米国に次ぐ経済規模を誇る中国は、近年平均所得の伸びが顕著である。特筆すべきは、富裕層が急増していることだろう。本記事では、中国の富裕層の人数や富裕層増加に伴う中国経済への影響を考察していく。

目次

  1. そもそも「富裕層」の定義とは?
  2. 中国の富裕層の人数は? 2020年時点で527万人
    1. 「ミリオネアの密度」は2020年時点で0.5%
  3. 中国で「上場企業の役員」が続々富裕層入り
    1. 上場企業の事業規模や利益の拡大が一因か
  4. 中国の富裕層の暮らしぶりは? 高級EVが人気
  5. 中国の富裕層を他の国と比較すると?
  6. 富裕層の増加がもたらす好循環
中国富裕層
(画像=stock.adobe.com, ZUU online)

そもそも「富裕層」の定義とは?

中国の富裕層について考察する前に本記事で「富裕層」と書く際の定義をはっきりさせておこう。なぜなら「富裕層」には、明確な定義はなく調査レポートなどによって基準が異なることがあるからだ。国際的によく基準とされるのは「純金融資産が100万米ドル以上(1米ドル110円換算で約1億1,000万円)」といった基準である。

富裕層に関する調査結果でよく引用されるのが国際調査会社Wealth-Xが発表しているデータだ。Wealth-Xでもこの基準を採用している。スイス金融大手クレディ・スイスも同様の調査を実施しておりWealth-Xと同様に純金融資産100万米ドル以上を富裕層としている。ちなみに日本では、野村総合研究所の基準がメジャーだ。

野村総合研究所では、富裕層を純金融資産が1億~5億円未満の層と定義しておりほぼWealth-Xやクレディ・スイスの基準と合致している。これらを踏まえて本記事では、富裕層を「純金融資産が100万米ドル以上」と定義して解説していく。

中国の富裕層の人数は? 2020年時点で527万人

中国には、どのくらいの富裕層がいるのだろうか。参考にするのは、クレディ・スイスが2021年6月に発表した「グローバル・ウェルス・レポート2021」だ。同レポートによると2020年時点の中国における「100万米ドル以上の富を有する成人の数」は、約527万9,000人となっており1年間で約25万7,000人増加した。増減率に換算すると5.1%増となる。

「ミリオネアの密度」は2020年時点で0.5%

同レポートでは、中国における「ミリオネア(富裕層)の密度」も紹介されている。かみ砕いていえば「人口の何%が富裕層か」という数字のことだ。2000~2020年にかけて5年刻みで以下のように推移している。

<ミリオネア(富裕層)の密度>

富裕層の割合
2000年 0%
2005年 0%
2010年 0.1%
2015年 0.3%
2020年 0.5%
※出典:グローバル・ウェルス・レポート2021

2000~2005年は、0%だったが2010年に0.1%、2015年に0.3%、2020年には0.5%まで上がっている。

中国で「上場企業の役員」が続々富裕層入り

中国の深センに本社を置く招商銀行と米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが共同で行った「2021年中国個人資産報告」を参考にしながら中国の富裕層について分析していく。本調査では、富裕層の中でも1,000万元(1元=約17円換算で約1億7,000万円)の層を対象に調査を行っている。

上場している企業の会長や監査役、上級管理職などが富裕層になるケースが増えている点は、興味深い。

上場企業の事業規模や利益の拡大が一因か

これまでは、新たに富裕層に加わった人で「起業家」の割合が高かった。しかしこうした兆候に変化が出てきたのだ。2019年において上場している企業の会長や監査役などの富裕層が全体に占める割合は36%だったが、2021年には43%まで増えた。中国経済が成長するにつれて上場企業の事業規模や利益が大きくなり結果として上場企業の役員の収入が増えていることが理由として考えられる。

