現在、公的年金の受給開始年齢は65歳となっています。そのため、政府は60歳から65歳までの無収入(無年金)の期間を無くすため、希望する勤労者全員を65歳まで雇うことについて法律で定めています。
さらに、人手不足を補うため、70歳までの就業機会を確保する努力義務を課しています。このように雇用という切り口から考えると、セカンドライフに向けた資産形成の準備開始時期はこれまでよりも早まり、さらに、その準備期間を長く確保できるようになったといえます。

セカンドライフを考える際のポイント

セカンドライフに向けた資産形成のポイント
(画像=Nattakorn/stock.adobe.com)

セカンドライフに向けた資産形成を考える際には、資産寿命を伸ばすために資金の目減りを防ぐことや、リタイア後の計画的な資産の取り崩しに着目する必要があります。

長く働く

現在の国民年金制度において、自助努力によって受給額を大きく増やすことは難しいといえます。受給できる満額金額が決まっていることから、未納期間がある人が任意加入制度を利用して、受給額を満額に近づけることができるくらいでしょう。しかし、リタイア後も収入を増やすという視点に立てば、長い期間働くことは重要なポイントです。65歳までは再雇用によって同じ企業に勤め続けるケースが多いと予想されますが、収入が予想以上に下がるようであれば、転職も視野に入れるべきです。さらには起業するという方法もあります。

ポイントは、65歳以降をどのように過ごすのかです。再雇用は65歳までとする企業が一般的であることから、65歳をもってリタイアする人が多いようですが、現在の日本人の平均寿命(男性:81.64歳、女性:87.74歳)を考えるとリタイアしてから約20年間を生き抜く資産をリタイア時点で形成しておく必要があります。

正社員といわないまでも、アルバイトやパートなどで年間100万円前後の収入を得ることができれば、セカンドライフの収支は大きく変わります。そのためにも、もちろん健康には留意しながら、長く働くことを最優先に考えましょう。

生活コストを引き下げる

定年後、再雇用時と年金の受取開始時には、収入がそれまでよりも減少します。したがって、資産寿命を少しでも延ばすためにも、生活コストの引き下げを検討することがポイントとなります。一般的にリタイア後の支出については、現役時の生活レベルから下げることが難しいという特徴が多く見られることから、老後の収入と保有している金融資産の状況を把握し、支出の見直しを行うことが大切です。日々の生活費以外にも、旅行などの娯楽費や家のリフォーム費用、さらには介護費用などといったライフイベントを考慮するのであれば、その費用をどのように工面するのかを考えておく必要もあります。

お金に働いてもらう

リタイア直後は退職金を受け取っている人が多いことから、人生の中で最も金融資産の保有額が多くなる時期でもあります。退職金が用意されている人は、その情報を早めに得るとともに、退職金の使途やその運用先についてしっかりと検討する必要があります。また、その際には、退職金について一時金で受け取るのか、それとも年金形式で受け取るのかについても考え、一時金で受け取った際にはその後の資産運用をどう行っていくのかを確認しておくことが大切です。

完全リタイアした後、公的年金だけで生活費を賄うのはなかなか難しいでしょう。したがって今あるお金に働いてもらう、つまり資産運用を行いながら、金融資産の取り崩しを行っていく必要があります。その際には、取り崩しの順番や金額など、資産寿命を延ばしながら計画的に行えるように考えておくことがポイントです。資産寿命を延ばすことを考えるのであれば、長期積立分散投資などで資産形成を継続することを並行して行っていく必要があるといえます。

健康状態に合わせた資産の活用

上記でも述べたとおり、2021(令和2年)年の日本の平均寿命は男性が81.64歳、女性は87.74歳となっています。そして、平均寿命に対して「健康寿命」という言葉も存在します。厚生労働省が発表している最新データによると、日本人の健康寿命は男性が72.14歳、女性は74.79歳となっており、平均寿命までの約10年間は就労や外出などが困難になるなど、日常生活に何らかの影響が出てくるということになります。

