LDL(悪玉)コレステロール値が高い場合、脂質異常症(高脂血症)の可能性があります。
血液中の脂質の量が増加することで、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクが高まるため注意が必要です。
コレステロールが高い原因としては、食生活がまずは挙げられますが、それだけではありません。この記事では、コレステロールが高い原因についてまとめました。
目次
主なコレステロールが高い原因
コレステロールが高い原因は複数考えられますが、主な原因は以下の4つです。
【主なコレステロールが高い原因】
- 遺伝的要因
- 食生活の乱れ
- 運動不足
- ストレス
また、どれかひとつではなく、2つ以上が要因となっていることも考えられます。
遺伝的要因
コレステロールが高い原因の1つ目は「遺伝的要因」です。本来、LDL(悪玉)コレステロールは、肝臓で処理されることになります。しかし、遺伝・体質によっては、LDL(悪玉)コレステロールが上手く処理されず、血液中の濃度が高くなってしまうことがあります。
このようなケースは遺伝的要因がコレステロールの高さの原因であり、生活習慣の改善のほか、場合によっては薬による治療も必要です。また年齢などによっても適切な治療法は変わるので、医療機関・専門医の指示に従いましょう。
食生活の乱れ
2つ目のコレステロールが高い原因は「食生活の乱れ」です。血中総コレステロールのうち、体内で合成されるものは約80%、食品に由来するものは約20%といわれています。
健康な状態であれば「食事で多めにコレステロールを摂取すると体内で合成されるコレステロールは減少」し、反対に「食事からの摂取量が減ると体内での合成量が増える」というフィードバックが働きます。
コレステロールは体に必要なものなので、このような仕組みがあると考えてください。
しかし、コレステロールの中でもLDL(悪玉)コレステロールの値が高い場合は、食生活の乱れを正すことが重要です。
LDL(悪玉)コレステロールにはホルモンの生産、細胞膜の形成などの働きがありますが、血液中の量が過剰になると血管壁にこびりつき、血管の損傷に繋がります。
特にアルコールの過剰摂取はLDL(悪玉)コレステロールだけでなく、中性脂肪増加の要因にもなるため注意が必要です。
肥満を防ぐという観点からも、高カロリー・高脂質な食事は避け、野菜もバランスよく摂取するようにしましょう。
コレステロールを多く含む食品、コレステロールの高値の原因となる食品については次章でまとめているので、そちらも参考にしてください。
運動不足
3つ目の原因は「運動不足」です。適度な運動は体内で消費されるエネルギー量を増やし、脂質の代謝も促します。また、運動は過度に蓄積しているコレステロールの除去、抗酸化作用、血栓予防作用などの働きがあるHDL(善玉)コレステロールの増加も期待できます。
コレステロールの値が高い場合、食事療法と運動療法がまずは基本となるので、食生活を見直すとともに、十分に継続できる強度の運動習慣を身につけましょう。
運動は、1日あたり30分程度のウォーキングで構いません。「最低でも週3日以上を行うこと」「数ヶ月以上継続できること」を意識してください。
ストレス
最後の4つ目の原因は「ストレス」です。過度なストレスを受けると、その状況に対応するためにストレスホルモンの分泌が増えます。
一時的な増加に問題はないものの、ストレスホルモンにはコレステロール濃度や血糖値を上昇させる効果があるため、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
適度な運動はストレスの発散になるほか、十分な睡眠を取ること、仲の良い友人と会話すること、自分の時間を持つことなども大切です。
ただし、ストレス発散のためでも暴飲暴食やたばこは避けてください。特に、喫煙はLDL(悪玉)コレステロールを増加させ、反対にHDL(善玉)コレステロールは減少させるので危険です。さらに、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を促進し、動脈硬化などのリスクが増大するといわれています。
コレステロールが高い原因になりやすい食べ物
コレステロール値が高い場合、食生活の改善が重要なのは説明したとおりです。バランスの良い適量の食事を心がけましょう。また、以下のような食品には多くのコレステロールや脂質が多く含まれています。
【コレステロールが高い原因になりやすい食べ物】
- 肉類の脂身
- バターなどの動物性の脂肪
- マーガリン
- インスタントラーメンなどの加工食品
- 鶏や魚の卵
すでにコレステロールの値が高い人、肥満気味の人がこれらの食品を摂取する場合は、食生活を改善するためにも量を控えるなどの工夫が必要です。
肉類の脂身
肉類の脂身には「飽和脂肪酸」が多く含まれています。飽和脂肪酸には血中のコレステロール値を上昇させる作用があるため注意しなくてはいけません。同じ肉類でも赤身の部位を選ぶ、もしくは調理の際に脂身を取り除くと良いでしょう。
また、レバーなどの内臓にはコレステロールが多く含まれているので、あわせて注意してください。
バターなどの動物性の脂肪
肉類以外にバターや生クリームといった乳製品、ラードなどの動物性の脂肪にも飽和脂肪酸が多く含まれています。一方、植物油や魚油には、LDL(悪玉)コレステロールの値を下げる不飽和脂肪酸が豊富な食品も多いです。
動物性の脂肪は摂りすぎに注意し、植物油や魚油を積極的に調理に使うようにしましょう。
マーガリン
植物や魚に由来する不飽和脂肪酸のほとんどが「シス型」なのに対して、人工的に作られた不飽和脂肪酸は「トランス型」であり、トランス脂肪酸と呼ばれます。そして、このトランス脂肪酸を多く含むのがマーガリン、ショートニング、また、それらを使って作るケーキ、パン、揚げ物などです。
