この記事は2021年10月25日に「The Finance」で公開された「【調査レポート】証券購入における3つの壁 ~信頼構築と手軽さの両立がCX向上のカギに~」を一部編集し、転載したものです。
日本は資産運用に対して消極的だと言われている。事実、金融庁のレポートによると日本の家計金融資産において株式・投資信託投資が占める割合は、アメリカ46.2%に対して日本18.6%と、27.6%も低いという結果が出ている。なぜ日本は証券購入に対して消極的なのか明らかにするために、ベルフェイス独自に証券購入に関する意識調査を実施した。本レポートでは調査結果を元に、消費者が証券購入において感じる3つの壁と、それを突破する2つのキーワードを紹介する。
調査対象
・証券会社の営業担当者を介して購入したことがある人
・ネットなどで直接購入したことがある人
・証券を購入したことがない人
目次
消費者が感じるお金にまつわる困りごとは? ~証券購入経験者と未経験者で比較~
証券購入のニーズとなる「お金にまつわる困りごと」を見てみよう。まず、証券を購入したことがある人の回答は、”老後資金”、”資産形成”、”資産運用”の3つが半分近くを占めている。”あてはまるものはない”(困りごとはない)と回答した人はそれぞれ8.4%と6.8%と少数派となっている。
一方、証券を購入したことがない人の回答は、”老後資金”が22.3%と1位は変わらないが、2位が”収入”で14.3%、3位が”あてはまるものはない”で13.8%(購入経験者層より5~7%高い)という結果になっている。
一見すると証券を購入したことがない人はお金にまつわる困りごとが少ないように見えるが、内訳を見てみると”資産形成”と”資産運用”が購入経験者層と比べて5~7%低く、これが”あてはまるものはない”という回答が多くなった要因のひとつであることがわかる。
資産形成や資産運用のニーズを生み出すであろう”老後資金”、”病気や介護に備える資金”、”子どもの学費”は証券購入者層と同じ、もしくは高い結果になっている。証券が解決策のひとつになり得ることを認識していないだけで、潜在的なニーズは伺える。
証券購入の決め手は? ~証券購入を決める2つの要素~
証券購入の決め手が何か明らかにするために、「証券に興味が持てない理由」「購入に至らなかった理由」と、「証券購入に至った理由」を比較してみよう。
まずは証券を購入したことがない人の「証券に興味が持てない理由」「購入に至らなかった理由」。”知識面での不安”や”商品内容が難しそう”、”損をするのが不安”といった金融リテラシー面での不安に対する回答が多い結果となっている。
一方、担当者を介して購入したことがある人の「証券購入に至った理由」を見ると、”商品内容の理解”と”担当者への信頼”が購入の決め手になっている。ネットなどで直接購入したことがある人は”購入方法や手続きがわかりやすかったから”というCX(顧客体験)に関わる回答が多くなっている。
いずれも知識面での不安に対するサポートが重要であるという結果になった。
以上を踏まえると、営業担当者に直接話を聞きながら理解を深めることが証券購入に繋がると考えられる。では、消費者が営業担当者に求めることは何か?
消費者が証券営業担当者に求めることは? ~証券購入経験/未経験者に共通する3つのポイント~
消費者が営業担当者に求めることは証券購入経験の有無で変わるのだろうか? 結果としては、担当者を介して購入したことがある人、ネットなどで直接購入したことがある人、購入したことがない人、共通して”専門知識の豊富さ”、”説明の分かりやすさ”、”リスク管理”がTOP3になった。三者とも担当者に対して求めることはかなり近い。
以上のことからネットなどで直接購入したことがある人も、担当者に対して知識面でのフォローを求めていることがわかった。では、なぜ担当者を介して購入しないのだろうか?
