銀行で執拗に「投資信託」を勧められるわけ
(画像=moonrise/stock.adobe.com)

「投資信託、始めませんか?」。銀行を訪れたとき、窓口の担当者からこのように声を掛けられた経験はないだろうか。中には執拗に勧めてくる担当者もいる。その理由を知っているだろうか。

銀行を訪れたAさんのとあるエピソード

あるエピソードを紹介しよう。登場人物は「Aさん」と、Aさんが口座を保有している地方銀行の担当者の「Bさん」だ。

Aさんは父親が1ヵ月前に亡くなり、資産として父の口座に入っている現金300万円を相続することになった。父の口座に入っていた300万円を自分の口座に入金しておこうと思い、自分が普段使っている銀行の窓口を訪れたところ、窓口の担当者のBさんから次のように声を掛けられた。

「せっかくまとまった金額が手元にあるのでしたら、この機会に資産運用を始めてみませんか」「わたくしどもの銀行ではこの投資信託がおすすめです。いま最も売れている商品ですよ」

Aさんは今年で40歳になる。今まで投資をしたことがなかったが、そろそろ自分も老後のことを考え始めないといけない、と思うようになっていた。そんなときに銀行の担当者のBさんから投資信託を勧められ、「ではこの機会に……」と購入する運びとなった。

リスクやリターンのことは二の次……

このようにして投資デビューをする人は少なくない。そして、このデビューの仕方が一概によくないというわけではない。しかし、注意をしなければいけない点がある。

銀行の担当者が投資信託を勧めてくるのは、基本的に投資信託の「販売手数料」が銀行の売上になるからだ。そのため、中にはリスクやリターンのことは二の次にして、とにかく販売手数料が高い投資信託を積極的に顧客に勧めてくる銀行の担当者もいる。

銀行が販売する投資信託の手数料は、最大で3%程度だ。例えば、AさんがBさんの勧めで購入した投資信託(100万円分)の手数料が3%だとすると、購入した時点で資産は3万円目減りする。この減った3万円を資産運用で取り戻すのは結構大変だ。

場合によっては、投資信託を購入したあと、保有している投資信託の価値が下落することもあり、そうなれば元々あった100万円の資産がさらに目減りすることになる。このようなことも想定されるため、最初にかかる販売手数料は安いに越したことはない。

補足すると、投資信託の場合、投資信託の運用や管理の費用として、「信託報酬」も年0.5〜2.0%程度かかることも知っておきたい。

投資信託を購入するときの心構えは?

販売手数料のことを考えると、銀行の担当者が勧めてくる投資信託を安易に購入しない方がいい。販売手数料が何%か、信託報酬は年何%か、これまでの年間リターンの推移、リスクの大きさなど、さまざまな点を確認した上で判断を下すことが重要だ。

ちなみに同じ投資信託であっても、販売する銀行や証券会社によって販売手数料が異なることがある。特に、ネット証券は販売手数料が安い傾向にあり、銀行で勧められた投資信託が良いと思ったら、まずネット証券の販売手数料と比較してみるといい。

また、投資信託の中には「ノーロード・ファンド」といった、販売手数料が無料の投資信託がある。信託報酬などの手数料は別途かかるが、投資信託を購入した時点でマイナスからスタートしたくない人は、ノーロード・ファンドを検討してもいいだろう。

NISA口座で買付手数料が無料になるケースも

日本では「NISA」(ニーサ)という投資優遇制度がある。一定金額内の投資で得た利益が非課税となる制度だ。証券会社で証券口座を開くときにNISA口座を開けば、NISAの制度を通じて投資信託などを保有することができる。

このNISAの制度を利用した場合、投資信託の買付手数料が無料になるケースがあるので、積極的に利用を検討したいところだ。ただし、証券会社によってNISAの買付手数料に関する扱いは異なるため、証券会社の公式サイトで詳細を確認するようにしたい。

しっかり自分に納得のいく判断を

銀行によっては、本業の利益が赤字のケースも多い。特に地方銀行においては、収益力の低下が深刻なケースもあり、その場合、銀行側が投資信託の販売による手数料収入を増やそうと、躍起になっていることも考えられる。

もちろん、全ての銀行の担当者が販売手数料の高い投資信託ばかりを勧めてくるわけではないが、地方銀行の状況が厳しい状況にある昨今、銀行の担当者が言うがまま投資信託を購入するのは、ややリスクが大きいと言わざるを得ない。

さまざまな投資信託のランキングを参考にするのもひとつの方法だ。例えば、投資信託で有名なランキングに「投信ブロガーが選んだ投資信託ランキング」がある。個人投資家であるブロガーによるランキングでは、銀行の担当者とは異なる目線で投資信託が評価されている。

このようなランキングも参考に、最終的に投資信託を購入するときは、しっかり自分に納得のいく判断を下そう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

無料会員登録はこちら