この記事は2022年1月7日にSBI証券で公開された「<日経平均が乱高下!>金利上昇・波乱が予想される相場でも株価上昇が期待できそうな銘柄は?」を一部編集し、転載したものです。
2022年の東京株式市場はまさしく「乱高下」してのスタート。日経平均株価は1月4日(火)に前年末比510円高、翌5日(水)も前日比30円高と続伸したが、翌6日(木)には同844円安と急反落した。
新型コロナウイルスの感染拡大が続いているものの、米国では景気回復期待が根強く、NYダウは高値更新となり、1月4日(火)、5日(水)とも続伸。
反面、昨年12月以降の長期金利上昇基調が年明けも継続し、PERの高いハイテク株は売りが優勢。特に1月5日(水)はFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨の内容が、予想以上にタカ派的であったとの見方が多く、長期金利上昇が加速し、ハイテク株の多いナスダックが1営業日で3.3%下げる急落となった。
こうした中、米国ではヘッジファンドなどの大口投資家が、ソフトウェアや半導体関連株に「10年ぶりといわれる巨額の売り注文を執行した」と伝えられ、ハイテク株などへの売りが加速。その流れを引き継いだ1月6日(木)の東京株式市場は急落となった。
1月7日(金)はとりあえず、反発してスタートしたが、買い一巡後は売られるなど、不安定な状態は継続している。今後はどうなるのだろうか。物色対象として、いかなる銘柄が有望か。
目次
1. 金利上昇・波乱が予想される相場でも株価上昇が期待できる銘柄
市場予想では、2022年の米国では量的緩和が3月までに終了し、そのあとは「政策金利の引き上げ局面になる」とされている。米政策金利(上限)は、2021年末の0.25%から2022年末には0.75%に、米長期金利は2021年末の1.51%から、2022年末に2%超まで上昇するというのが市場予想(Bloombergコンセンサス)だ。
インフレ圧力を抑えるため、世界的に金利は上昇しやすい。PERやPBRが高く、割高感がある銘柄は相対的に売られやすい状態が続きそう。
株式市場を眺めると、1月6日(木)の株価急落相場でも、金利上昇に強いバリュー系の銘柄は物色されており、銘柄入れ替えが進んでいるという印象だ。株価の下落に注意すべきことは確かだが、同様に物色対象の変化に意識を払うべきかもしれない。
今回は、以下の条件でスクリーニングを行ってみた。業績が堅調なものの割安感が強く、財務体質が良好で、将来の金利上昇局面にも強そうな銘柄を抽出した。
・東証1部上場銘柄
・時価総額1千億円以上
・予想PER12倍未満
・PBR1倍未満
・有利子負債自己資本比率20%未満
・予想配当利回り2%超
・市場コンセンサスで今期経常利益が前期比5%超の増益、または黒字転換の予想
下図の銘柄は上記の条件をすべて満たしている。掲載の順番はPBRの低い順だ。
2. 抽出銘柄を解説
上に掲載した図表1から抽出した銘柄について、投資ポイントなどを紹介しよう。
2.1. 抽出銘柄解説(1) ―― 三菱瓦斯化学株式会社
大手化学メーカー。暮らしに密着したメタノール、アンモニアなどの基礎化学品から、高機能な機能化学品まで幅広く展開。世界に147のグループ会社を抱え、海外売上高が59%(前期)に達するグローバル企業。
メタノールについては、世界で唯一のメタノール総合メーカーで、天然ガスを原料に製造し、そこからプラスチック、合成繊維、接着剤など、多種多様な製品を生産している。二酸化炭素からメタノールを生産する技術を持ち、環境保全への貢献を目指している。
機能化学品の中では、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂に注目。耐熱性や電気特性に優れた材料で、半導体パッケージに材料面で革新的な変化をもたらした。今後は半導体市場の成長に加え、パッケージ基板の高機能化や構造変化などがあり、成長の持続が期待されている。
この他、MXナイロン、光学樹脂ポリマー、MXDA(メタキシレンジアミン)、脱酸素剤など、多くの世界シェア1位製品を有していることが強みになっている。
2021年11月5日(金)、2022年の3期・第2四半期(累計)決算を発表。売上高は3,358億円(前年同期比26%増)、経常利益387億円(同134.3%増)。メタノールの市況上昇や、半導体向けBT樹脂の好調などが追い風になった。
好調な上半期決算を受け、通期の会社計画売上高は6,600億円から6,900億円(前期比15.8%増)に、経常利益は610億円から680億円に上方修正された。
今期、第2四半期末の総資産は8,672億円。純資産は6,092億円(自己資本比率63.3%)で好財務体質。長短借入金に社債を加えた有利子負債は891億円だが、現預金884億円を保有するうえ、流動比率(流動資産が流動負債の何%かを示す)が245%で、金利上昇に強い財務体質だ。
▽三菱瓦斯化学株式会社の値動き
期間:2021年7月13日〜2022年1月7日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
2.2. 抽出銘柄解説(2) ―― 株式会社ミライト・ホールディングス
通信設備工事の大手企業。2010年に電気通信設備事業を営む大明、東電通、コミューチュアの3社による共同持株会社としてスタート。NTTやモバイルキャリア向けに通信設備の建設や保守、運用などを行う事業が中核だが、一般企業向けにも展開している。
2021年11月12日(金)、2022年の3期・第2四半期(累計)決算を発表。売上高は2,118億円(前年同期比10.5%増)、営業利益は110億円(同64.2%増)。5期連続増収となり、最高益を更新した。受注高も前年同期比で8.9%の増加。
これを受けて、通期会社計画は売上高が4,700億円から4,800億円(前期比3.5%増)に、営業利益は305億円から320億円(同6.2%増)に、経常利益は320億円から335億円(同5.5%増)に、それぞれ上方修正された。
2022年の3期・第2四半期末の総資産は3,360億円、純資産は2,348億円。1月6日(木)時点の時価総額は2,060億円。解散価値といわれる純資産を下回る割安感の強い水準だ。
自己資本比率は68.4%と高めで、有利子負債は短期借入金1.9億円程度と、ほぼ無借金経営であり、財務体質は堅固に見える。現預金482億円を有し、金利上昇には強い財務内容だ。
今後、金利上昇が見込まれる環境下に加え、5Gインフラやデータセンターの整備、EV普及に伴う通信需要のさらなる増大と、事業環境においても追い風が継続しそう。
安定成長型企業のため、株価上昇局面で飛び乗ると報われないケースがあるので注意を。しかし、現状は9月14日(火)の年初来高値2,403円から21%弱下げた水準であり、押し目買い検討も可能だ。
▽株式会社ミライト・ホールディングスの値動き
期間:2021年7月13日〜2022年1月7日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数
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