結果の概要:コロナ禍前の水準に届かず

ブラジルGDP
(画像=PIXTA)

12月2日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。

【実質GDP成長率(2021年7-9月期)】
・前年同期比伸び率(未季節調整値)は4.0%、市場予想1(同4.3%)を下回り、前期(12.4%)から低下した(図表1・2)
・前期比伸び率(季節調整値)は▲0.1%、予想(同0.0%)を下回ったものの、前期(同▲0.4%)からはマイナス幅が縮小した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

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1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様

結果の詳細:高インフレで実質成長率は伸び悩み

7-9月期の実質GDP伸び率は前期比▲0.1%(季節調整値、年率換算▲0.4%)となり、昨年7-9月期(前期比▲0.4%)に続いて2四半期連続のマイナス成長となった。コロナ禍前(19年10〜12月期)との対比では、21年1-3月期にコロナ禍前の水準まで回復したものの、その後下落に転じて7-9月期はコロナ禍前比で▲0.1%の水準となっている(図表4・5)。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が0.9%(前期:▲0.2%)、政府消費が0.8%(前期:0.9%)、投資▲0.1%(前期:▲3.0%)、輸出が▲9.8%(前期:13.7%)、輸入が▲8.3%(前期:▲1.3%)となった。コロナ禍前との対比では、GDPが▲0.1%、個人消費が▲2.1%、政府消費が▲2.2%、投資が18.0%、輸出が1.4%、輸入が▲2.7%という状況にある。

需要別に見た7-9月期のGDPでは、投資が冴えなかったほか、輸出が急減したことがマイナス成長の主因と言える。また、消費については7-9月期には回復したものの、コロナ禍前の水準と比較するとまだ低い状況にある(図表4)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)
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(画像=ニッセイ基礎研究所)

産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3)、前期比は大分類では「第一次産業」が▲8.0%(〜-6月期▲2.9)、「第二次産業」が▲0.0%(同▲0.5%)、「第三次産業」が1.1%(同0.6%)となり、第一次産業の落ち込みと第二次産業の低迷が4-6月期から継続している。特に第一次産業で、前期に引き続き天候不順などを理由に、コーヒーや綿、トウモロコシなどの生産量が少なかった2ことが成長率を押し下げた。第二次産業も部品の供給制約などの影響で製造業のマイナス成長が続いている。一方、「第三次産業」は成長が続き、コロナ禍前の水準を回復した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

最後に、名目成長率では7-9月期は前年同期比+17.3%の高い伸び率となっており(図表6)、名目と実質成長率の差(デフレータに相当)が13.3%まで拡大、高インフレにより実質成長率が伸び悩んでいることが分かる。

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2 ブラジルのコーヒー収穫は生産量が多い年と少ない年を交互に繰り返す特徴がある。今年は収穫が少ない年となっている上天候不順に見舞われている。


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高山 武士(たかやま たけし)
[ニッセイ基礎研究所 経済研究部](http://www.nli-research.co.jp/) 准主任研究員

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