この記事は2022年6月7日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「国内株式の積立投資も増えている?~2022年5月の投信動向~」を一部編集し、転載したものです。
目次
外国株式ファンドへの資金流入倍増
2022年5月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主として外国株式を投資対象とするファンドを中心に多くの資産クラスのファンドに資金流入があった【図表1】。ファンド全体では7,900億円の資金流入となり、4月の3,600億円から約4,200億円も増加した。SMA専用ファンド(紺棒)に限ってみると、4月はほぼ資金の出入りがなかったのに対して5月は1,200億円の資金流入があり、ラップ口座等の販売が5月に復調したこともファンド全体への流入増加に寄与した。
ただ、5月は外国株式ファンドへの資金流入が5,500億円と4月の2,700億円から倍増したことが大きかった。SMA専用ファンドに500億円の資金流入があり4月の400億円の資金流出から流入超過に転じたこともあるが、SMA専用ファンド以外でもインデックス型、アクティブ型などのタイプによらず資金流入が増加した。
外国株式インデックス型ファンドに過去最大級の資金流入
外国株式ファンドでは、SMA専用のものを除外するとインデックス型への資金流入(線グラフ)が5月に3,200億円と4月の2,000億円から増加した【図表2】。インデックス型の流入額は、過去最大であった2021年12月に迫る規模であった。
このように外国株式のインデックス型ファンドの販売が好調であるのは、まず積立投資等で毎月定期購入する投資家が増えていることがあげられる。実際に外国株式のインデックス型の毎月の設定額(青棒)をみると、2020年頃から右肩上がりで増加し、2022年に入ってからは今のところ3,000億円を毎月上回り続けている【図表2】。
それに加えて5月は市場環境の影響もあった。外国株式が5月に一時、大きく下落する展開となり、下落時にタイミング投資に伴う資金流入がインデックス型にあったと考えられる。個別ファンドごとにみても、5月に資金流入が大きかった外国株式のインデックス型4本(青太字)とも4月から資金流入が増加していた【図表3】。
ただし、外国株式のインデックス型について気がかりな点もある。それは毎月の解約額(赤棒)も緩やかではあるが増加傾向にあり、2022年1月には解約額が2,000億円に迫るまで膨らんでいた点である。解約額は足元8.5兆円もある純資産総額と比べると少額であるが、今後の動向が注目される。
なお、外国株式のアクティブ型ファンドでも、5月は1,800億円の資金流入と4月の1,000億円から増加したが、資金流入が大きかったアクティブ型5本のうち4本(赤太字)は4月から鈍化した【図表2】。増加したのは「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」(緑太字)のみだった。このことから実はアクティブ型の販売は4月よりも厳しかったが、それ以上に一部ファンドで基準価額の下落を受けて解約が4月よりも出なかったため、結果的にアクティブ型の資金流入が増加したものと推察される。
普通の毎月分配型が見直されつつある?
また、5月はバランス型ファンドに800億円、国内REITファンドに400億円の資金流入と4月の300億円、200億円から増加した。それに加えて、外国REITファンドにも5月に200億円の資金流入と4月の500億円の資金流出から一転して流入超過となった。
足元、予想分配金提示型の人気に陰りが見える一方で「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」に代表される好配当株や内外REITといった、いわゆる普通の毎月分配型が見直されてきているのかもしれない。好配当株やREITは比較的インフレに強い資産と考えられていることも追い風になっていそうである。
国内株式インデックス型ファンドも設定額が緩やかに増加基調
その一方で国内株式ファンドは、5月に600億円の資金流入と4月の800億円の流入から鈍化した。5月はSMA専用のものを除外すると、インデックス型(線グラフ)への資金流入が100億円と4月の700億円から急減した【図表4】。5月の国内株式のインデックス型ファンドの資金動向を日次でみると、日経平均株価が2万6,000円を下回った翌営業日の13日までは資金流入基調であったが、その後、株価が反発するとともに資金流出基調に転じ、月を通してだと小幅な資金流入となった。
このように国内株式のインデックス型ファンドの資金動向は日々の株価変動に左右される傾向がある。過去を振り返ってみても株価が大きく上昇した月は解約(赤棒)が膨らみ、資金流出する月が多かったことからも、そのことが分かる。それもあって国内株式のインデックス型ファンドには安定した資金流入がなく、外国株式のように積立投資する人が増えているのか資金動向からは確認できない。
しかし、資金動向でなく解約額の影響をうけない設定額(青棒)に注目すと、国内株式のインデックス型でも積立投資する人が増えている可能性が示唆される。設定額は1,000億円(点線)を下回る月が以前あったが、2020年9月以降は設定額が毎月1,000億円以上となっている。つまり、毎月の設定額が緩やかに増加基調にあるようにも見える。ただ、増えていたとしても外国株式と比べると増加は緩慢であり、依然としてタイミング投資している投資家が圧倒的に大多数であるといえるだろう。
一部のテーマ型の外国株式ファンドが好調
5月に高パフォーマンスであったファンドをみると、資源やEVといった一部のテーマ型の外国株式ファンドが好調であった【図表5】。また、資源高もあり資源国であるブラジル・レアルが大きく上昇したため、ブラジル・レアルの通貨選択型を組み込んだファンドも好調であった。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
前山裕亮(まえやま ゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
・売却も膨らむ外国株式アクティブ~2022年4月の投信動向~
・2021年好調過ぎたツケを払う米国株式
・米国の株式市場と債券市場、どちらの見通しが正しい?
・資源高などへの耐久力が問われる日本株式
・一部の毎月分配型の外国株式投信が人気に