この記事は2022年6月24日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「消費者物価(全国22年5月)-コアCPI上昇率は、秋頃には2%台半ばへ」を一部編集し、転載したものです。
コアCPI上昇率は2ヵ月連続の2%台
総務省が6月24日に公表した消費者物価指数によると、22年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.1%(4月:同2.1%)となり、上昇率は前月と変らなかった。事前の市場予想(QUICK集計:2.1%、当社予想も2.1%)通りの結果であった。
物価高対策の影響でエネルギー価格の上昇率が鈍化したが、食料(生鮮食品を除く)、家具・家事用品などの伸びが高まったことが、それを相殺した。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.8%(4月:同0.8%)、生鮮食品が前年比12.3%と4ヵ月連続で前年比二桁の伸びとなったことから、総合は前年比2.5%(4月:同2.5%)と、コアCPIを上回る伸びが続いている。
コアCPIの内訳をみると、電気代(4月:前年比21.0%→5月:同18.6%)、ガス代(4月:前年比17.5%→5月:同17.0%)、ガソリン(4月:前年比15.7%→5月:同13.1%)、灯油(4月:前年比26.1%→5月:同25.1%)の伸びがいずれも鈍化し、エネルギー価格の上昇率は4月の前年比19.1%から同17.1%へと鈍化した。ガソリン、灯油は物価高対策として実施されている燃料油価格激変措置(石油元売り会社への補助金)で価格が抑制された。
食料(生鮮食品を除く)は前年比2.7%(4月:同2.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比36.2%)、マヨネーズ(前年比25.4%)、しょう油(前年比10.1%)などが前年比二桁の高い伸びとなっているほか、パン(4月:前年比7.7%→5月:同8.2%)、麺類(4月:前年比3.9%→5月:同5.1%)、菓子類(4月:前年比2.6%→5月:同3.2%)なども前月から伸びを高めた。
さらに、一般外食は、食料工業製品に比べて人件費の影響を受けやすいこともあり、相対的に低い伸びが続いていたが、原材料費の大幅上昇を価格転嫁する動きが広がり、3月の前年比1.0%から4月が同1.9%、5月が同2.3%と上昇ペースが加速している。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.31%(4月:1.44%)、食料(生鮮食品を除く)が0.61%(4月:0.61%)、携帯電話通信料が▲0.39%(4月:同▲0.39)、その他が0.58%(4月:0.46%)であった。
物価上昇の裾野が広がる
消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、5月の上昇品目数は354品目(4月は351品目)、下落品目数は124品目(4月は123品目)となり、上昇品目数、下落品目数ともに前月から若干増加した。上昇品目数の割合は67.8%(4月は67.2%)、下落品目数の割合は23.8%(4月は23.6%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は44.1%(4月は43.7%)であった。
食料(生鮮食品を除く)の上昇品目割合は70%を超えている(4月:72.6%、5月:73.7%)。原材料価格の高騰を販売価格に転嫁する動きはさらに広がっている。
コアCPI上昇率は秋頃には2%台半ばへ
これまでコアCPIを大きく押し上げてきたのは、原油高に伴うエネルギー価格の大幅上昇だったが、ここにきて上昇ペース加速の主因は食料品(除く生鮮食品)へと移りつつある。
食料品は21年7月に前年比0.1%と上昇に転じた後、22年5月には同2.7%まで上昇率が高まったが、川上段階の物価は、輸入物価が前年比で30%程度、食料品の国内企業物価が前年比で4%台後半の高い伸びとなっている。川上段階の物価上昇を消費者向けの販売価格に転嫁する動きがさらに広がることにより、食料品(生鮮食品を除く)の物価上昇率は夏場には4%近くまで加速する可能性が高い。
物価高対策(燃料油価格激変緩和措置)がガソリン、灯油価格の上昇を抑えていることに加え、電気代、ガス代については、燃料費の変動を料金に上乗せする燃料費調整制度の上限に達した会社が増えているため、エネルギー価格の前年比上昇率は徐々に鈍化する公算が大きい。一方、円安による物価上昇圧力が高まる中で、食料品に加え、日用品や衣料品などでも価格転嫁の動きが広がることが見込まれる。
コアCPI上昇率は、携帯電話通信料値下げの影響が一巡する秋頃には2%台半ばまで高まることが予想される。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長
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