営業担当者を介して購入しない理由は? ~相反する2つの課題が浮き彫りに~
担当者を介して購入しない理由を明らかにするために、購入したことがない人に「担当者を介さずホームページなどで購入したい理由」と「担当者を介して購入したい理由」を、購入したことがある人に「実際に担当者を介して購入した理由」を聞いた。
まず購入したことがない人の回答を見てみると、“担当を介すると押し売りされそうなイメージがあるから”という回答が半数を超えている。信頼関係の構築が大きな課題となりそうだ。
それ以外の点だと”店舗に出向きたくない”、”話を聞く時間がない”という回答が目立つ。店舗に出向く手間など、時間的な制約が大きなネックとなっているようだ。手数料など金額面に対する懸念は少ない。
一方、担当者を介して購入したい理由は、これまで出てきた知識面の不安である”専門的な知識がないから”が61.5%となり、次いで”じっくり話を聞きたいから”が17.9%となった。こちらも同様に時間が重要なカギになりそうだ。
*「もし証券を購入するとしたら、担当者を介して購入したいですか? それとも担当者を介さずホームページなどで購入したいですか?」という設問に対する回答者数
- 担当者を介さずホームページなどで購入したい:321人(64.2%)
- 担当者を介して購入したい:179人(35.8%)
次に、「実際に担当者を介して購入した理由」は”じっくり話を聞きたいから”が25.2%で購入したことがない人の回答より7.3%多くなっており、時間をかけることの重要性がより顕著に現れた結果となった。担当者からじっくり話を聞き、商品を理解したうえで判断をしたいというニーズが伺える。
また、担当者を介さずネットなどで直接購入した理由として「気軽に自分の都合の良い時間帯に出来るから」(50代 大阪府 女性)という声もあった。時間的な自由度にメリットを感じているようだ。
まとめると、担当者を介して購入したくない理由として“担当を介すると押し売りされそうなイメージがあるから”という回答が半数を超えており、そのイメージを払拭するためには信頼関係の構築が大きな課題となる。
しかし、一方で信頼関係の構築には時間が必要となり、時間的制約に対する懸念が大きいという相反する課題が浮き彫りになった。
相反する2つの課題を解決する「対面とオンラインのいいとこ取り接客」
証券購入において消費者が感じる3つの壁として「証券に対して感じるハードルの高さ・知識面での不安」「損をするかもしれないという不安」「時間的な制約」があり、これらの問題に対して「信頼関係の構築」と「時間的制約の解消」という相反する2つの課題が浮き彫りになった。
本章ではその相反する2つの課題に対する解決策となり得る「対面とオンラインのいいとこ取り接客」を紹介する。
「対面とオンラインのいいとこ取り接客」とは、対面とオンラインの弱点を補い合うことで顧客が真に求める接客を実現する営業スタイルのことだ。
顧客が対面接客に感じている“負”とは、「窓口に行って話を聞かなければ行けないのは、面倒」(30代 大阪 女性)や「営業担当者と会う時間を合わせられない」(40代 千葉県 男性)といった“手軽さに欠けた接客である”という点である。
一方、顧客がオンライン接客に感じている“負”とは、「画面越しだと表情が読み取りにくいから嘘をつかれそうな気がする」(30代 福岡県 男性)や「対面の方がすっと話が入ってくる。 オンラインは慣れないし 難しく感じる。」(30代 奈良県 女性)など、“信頼構築や情報理解が難しい接客である”という点である。
顧客対応において発生するお互いの“負”を解消し合いながら、いいとこ取りをした営業手法こそ顧客が求めるものであり、金融業界において取り組むべき「新時代の営業スタイル」である。
事実、調査結果内でも顧客が真に求めるのは「部分的なオンライン接客」であることがわかっている。
まとめ
本レポートでは、「証券購入において消費者が感じる3つの壁」があり「3つの壁を突破をする2つのキーワード」が解決の糸口となり得ることを示した。
証券購入において消費者が感じる3つの壁
- 証券に対して感じるハードルの高さ・知識面での不安
- 損をするかもしれないという不安
- 時間的な制約
3つの壁を突破をする2つのキーワード
- 信頼関係の構築
- 時間的制約の解消(手軽さの実現)
“手軽さの実現”で消費者が証券商品に向き合う時間を生み出し、営業担当者がそのサポートをすることで”信頼関係の構築”に繋げる、その結果として証券購入に結びつく……。しかし、”手軽さの実現”と”信頼関係の構築”の両立は容易ではない。
そこで1つの解決策として考えられるのが「対面とオンラインのいいとこ取り接客」だ。対面とオンラインのいいとこ取りで、手軽さとお客様との信頼関係構築の両立を実現できる。
本レポートが金融業界の方々の一助となることを願う。
調査概要
■調査方法:インターネットリサーチ
■スクリーニング調査
- 調査対象:全国の25歳~85歳 男女
- 調査時期:2021年8月31日~2021年9月1日
- サンプル数:20,000
■本調査
- 調査対象:スクリーニング該当者
- 調査時期:2021年9月1日~2021年9月1日
- 回答数:1,500
- *「担当者を介して証券の購入をしたことはありますか?」の設問に対し、「担当者を介して購入したことがある」「担当者を介さず、ホームページなどで購入したことがある」「証券の購入はしたことがない」と回答した人それぞれ500人(計1,500人)に本調査を配信