この記事は2022年1月14日にSBI証券で公開された「<保存版!?>「インフレ」「金利上昇」で上昇期待の銘柄は?」を一部編集し、転載したものです。


日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

2022年1月の東京株式市場は波乱気味の展開が続いている。1月6日(木)には、日経平均株価が前日比で844円29銭も急落。同月11日(火)までの3営業日で計1,109円68銭も下げてしまった。同月12日(水)は543円18銭高に戻したが、13日(木)、14日(金)と続落し、安値では2万8,000円を下回って1月前半を終えている。

株価波乱の主な要因としては、世界的に金利上昇やインフレ進行が懸念されていることがあげられる。1月6日(木)の急落にしても、足元の1月14日(金)の株安にしても、「インフレが続き、FRBなど世界の主要中央銀行が金融引き締めを加速させるのでないか」との懸念が背景になっていると考えられる。

今回の日本株投資戦略では、「金利上昇」と「インフレ」が長期化した場合、株価上昇期待の大きい銘柄を紹介する。

目次

  1. 1. インフレの進行理由と、上昇が期待できる銘柄
    1. 1.1. 世界的にインフレが進行している理由4選
    2. 1.2. 金利上昇やインフレが続いた場合に株価が上昇しやすい銘柄は?
  2. 2. 抽出銘柄を解説
    1. 2.1. 抽出銘柄解説(1) ―― 株式会社INPEX
    2. 2.2. 抽出銘柄解説(2) ―― 三菱瓦斯化学株式会社

1. インフレの進行理由と、上昇が期待できる銘柄

世界的にインフレが続いている。1月12日(水)に発表された12月の米CPI(消費者物価指数)は、前年同月比で7.0%の上昇。市場の予想通りとはいえ、上昇率は1982年6月の7.1%以来、39年6カ月ぶりの高さとなった。

世界的な商品市況の値動きを示すCRB指数は上昇基調が続いており、2014年12月11日(木)以来の高値水準だ。また、鋼材や非鉄金属、燃料など主要製品の卸値をもとに算出される日経商品指数17種が、1月13日(木)に最高値を更新した。

1.1. 世界的にインフレが進行している理由4選

世界的にインフレが進行している理由は以下の4つだと考えられる。

(1)多くの国や地域での大規模経済対策、緩和的金融政策などを背景とする、家計の貯蓄増・純資産増。その結果としての消費増
(2)同時に多くの国や地域で経済活動が再開され、エネルギーやサービス・モノへの需要が短期間で拡大
(3)拡大する需要に対する供給不足。新型コロナウイルスの感染拡大を経て生産や物流に関わる人手が減少
(4)脱炭素の動きが進み、石油や石炭、天然ガス等化石燃料の生産設備等に対する投資マインドが冷え込んだため

(2)の要因は、一時的な要素が強く、近い将来、解消が期待できる。しかし、(3)や(4)については構造的な問題が含まれており、インフレ長期化をもたらす可能性がある。

さらに(1)に関しては、インフレ進行に歯止めをかけるべく、世界で中央銀行が金融政策の転換を試み始めている。特に注目されているのがFRB(米連邦準備制度理事会)の動向だ。FRBは「2022年3月までに量的緩和(QE)を終わらせ、その後は政策金利の引き上げ、さらには資産の縮小(QT)に移っていく」との見方が支配的だ。

1.2. 金利上昇やインフレが続いた場合に株価が上昇しやすい銘柄は?

次は、金利上昇やインフレが続いた場合に、株価が上昇しやすい銘柄を紹介したい。

金利上昇(象徴として米10年国債利回り)に強い銘柄として、保険や銀行などの金融株が代表的と考えられる。また、有力銘柄のタイプとしてはPERやPBRが低く、あるいは予想配当利回りが高い「バリュー株」が選好されやすく、逆にPERやPBRが高い「グロース株」は売られやすいという傾向がある。

指数でいえば、NYダウやTOPIXは相対的に買われやすく、ナスダックや東証マザーズ指数は逆に売られやすい、とみられる。なお、米10年国債利回りが上昇すると円安・ドル高になりやすいので、自動車株にも追い風が吹く。

インフレに強い銘柄はどのような銘柄だろうか。図表1では、インフレ局面で株価上昇が期待される銘柄として、CRB指数(商品価格の変動を示す代表的な指標)との相関関係が強い銘柄を紹介している。最初にCRB指数との相関係数が高い上位30銘柄(時価総額1,000億円以上の東証1部銘柄)を抽出し、相関係数の高い順に30銘柄を並べた。その後、各銘柄の米CPI、WTI先物、米長期金利との相関係数も記載している。

たとえば、株式会社INPEX(1605)の場合、CRB指数との相関係数が全銘柄でトップだが、米CPI、WTI先物、米長期金利との相関係数についても、上位にランクインしており、「インフレ」「金利上昇」に強い銘柄であると考えられる。

「インフレ」「金利上昇」で上昇期待の銘柄 「インフレ」「金利上昇」で上昇期待の銘柄 「インフレ」「金利上昇」で上昇期待の銘柄
(画像=SBI証券)

*BloombergデータをもとにSBI証券が作成。相関係数は2022年1月12日(水)までの10年間のデータから計算されています。相関係数は、2つの計数が同一方向に動く強さを示し、−1以上+1以下の値を取ります。+1に近いほど同一方向に動く傾向が強く、マイナスの場合は逆の方向に動きやすいと分析されます。

