指す。物理的な在庫や備品の管理はもちろん、商品やサービスの品質を向上させるための業務改善、クレーム対応、販売促進のマーケティング活動、新商品開発など含める場合もある。
カネの管理
組織の財政状態や業績に関する管理だ。会計や税務に関する専門的な知識が必要になることに加えて、これらの数字を把握するための集計体制(事業部からの営業成績の吸い上げ)の構築も重要なミッションとなる。
経営管理で求められる3つの能力
それでは、経営管理にはどのような能力が求められるのだろうか。前述したように、経営管理は広い概念であるため、「これを取得しておけば経営管理は万全」というものはないが、例えば、以下のようなことが挙げられる。
経営管理は企業経営を支える役割のため、それぞれの業務領域における専門的スキルと、普遍的なマネジメントスキルの両方が求められると言えるだろう。
1.それぞれの業務領域における専門的スキル
経営管理に関わる人は、各部署のリソースを調整する役割を担うため、各部署の関係者と同じ目線で議論ができるくらいの「それぞれの業務領域における専門的スキル」が求められる。全ての領域で、その道の専門家と同等の知識を有するのは難しいだろうが、議論の土俵には立てるくらいの知識がないといけないということだ。このことからも、経営管理には高いビジネススキルが求められることが分かる。
2.分析力(PDCA力)
経営管理を行うには、各部署から集めた定量的な数字や定性情報をもとに、課題と伸長点を洗い出し、適切な対策を検討する必要がある。したがって、経営管理の担当者には高い分析力が求められると言えるだろう。言い換えれば、PDCAを回す力(PDCA力)だ。常に数字や情報を収集し、対策を打ち、どのように改善されたか、さらに改善するためにはどうすれば良いかなどを考え続ける必要がある。
3.人を巻き込むコミュニケーション能力
経営管理は各部署のリソースを調整する役割を担うため、多くの人とコミュニケーションを取ることになる。また、「このような目標を達成するため、このように動いて欲しい」と要望を出すこともあるだろう。経営管理には、人を巻き込むコミュニケーション能力が求められる。
経営管理の活動でやるべきこと(進め方)
それでは、経営管理はどのように進めて、どのような活動を行えば良いのだろうか。例えば、以下のようなことが挙げられる。
管理項目を可視化し、KPIを定義する
まずは管理項目を可視化し、KPIを設定しよう。当然ながら、この管理項目やKPIは「組織が達成すべき目標」から逆算されたものになっている。管理項目が可視化されていなったり、KPIの定義ができていなかったりすると、正しい経営管理が行えずに、結果として組織目標を達成する確率も低くなってしまう。
ここで気をつけたいことは、管理項目は必要最小限に抑えるということだ。全てを完璧に管理できることに越したことはないが、それは現実的ではない。経営管理の本質は「限られたリソースをどのように配分すれば最大限のリターンを得られるか」ということなので、KPI管理にもこの考え方を導入しよう。
経営管理の重点指標を各レイヤーにまで落とし込む
経営管理でモニタリングしている重点指標を各レイヤーに落とし込んで、各レイヤーで自主集計してもらう仕組みを作ることも重要だ。経営管理でモニタリングしている指標が問題はなかったとしても、各レイヤーの指標を見てみると、問題が発生している可能性があるためだ。
経営管理業務に特化したITツールを利用する
経営管理業務に特化したITツールを利用することも検討したい。その理由は、大きく分けて「経営管理の担当者の負担軽減」と「より精度の高い経営管理の実現」が挙げられる。
経営管理業務は、「情報を収集(集計)する」「経営管理の担当者で加工する」「経営陣や関係部署に報告する」という3つのプロセスで構成されていることが多く、その過程ではExcelやスプレッドシートが活用されていることも多い。経営管理の担当者の手作業に頼るより、ツールを活用すればより早く、より正確に実行できる可能性がある。
当然ながら、ITツールの導入においては、イニシャルコストおよびランニングコストがかかる。ツールを導入することによって得られるメリット(経営管理担当者の工数削減や経営管理の精度向上など)と、コストを天秤にかけながら、慎重に判断したい。「いざ導入したけれど、数ヵ月経つとほとんど使われなくなっていた」という場合もあるので、「本当に自社に適したツールなのか」という視点も重要だ。
経営管理に特化したツールには何があるのか
それでは、経営管理に特化したツールには何があるだろうか。例えば「BIツール」が挙げられる。BIツールとは、企業が持つさまざまなデータを分析し、見える化して経営や業務に役立てるソフトウェアのことだ。売上情報や財務状況はもちろん、人事データ、残業時間、勤怠状況なども集計することができる。
また、「RPAツール」も挙げられる。RPAツールとは、業務を自動化するツールで、人間が作業手順を指示すると、ロボットがRPAシステムの中で動き回り、業務が自動的に進んでいく。経営管理においても、管理項目を集計し、加工する作業が発生することが多い。今まで担当者が手集計してきたような単純作業をロボットに対応させることで、業務効率化が図れるというわけだ。
ツールの導入も検討しながら、今一度、経営管理体制を見直してみよう
経営管理とは、企業が目標を達成するために社内リソースを管理・改善していくことだ。
中小企業においては、大企業よりもリソースの制限が多く、管理体制も属人的あることが多いだろう。ツールの導入も検討しながら、今一度、経営管理体制を見直してみてはいかがだろうか。
文・菅野