結果の概要:着工件数は前月、市場予想を下回る一方、許可件数は前月、予想を上回る

米住宅着工、許可件数
(画像=PIXTA)

11月17日、米国センサス局は10月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は152.0万件(前月改定値:153.0万件)と155.5万件から下方修正された前月、市場予想の157.9万件(Bloomberg集計の中央値)を下回った(図表1、図表3)。

住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は165.0万件(前月改定値:158.6万件)と、158.9万件から小幅下方修正された前月、市場予想の163.0万件を上回った(図表2、図表5)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

結果の評価:住宅需要は依然堅調も戸建て住宅の供給懸念が継続

住宅着工件数の伸びは前月比▲0.7%(前月:▲2.7%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表3)。内訳をみると、集合住宅が+7.1%(前月:▲7.4%)と前月からプラスに転じたものの、戸建てが▲3.9%(前月:▲0.6%)となり、全体を押し下げた(図表4)。これで戸建ては4ヵ月連続のマイナスとなった。

前年同月比では+0.4%(前月:+5.7%)と8ヵ月連続でプラスとなった。戸建てが▲10.6%(前月:▲2.2%)と前月から大幅にマイナス幅が拡大した一方、集合住宅が+36.6%(前月:+30.9%)とプラス幅がさらに拡大して全体を押し上げた。

地域別寄与度(前月比)は、中西部が+0.8%ポイント(前月:+1.1%ポイント)と3ヵ月連続でプラスとなった一方、西部が▲0.8%ポイント(前月:+4.2%ポイント)とマイナスに転じた。さらに、北東部が▲0.1%ポイント(前月:▲2.7%ポイント)、南部が▲0.5%ポイント(前月:▲5.3%ポイント)とマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続でマイナスとなった。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

先行指標である住宅着工許可件数は、前月比+4.0%(前月:▲7.8%)前月からプラスに転じた(図表5)。戸建てが+2.7%(前月:▲0.9%)、集合住宅が+6.6%(前月:▲18.8%)といずれも前月からプラスに転じた(図表6)。

前年同月比は+3.4(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じた。戸建てが▲6.3%(前月:▲7.1%)と3ヵ月連続でマイナスとなったものの、集合住宅が+28.0%(前月:+16.5%)と2桁の伸びを維持して全体を押し上げた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、11月が83(前月:80)と前月比+3ポイントとなり、3ヵ月連続の上昇となった(図表7)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

内訳は販売見込みが84(前月:84)と横這いとなったものの、販売現況が89(前月:86)、客足が68(前月:65)と前月比+3ポイント上昇した。

NAHBのフォーケ会長は「住宅供給サイドの継続的な課題にも関わらず、11月も住宅建設の堅調な市場は続いた」と指摘した。一方、同チーフエコノミストのディーツ氏は建設資材の不足に加えて「労働力不足や用地の不足が住宅供給の主な制約となっている」としており、これらの供給制約が住宅市場回復の足かせとなる可能性を指摘した。


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窪谷 浩 (くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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