日常生活に影響が出るということは、お金の面でいえば「収入の減少」や「介護費用の発生」などにより、支出額が増加するという懸念につながります。

介護

介護が必要な状態になった場合、その費用負担もさることながら、誰が身の回りの世話をするのかを考える必要があります。夫婦2人の場合、夫の介護が必要になった場合は妻が介護を行うのが一般的ですが、夫が亡くなった後、妻の介護が必要になった時が問題となります。平均寿命と健康寿命との差から、妻は介護する人であり、また介護される人になる可能性が高いということをしっかりと考えておく必要があります。

医療費負担

家計の金融行動に関する世論調査(2021(令和2)年)によると、世帯主が70歳以上の世帯の金融資産の平均保有額は2,208万円、中央値は1,394万円となっています。これだけの資産があり、なおかつ年金を受け取れることから、そこまでの不安は感じられないかもしれませんが、年齢を重ねるにつれ健康面に対する不安は増加し、実際に病院を受診する回数も増加します。医療費の面では75歳の後期高齢者における窓口負担は原則1割となっていますが、2022年度後半から所得によっては2割負担となることが決まっています。長期入院となるとその分負担も増すことになることから、今後所得に応じては対策が必要になってくるでしょう。

自分がいつどのような病気になるかは誰にも予測できません。だからこそ、介護や医療費負担を考慮しながら資産寿命をどのように延ばしていくかという、計画的な資産形成が必要になってくるといえます。

終活の必要性

資産形成を考えることも大切ですが、セカンドライフにおいては、自分の最後に向き合うことも必要です。そうすることによって、自分の置かれている状況を客観的に把握することができ、残りの人生を有意義に過ごすことにも繋がります。

終活のメリット

終活で得られるメリットとしては、以下の点が挙げられます。

まずは、自分の考えや意思を家族に伝えることができ、残りの老後の生活に前向きになれることです。さらに、家族に自分の考えや意思を伝えることにより、残された老後の生活を充実させることにつながります。また、終活を行うことにより、相続におけるトラブルを回避できるというメリットもあります。

相続においては、金銭が絡むことから、相続人同士で「誰が、どれだけ、どのような資産を受け取れるのか」が明確に把握されていないと、争族に発展しかねません。自分は残す財産が少ないから必要ないと考えるのではなく、財産の多い少ないにかかわらず、遺産の配分について希望があるのであれば、「遺言書」を準備するなどといったことを行っておきましょう。

エンディングノートの作成

終活には定型的な決まりはありませんが、自分の思いや考えを書き記すという意味で、「エンディングノート」の活用がすすめられています。エンディングノートには正式な規格があるわけではなく、記載しなければいけない項目が決まっているわけでもないことから、普通のノートに記しても問題はありません。

エンディングノートには、現在の健康状況、医療や介護の希望、葬儀やお墓などについての希望、家族への思いなど、気になることを記載する方法が一般的です。ただし、エンディングノートには法的効力がない点には気をつけておきましょう。エンディングノートに記載さているからといって、遺言書と同じように扱われるわけではありません。したがって、相続時に活用したいと思うのであれば、エンディングノートとは別に法的効力を持つ「遺言書」をきちんと残しておきましょう。

資産の見える化を考える

本人の意思を周囲がしっかり確認できており、自分が行動できなくなったとしても、周囲のサポートなどにより、これまでと同じような資産管理や運用を少しでも長く行えるようにしておくことが大切です。そのためにも、

・取引をあまりしていない金融機関の預貯金は解約する
・年齢が高くなるにつれ、投資の割合を徐々に引き下げ、現金化しておく

などの対策を取っておきましょう。さらに財産目録を作っておくと他の人が見ても分かりやすいといえます。

リタイア後の生活を日々穏やかに過ごせるよう、金融資産の取り崩し方や管理、また相続を含めた資産の継承などを考えながら、自分に合った資産形成を行っていくようにしてください。

(提供:Incomepress



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