トランス脂肪酸は血液中のLDL(悪玉)コレステロールを増加させ、HDL(善玉)コレステロールを減少させる作用があります。
普段の食事でトランス脂肪酸を多く摂取している場合、動脈硬化などのリスクが高まるので注意してください。
インスタントラーメンなどの加工食品
見落としがちですが、インスタントラーメン・カップ麺などの加工食品にも多くの飽和脂肪酸が含まれるものはあります。これは麺を揚げるのに飽和脂肪酸を多く含むパーム油などを使用しているためです。
また、塩分やカロリーの過剰摂取、栄養バランスの面から考えても、高頻度で食べるのはおすすめできません。
鶏や魚の卵
鶏や魚の卵にはコレステロールが多く含まれているので、それらの食べすぎには注意しましょう。一方、魚介類や軟体動物の中にはタウリンを多く含む食品があり、タウリンには体内のコレステロール値を下げる効果があります。そのため、海産物すべてを控える必要はありません。
コレステロールの高い人が食べてはいけないもの
前述のとおり、コレステロールは体内で合成される量が、食事から摂取する量よりも多いです。そして、コレステロールは身体にとって必要な脂質のひとつでもあります。
そのため、コレステロールが高い人も、食事からコレステロールを摂取してはいけないというわけではありません。
コレステロールが高く、食生活からの改善を目指すのであれば「飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂りすぎを避けること」を心がけましょう。コレステロールを多く食品を控えるのはその後で構いません。
また、中性脂肪が多い場合は、お酒、甘いもの、糖質などの摂取量にも注意してください。
痩せ型なのにコレステロールが高い原因とは
「コレステロールが高い」と聞くと肥満をイメージする人も多いかもしれませんが、実は、痩せ型でもコレステロール値が高いケースはあります。
例えば、コレステロールが高い原因が次のような場合です。
【痩せ型なのにコレステロールが高い原因】
- 遺伝や体質による影響
- 食生活の変化
遺伝・体質による影響
コレステロールが高くなりやすい主な原因でも説明しましたが、ひとつは遺伝や体質による影響が考えられます。家族性高コレステロール血症と呼ばれるもので、遺伝的な要因で肝臓でのLDL(悪玉)コレステロールの処理が正常に行われません。
それによって、血液中のLDL(悪玉)コレステロール濃度が上昇し、基準よりも高い値が検出されます。
遺伝が要因の場合、子どもの頃からコレステロールの高い状態が続くことになり、通常よりも早く動脈硬化が進行する可能性があるので注意が必要です。
家族に遺伝的な要因でLDL(悪玉)コレステロール値の高い人、狭心症や心筋梗塞を発症している人がいるなら、家族性高コレステロール血症に気をつけましょう。
食生活の変化
以前は、肥満体型の方がコレステロール値は高い傾向にありました。しかし、食生活の変化に伴い、痩せ型や標準体型でもコレステロール値の高いケースが増え、体型はあまり関係なくなっています。
具体的な要因としてあげられるのは、飽和脂肪酸を多く含む肉や乳製品、ケーキ、インスタントラーメンなどを摂取する機会が増えたことです。
痩せている方でコレステロール値が高い場合、遺伝的な要因がなければ、飽和脂肪酸の摂取量を減らすと良いでしょう。
女性に多いコレステロールが高い原因
ここからは女性に多いコレステロールの高い原因について説明していきます。すでに説明した主な原因とあわせて確認してください。
20代・30代の女性の場合
20代・30代など比較的若いうちからコレステロール値が高い場合は、前述の遺伝や体質によるものが疑われます。子どもの頃からコレステロール値が高かったなら、家族性高コレステロール血症の可能性は高いです。
家族性高コレステロール血症は200人〜500人にひとり程度の割合なので、決して珍しい病気ではありません。治療をしていなかった場合、20代や30代で心筋梗塞を起こすこともあるため、早めに医療機関を受診する必要があります。
更年期を過ぎている場合
更年期を過ぎた女性の場合、ホルモンバランスの変化によってコレステロール値が高くなることもあるので覚えておきましょう。女性ホルモンであるエストロゲンには、LDL(悪玉)コレステロールの代謝を促進する作用があります。
そのため、女性は男性に比べて、動脈硬化のリスクの高まる年齢が遅いのですが、更年期を過ぎるとエストロゲンの分泌量は減少します。
それに伴いLDL(悪玉)コレステロール値が高くなるので、食事療法や運動療法などによる対策が必要です。
コレステロールが高い原因を知って生活習慣を見直そう
コレステロールが高い主な原因は「遺伝的要因」「食生活の乱れ」「運動不足」「ストレス」の4つです。
食事に関しては「コレステロールを多く含む食品は控える」から「飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の多い食品は控える」という認識に変わってきています。ただコレステロールの多い食品を避けるだけでは、コレステロール値は下がりません。
また、ほかの病気でもいわれることですが、適度な運動や十分な睡眠、ストレスを溜めないことも重要です。
コレステロールが高かった人は生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関での治療も受けるようにしてください。
・ニューヨーク州バッファロー市生まれ
・金沢医科大学 医学部 卒
・金沢医科大学病院にて小児科・内科研修
・大阪・神戸・東京・福岡の病院で内科と皮膚科を担当
・2018年8月クリスタル医科歯科クリニック内に内科、美容皮膚科、アレルギー科を開設