コロナ禍で収入が減り、貯金が大きく減った人も少なくない。これは企業にとっても同様で、特に外食企業ではこの1年間で「自己資本」を大きく減らした企業が目立った。例えば、ロイヤルホールディングスやすかいらーくホールディングス、ワタミなどだ。
そもそも「自己資本」とは何?
この記事では、東洋経済オンラインが2021年4月に発表した「外食企業の自己資本増減ランキング」を紹介しつつ、減額幅の大きな企業がどのような状況に陥っているのかを解説していく。しかし、その前にそもそも「自己資本」とは何を指すのかについて説明する。
自己資本は「返済する必要がない資金」「株主から調達した資金や留保分の利益」などと表現され、どちらも正しい説明だ。要は、企業が自由に使えるお金のことで、経営状況が悪化するとこのようなお金を使わざるを得ないため、自己資本は減ることになる。
ちなみに、金融機関などからの借入金は、返済する必要がある「他人資本」に分類され、企業の経営状況をみるときは、自己資本の比率が高い方が安定的だと判断される。そのため自己資本が減るということは、その企業に対する客観的な評価が低くなることにつながる。
外食企業の自己資本増減ランキングを紹介
では続いて、東洋経済オンラインが発表したランキングを紹介していこう。
ランキングは、前年比で自己資本の減少幅が大きかった順に並んでおり、クリエイト・レストランツ・ホールディングスとリンガーハットは2020年11月末時点、そのほかの企業は2020年12月末時点の決算の数字を基準としている。
ランキングの結果、最も金額を減らしたのがロイヤルホールディングスで299億2,000万円となっており、その後、すかいらーくホールディングスの190億5,000万円、ワタミの113億1,000万円と続いた。
1位:ロイヤルホールディングス
1位のロイヤルホールディングスは、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを展開する外食チェーンだ。2020年12月期の最終損益は275億3,200万円のマイナスで、前期の黒字から赤字に転落している。赤字転落は、緊急事態宣言などで外食を自粛する動きが広がったことなどが理由だ。
自己資本は508億2,400万円から208億9,600万円まで減り、前期比で半分以下となった。自己資本比率も49.6%から19.7%まで大きく下がっている。
2位:すかいらーくホールディングス
2位のすかいらーくホールディングスは、「ガスト」や「バーミヤン」などのファミリーレストランを展開しており、ロイヤルホールディングスと同様、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けた。
2019年12月期の最終損益は94億8,700万円の黒字だったが、2020年12月期は172億1,400万円の赤字に転落している。自己資本は1,328億1,700万円から1,137億6,100万円へと減り、自己資本比率は29.3%から25.8%に落ち込んだ。
3位:ワタミ
3位のワタミの業績も急激に悪化している。2020年4~12月の最終損益は85億3,900万円の赤字だ。前年同期も赤字決算だったが、赤字額が3億5,200万円から大幅に増えた。
自己資本は、2019年12月末時点では167億3,500万円だったが、2020年12月末時点では54億1,800万円まで落ち込み、自己資本比率は40.4%から11.4%まで下がった。
コロナが収束すれば自己資本は元に戻る?
このように、大きく自己資本を減らした企業は自己資本比率が10%台まで下がったケースがあり、経営的にも客観的な評価においても、苦しい状況となっている。
しかし、「お先真っ暗」というわけでもない。日本ではコロナ禍の第5波が終息し、4度目の緊急事態宣言が解除された。再び感染拡大が起きなければ、売上がどんどん回復していくはずだ。そうすれば自己資本が増加傾向となり、自己資本比率も高まっていくはずだ。
上場企業の決算発表では、売上高や純利益の増減に関心が集まりがちだが、外食企業に関しては、今後しばらくは自己資本の増減についても注目してみてはいかがだろうか。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)