中国の富裕層の暮らしぶりは? 高級EVが人気

中国人の富裕層は、どのような暮らしをしているのか。極論をいえば富裕層によって暮らし方や行動はさまざまだが傾向はある。中国の富裕層向け雑誌の発行などを行う「胡潤百富(Hurun Report)」によると2018年度における1,000万元以上の資産を有する世帯の在住地のトップ5は以下の通りだ。

順位 在住地
1位 北京
2位 上海
3位 香港
4位 深セン
5位 広州

1位の北京には、約29万4,000世帯が住んでいるという。中国の富裕層は、国内で手に入らない製品や食料品への関心も高い傾向だ。このほか都心部の高価なマンションを購入したり新興のEV(電気自動車)メーカーが販売する新型車を乗り回したりする人も多い。ちなみに中国の新興EVメーカーといえば「NIO」(ニオ)などが有名だ。NIOは、富裕層をターゲットに車両を開発している。

日本円にして1,000万円近い車種の販売台数も好調に推移しているという。NIOのEVは、米EVメーカーのテスラの高級EVなどと同様、車両を保有することが富裕層のステータス・シンボルの一つとなっている。

中国の富裕層を他の国と比較すると?

ここまで中国の富裕層について考察してきたが世界の主要国と比べると数は多いのだろうか。世界の主要国における2020年の富裕層の人数と増加数(2019年との比較)は、以下の通りだ。

<主要国の富裕層の人数と増加数>

順位 人数 増加数
1位 米国 約2,195万1,000人 約175万人
2位 中国 約527万9,000人 約25万7,000人
3位 日本 約366万2,000人 約39万人
4位 ドイツ 約295万3,000人 約63万3,000人
5位 英国 約249万1,000人 約25万8,000人
6位 フランス 約246万9,000人 約30万9,000人
7位 オーストラリア 約180万5,000人 約39万2,000人
8位 カナダ 約168万2,000人 約24万6,000人
9位 イタリア 約148万人 約18万7,000人
10位 オランダ 約103万9,000人 約21万4,000人

※出典:グローバル・ウェルス・レポート2021

中国の富裕層の人数は、米国に次いで多く日本やドイツの人数を抜いて約527万人もいる。一方で本記事前半に紹介した「人口の何%が富裕層か」を示す「ミリオネア(富裕層)の密度」の割合が高い国はどうなっているだろうか。以下が各国の比較だ。

<2020年におけるミリオネア(富裕層)の密度の国際比較>

密度
スイス 14.9%
オーストラリア 9.4%
米国 8.8%
香港特別行政区 8.3%
オランダ 7.7%
スウェーデン 7.3%
デンマーク 6.7%
ニュージーランド 6.3%
ベルギー 5.7%
カナダ 5.6%
シンガポール 5.5%
アイルランド 5.0%
フランス 4.9%
オーストリア 4.8%
英国 4.7%
ドイツ 4.3%
ノルウェー 4.2%
日本 3.5%
台湾 3.1%
スペイン 3.0%
イタリア 3.0%
韓国 2.5%
中国 0.5%
メキシコ 0.3%
ロシア 0.2%
インドネシア 0.1%
インド 0.1%

※出典:グローバル・ウェルス・レポート2021

中国は、0.5%とかなり低い数字となっている。つまり富裕層の絶対数において中国は「米国に次ぐ規模だが富裕層の割合でいうとまだ先進国にはかなわない」という状況だ。

富裕層の増加がもたらす好循環

中国で富裕層が増えることは、経済に好循環をもたらし富裕層が有する強い購買力が中国市場において消費を活発化させるだろう。また消費の活発化が企業の業績には追い風となり業績が上がれば従業員の収入も上がり国内消費がさらに活発となる好循環が期待できる。そのため今後の中国経済の成長力を予測するうえで「富裕層がどれだけ増えたか」という点は、十分に考慮に値するだろう。

引き続き中国の富裕層のデータをウオッチしていきたいところだ。

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