この記事は2022年4月15日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「日用品に値上げの波、「体感物価」が急上昇」を一部編集し、転載したものです。
商品市況の高騰に伴う輸入物価の上昇を受けて、足元の消費者物価は上昇傾向で推移している。とりわけ、ガソリンや食料品など購入頻度の高い品目の値上げが目立つのが今回の物価上昇の特徴だ。
消費者物価指数の動きを購入頻度別に見ると、家計が「頻繁に購入する品目」(年間購入頻度が15回以上の品目。CPIの1割程度のウエイト)は2月に前年比4.9%まで伸び幅が上昇している(図表1)。内訳では、ガソリン(前年比22.2%)、食パン(同8.2%)、ポテトチップス(同5.9%)などの伸びが目立つ。
こうした日用品の価格上昇は今後も続くだろう。特に、食料品の値上げはこれから本格化する。国連食糧農業機関(FAO)発表の2月の食料価格指数は、ウクライナ危機が押し上げ要因となり、11年ぶりに過去最高値を更新した。今後、輸入食料高が国内価格にも波及することで、さらに上昇圧力は強まる。4月以降の小麦の政府売り渡し価格は7万2,530円/tと、2008年10月期以来の高値水準に達しており、食パンをはじめとした小麦関連商品はさらなる値上げが避けられない。政府売り渡し価格は次回改定される2022年10月に一段と引き上げられる可能性が高い。
購入頻度の高い日用品の価格上昇は、家計の「体感物価」を上昇させる。実際、消費者庁の「物価モニター調査」を見ると、生活関連物資全般の価格が1年後に上昇すると考えている人の割合が3月調査(調査期間=3月3~7日)で91.6%と調査開始以来の最高値まで上昇した(図表2)。消費者は、家計も食料品やガソリンといった生活必需品の価格上昇を敏感に感じ取っていることが分かる。
特に低所得者は支出に占める日用品のウエイトが大きいことから、これらの商品の値上げに敏感だ。体感物価の上昇により、消費性向の大きい低所得者を中心に節約志向が強まり、個人消費の回復が阻害される可能性が高まっている。
みずほリサーチ&テクノロジーズ 上席主任エコノミスト/酒井 才介
週刊金融財政事情 2022年4月19日号