スポーツ分野でのブロックチェーン技術の活用が進む中、「パリ五輪2024でブロックチェーン技術を利用する」という構想が現実となる可能性が高まっています。世界最大規模のスポーツイベント・オリンピックに、ブロックチェーン技術はどのような恩恵をもたらすのでしょうか。

具体的な4つの活用例

2024 年パリ五輪は「ブロックチェーンオリンピック」になる!?
(画像=rarrarorro/stock.adobe.com)

ブロックチェーンは意図的に一部のデータを改ざんしようと試みても過去のデータと整合性が取れないため、すぐに不正が明らかになります。また、中央管理者が存在しなくてもデータを共有したり取引を成立できたりするという機能が、業務プロセスの簡潔化やコストの削減につながると期待されています。

オリンピックにおけるブロックチェーン技術の活用法として、以下のような提案があります。

1.ブロックチェーンデータ記録・管理システム

参加選手・スポンサーを含む関係者や競技内容、パフォーマンスの記録、薬物検査結果、資金の流れ、事業計画、業務・財務など、あらゆるデータをブロックチェーン上に記録することにより、透明性の向上を図ることが可能になります。それと同時に、半永久的かつ安全にデータを保護できるようになると期待されています。

一例として、国際検査機関(ITA)が東京五輪2020に向けて発表したブロックチェーンドーピング検査システムが挙げられます。同機関は米ブロックチェーン企業Black Factoryと提携し、ブロックチェーンを活用したドーピング検査システムのプロトタイプの作成に取り組んでいました。

2.NFTスマートチケットシステム

オリンピックは開催のたびに、世界中で数百万枚のチケットが販売される国際スポーツイベントです。しかし、その裏側では偽造チケットの流通や不正取引、転売、業者による買い占めなど、さまざまな違法行為が問題となっています。

ブロックチェーン技術は、より効率的で透明性の高いチケット流通システムを構築する上で、欠かせない要素となる可能性を秘めています。例えば、入場チケットを唯一無二の価値を保証するNFTで発行することにより、主催者がチケット販売後の流通経路を追跡できるため、違法行為の取り締まりに大いに貢献するでしょう。

3.ブロックチェーン・スポンサーシップ

オリンピックのスポンサーは大手企業ばかりではありません。選手への資金援助を提供する個人スポンサーの存在も、優秀な選手を育成する上で重要な役割を果たしています。

ところが十分な経済的支援を受けることができず、才能が開花しないままオリンピック出場の夢を諦める選手も多く存在するのが現状です。

1人でも多くのスポーツ選手やチームに公平なチャンスを与え、有望な選手を世界の舞台へ送り出すための支援金を募る手段として、ブロックチェーン技術が注目されています。

-1)暗号通貨

暗号通貨には、世界中どこへでも少額から送金できるという特徴があります。クラウドファンディングなどを介して暗号通貨で支援金を募集するシステムを構築すれば、個人スポンサーがより気軽にスポーツ選手を支援できる環境が整うでしょう。

2014年にはジャマイカのボブスレーチームが冬季オリンピックに出場するための費用として、サポーターグループが2万5,000ドル(約320万円)相当のドージコインを調達しました。

-2)スポンサートークン

スポーツ選手の経済的支援に役立つと期待されているもうひとつの活用法は、スポンサートークンの発行です。

トレーニングや設備の資金を必要とするスポーツ選手やチームが、独自のトークンを発行して投資家から資金を調達するというものです。投資家は選手やチームの将来を見込んでトークンを購入し、将来収益が上がった場合は利益を還元します。

4.アイテムなどのトークン化

オリンピックやスポーツ選手の公式グッズの販売などをトークン化することで、新たな収益源となるチャンスが生まれます。

国際オリンピック委員会(IOC)は米ゲーム開発企業nWayと提携し、2021年6月にオリンピックをモチーフとするNFTコレクターピンバッジの販売と、NFTゲームアプリ「Olympic Games Jam:Beijing 2022 」のローンチを発表しました。

北京冬季や東京五輪の事例

ブロックチェーン技術や暗号資産をオリンピックに取り入れる動きは、東京オリンピック2020の開催前後にも活発化していました。前述のドーピング検査システムへの取り組みや、暗号資産の「XRP」を東京オリンピックの公式通貨とする署名運動が行われました。

北京冬季2022ではより具体化し、前述の公式NFTゲームアプリに加えて、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)「デジタル人民元(正式名称e-CNY)」の実証実験が会場で行われました。中国の銀行口座を所有していない非移住者(北京競技大会の訪問者など)でも、アプリやカード、リストバンドを利用して気軽に人民元で決済できるとして、世界中から注目を浴びました。

パリ五輪でブロックチェーンオリンピックが実現する?

ブロックチェーン技術をオリンピックに取り入れる動きが進んでいることを考えると、パリ五輪でブロックチェーン技術がより広範囲に採用される可能性は極めて高いといえます。

2019年の時点で、すでにパリ五輪の入場券などのトークン化を仏財務高官に提案されていました。IOCもブロックチェーン技術を含む新たなテクノロジーを、オリンピックのさらなる向上に役立てる取り組みに積極的です。

米市場調査企業ニールセンによると、ブロックチェーン企業によるスポーツスポンサーシップへの投資は、2026年までに50億ドル(約6,381億2,136万円)に達する見込みです。オリンピックでの実用化が進めば、市場規模はさらに拡大することが予想されます。

引き続きWealth Roadでは、大いなる成長の可能性を秘めた領域として、今後もブロックチェーンの動向に注視していきます。

※為替レート:1ドル=128円
※上記は参考情報であり、特定企業の株式や暗号資産などの売買及び投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road