2. 抽出銘柄を解説

次に、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどを紹介しよう。

2.1. 抽出銘柄解説(1) ―― 株式会社INPEX

株式会社INPEXは、原油・天然ガスの開発を専業としており、資源開発としては国内最大手だ。原油・天然ガス生産では世界中堅クラス。

2006年4月に国際石油開発と帝国石油による共同持株会社「国際石油開発帝石ホールディングス」として設立された。2008年10月には傘下の国際石油開発、帝国石油を吸収合併。2021年に商号を国際石油開発帝石から現社名へ変更して現在に至る。

権益取得から、探鉱、生産、製品販売に至るまでグローバル規模でエネルギー供給を担っており、新規開発にも積極的。筆頭株主は経済産業大臣で国策会社の側面がある。

売上構成比(2020年12月期)は、原油66%、天然ガス32%。原油は連結子会社が手掛けるアラブ首長国連邦の海上油田が主力。天然ガスでは、豪州での生産が2019年にスタートしている。

2021年12月期、第3四半期累計(2021年1月〜9月)の連結業績は、売上高が8,492億円(前年同期比43.3%増)、営業利益が4,024億円(同2.1倍)、最終損益が1,377億円の黒字(前年同期は1,254億円の赤字)だった。原油価格の上昇が寄与した。市況(ブレント)は平均1バレル=67.97ドルと会社前提(前年同期は42.53ドル)で推移した。

2021年12月期の連結業績予想(会社予想)は、売上高を1兆1,340億円から1兆2,200億円(前期比58.2%増)に、営業利益を5,130億円から5,880億円(同2.4倍)に、最終損益を1,700億円の黒字から1,850億円の黒字(前期は1,117億円の赤字)に引き上げた。年間配当予想は40円(前期は24円)を据え置いた。

当社株はインフレ関連指標や米長期金利との相関係数が強く、「インフレ」には強そうだ。会社予想EPSベースでの予想PERは8.7倍、PBRは0.5倍で、典型的なバリュー株であることも、現在の相場環境では追い風になりそうだ。しかし、「脱炭素」が重視される流れは逆風になりそうだ。

▽株式会社INPEXの値動き

INPEX(1605)
(画像=SBI証券)

期間:2021年7月19日〜2022年1月14日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

2.2. 抽出銘柄解説(2) ―― 三菱瓦斯化学株式会社

三菱瓦斯化学株式会社は大手化学メーカーだ。暮らしに密着した、メタノールやアンモニアなどの基礎化学品から、高機能な機能化学品まで幅広く展開している。世界にグループ会社147社を抱え、海外売上高が59%(前期)に達するグローバル企業。

メタノールでは、同社は世界で唯一のメタノール総合メーカーで、天然ガスを原料に製造している。そこからプラスチックや合成繊維、接着剤など、多種多様な製品を生産。二酸化炭素からメタノールを生産する技術を持ち、環境保全への貢献も目指している。

機能化学品では、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂が注目されている。耐熱性や電気特性に優れた材料で、半導体パッケージに材料面で革新的な変化をもたらした。今後は半導体市場の成長に加え、パッケージ基板の高機能化も構造変化などもあり、成長の持続が期待されている。

この他、MXナイロン、光学樹脂ポリマー、MXDA(メタキシレンジアミン)、脱酸素剤など、多くの世界シェア1位製品を有していることが、当社の強みになっている。

2021年11月5日(金)、同社は2022年の3期・第2四半期(累計)決算を発表。売上高3,358億円(前年同期比26.0%増)、経常利益387億円(同134.3%増)になった。メタノールの市況上昇や、半導体向けBT樹脂の好調などが追い風だった。好調な上半期決算を受け、通期の会社計画売上高は6,600億円から6,900億円(前期比15.8%増)に、経常利益は610億円から680億円に上方修正された。

今期、第2四半期末の自己資本比率は63.3%で好財務体質。有利子負債は891億円だが、現預金884億円を保有するうえ、流動比率(流動資産が流動負債の何%かを示す)が245%あり、金利上昇に強い財務体質と言えそうだ。

1月13日(木)現在、会社予想EPSを基準とした予想PERは8.6倍、PBRは0.8倍弱、予想配当利回りは3.86%となっており、典型的なバリュー株と考えられる。テクニカル的には75日移動平均線で跳ね返されているが、下から上昇している25日移動平均線が下値抵抗ラインになりそうだ。

▽三菱瓦斯化学株式会社の値動き

三菱瓦斯化学(4182)
(画像=SBI証券)

期間:2021年7月19日〜2022年1月14日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数

[関連記事 SBI証券より]
<日経平均が乱高下!>金利上昇・波乱が予想される相場でも株価上昇が期待できそうな銘柄は?
<日株戦略特選!>来年度大幅増益・株価上昇期待の銘柄は!?
<第2のレーザーテック!?>半導体の技術革新を先導する“半導体パッケージ”関連8銘柄
<12月権利確定銘柄>好配当利回りが期待され、30万円未満で買える銘柄特集
<12月株主優待>30万円未満で買え、配当も期待できる16銘柄をご紹介


*本記事でご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。