6 ―― 2020年の居住地と同じ都道府県内への宿泊旅客数

コロナ禍下では緊急事態宣言などにより都道府県境を越えた移動自粛が推奨され、2020年4月から11月では、目的地が居住する都道府県内である旅行客の割合は、全体では29.0%となり、近距離の宿泊旅客割合が2倍強に増加した。都道府県別では、1位:東京都(50.4%)、2位:北海道(47.3%)、3位:岩手県(45.2%)、4位:宮城県(43.7%)、5位:神奈川県(42.0%)(図表 - 5)となった。

2019年1月から11月時点の割合と比べると、東京(+32.0%)、北海道(+23.2%)、大阪(+20.2%)、神奈川(+19.9%)、広島(+18.9%)、新潟(+18.1%)と、自身の居住する都道府県を目的地とする宿泊旅客の増加が著しい。

都市部については、目的地および出発地とする宿泊旅客のいずれも減少している。特に首都圏を目的地とする北海道・東北地方からが減少し、居住する県内を目的地とする宿泊旅客が増加している。

日本のホテル市場の回復
(画像=ニッセイ基礎研究所)

7 ―― 2021年の居住地と同じ都道府県内への宿泊旅客数

2020年と2021年の4月から11月で比較すると、2021年で48都道府県中29道府県で居住する都道府県内を目的地とする宿泊旅客の割合が増加している。

全体でも、2021年1月から11月では、目的地が居住する都道府県内である宿泊旅客は29.5%となり、やや近距離の宿泊旅行が増加しているようだ。都道府県別のランキングでは、1位:北海道(51.3%)、2位:岩手県(49.5%)、3位:宮城県(45.1%)、4位:東京都(43.2%)、5位:秋田県(38.4%)となった(図表 - 6)。

日本のホテル市場の回復
(画像=ニッセイ基礎研究所)

2021年4月から11月は2020年と比べると、目的地が居住する県内である宿泊旅客は鳥取県(+16.5%)、島根県(+12.6%)などでは増加しており、さらに自粛ムードが強まっていると見られる。一方、都市部である東京都(▲7.4%)、神奈川県(▲5.4%)では目的地が居住する都県である割合が減少した(図表 - 7、8)。

日本のホテル市場の回復
(画像=ニッセイ基礎研究所)
日本のホテル市場の回復
(画像=ニッセイ基礎研究所)

宿泊旅客数も、居住する都道府県・地域内では回復の傾向が見られる。また、首都圏を目的地とする旅行は、すべての地域からの宿泊旅客数が改善している。ただし、他地域からの中国地方、北海道から九州地方、四国地方から東北地方、沖縄から四国地方などの遠距離は減少している。

回復の段階に当てはめると、2020年はGo Toトラベルキャンペーンなどの影響で「(3)遠距離旅行の増加」する場面もあったが、2021年は居住地都道府県内近隣に留まるケースが多く、「(2)近距離旅行の増加」へやや戻り、回復が遠のいた年といえそうだ(図表 - 9)。

日本のホテル市場の回復
(画像=ニッセイ基礎研究所)

8 ―― 今後は国別の回復速度の違いが鮮明に

国内でも観光業は経済成長を期待されている分野である。観光庁は2022年度の観光関係予算を前年度比1.35倍に上積みするなど、国も推進する方向であることはコロナ禍前とは変わらない。一方で、国内では移動自粛の風潮が未だに強い。断続的なウイルス感染拡大により、遠距離旅行はしないという意識が定着しつつあるのかもしれない。

しかし、欧米では、各国政府が新型コロナウイルス感染をインフルエンザ等と同様に日常ととらえる向きに世論を着実に誘導しつつ、今後を見据え正常化に向けた行動を促すように政策転換をしているようだ。新型コロナウイルスをどう定義し、どのような国の施策を建てるかは、国ごとに異なると思われるが、今年は国毎のコロナ対策の違いによって、経済の回復速度の違いがさらに大きくなり、ホテル市場の回復にも相当な違いが出てくる年になるのではないだろうか。


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渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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