この記事は2022年4月28日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「鉱工業生産22年3月-2四半期連続の増産も、持ち直しのペースは緩慢」を一部編集し、転載したものです。


目次

  1. 自動車生産が再び落ち込む
  2. 生産は下振れリスクの高い状態が続く

自動車生産が再び落ち込む

鉱工業生産
(画像=PIXTA)

経済産業省が4月28日に公表した鉱工業指数によると、22年3月の鉱工業生産指数は前月比0.3%(2月:同2.0%)と2ヵ月連続で上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.5%、当社予想は同▲0.1%)通りの結果となった。出荷指数は前月比0.5%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.6%と2ヵ月ぶりの低下となった。

3月の生産を業種別に見ると、1月に前月比▲14.9%と大きく落ち込んだ後、2月に同15.5%の高い伸びとなった自動車は、半導体などの部品不足に福島県沖地震による工場の稼働停止の影響が加わったことから、同▲6.0%と再び大きく落ち込んだ。一方、内外の設備投資やデジタル関連需要の強さを背景に、生産用機械(前月比3.3%)、電子部品・デバイス(同1.9%)が上昇した。

22年1-3月期の生産は前期比0.8%(10-12月期:同0.2%)と2四半期連続の増産となったが、21年7-9月期に前期比▲1.9%と大きく落ち込んだことを踏まえれば、持ち直しのペースは緩やかにとどまっている。

業種別には、21年度入り後低迷が続いている情報通信機械は、前期比▲6.5%(10-12月期:同▲6.1%)と4四半期連続の減産となったが、デジタル関連需要の強さを背景に電子部品・デバイスが前期比6.6%の高い伸びとなった。世界的な半導体不足と東南アジアからの部品調達難の影響で21年7-9月期に前期比▲16.6%の大幅減産となった自動車は、10-12月期が同1.2%、22年1-3月期が同1.7%と2四半期連続で増加したが、1-3月期の生産水準は21年4-6月期よりも1割以上低い。

鉱工業生産・出荷・在庫の推移
(画像=ニッセイ基礎研究所)
鉱工業生産の業種別寄与度
(画像=ニッセイ基礎研究所)

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年10-12月期の前期比▲1.5%の後、22年1-3月期は同▲0.1%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年10-12月期の前期比▲1.4%の後、22年1-3月期は同▲0.1%となった。

GDP統計の設備投資は、21年7-9月期に前期比▲2.4%と大きく落ち込んだ後、10-12月期は同0.3%と低い伸びにとどまった。部品不足などの供給制約の影響が残っていることが設備投資を抑制しているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いている。22年1-3月期の設備投資は2四半期連続で増加する可能性が高い。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費財出荷指数は21年10-12月期の前期比5.7%の後、22年1-3月期は同▲0.7%となった。耐久消費財が前期比1.1%(10-12月期は同9.7%)、非耐久消費財が前期比0.1%(10-12月は同2.9%)となった。

GDP統計の民間消費は、緊急事態宣言の解除を受けて21年10-12月期に前期比2.4%の高い伸びとなったが、21年末にかけて急回復した外食、旅行などの対面型サービス消費は、まん延防止等重点措置の影響で22年入り後は弱い動きとなっている。22年1-3月期の民間消費は減少に転じる可能性が高い。

生産は下振れリスクの高い状態が続く

製造工業生産予測指数は、22年4月が前月比5.8%、5月が同▲0.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ▲1.4%、▲3.4%であった。福島県沖地震の影響もあって、輸送機械の下方修正幅(3月:▲8.5%、4月:▲10.1%)が特に大きかった。

予測指数を業種別にみると、一進一退の動きが続く輸送機械は、4月が前月比8.7%、5月が同13.9%の大幅増産計画となっているが、半導体不足、新型コロナウイルス感染拡大による供給制約によって、一部の工場で稼働停止が続いており、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。

最近の実現率、予測修正率の推移
(画像=ニッセイ基礎研究所)
輸送機械の生産、材工動向
(画像=ニッセイ基礎研究所)

4月以降は、まん延防止等重点措置の解除に伴う個人消費の回復が期待される一方、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化、中国のゼロコロナ政策によるサプライーチェーン障害など、懸念材料は多い。生産は当面下振れリスクの高い状態が続くだろう。


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斎藤太郎 (さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長

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