この記事は2022年7月5日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「Z世代を1000文字くらいで語りたい(2)-17年間というギャップ」を一部編集し、転載したものです。

Z世代
(画像=Paylessimages/stock.adobe.com)

目次

  1. 17年間
  2. 片やたまごっち、片やiPhone5

17年間

昨今、メディアでZ世代を特集する番組が作られることも多いが、「Z世代」という言葉の実態は現在の若者層をざっくりラベリングするための名称の様に使われているような印象を持つ。

そもそもZ世代は1996年から2012年の17年の間に生まれた若者を指しており、17年間を子供の成長で比較すると、幼稚園児から大学生までの年齢差がある。この17年間というのは社会や消費市場の観点からも、環境変化の大きさを十分に感じさせる歳月である。

そこでZ世代のなかでも1996年の初期に生まれた者と、2010年以降の後期に生まれた者では、消費行動や考え方に違いが出てくる。

前回のコラムでは、生まれた時からインターネットが存在していた「デジタルネイティブ」をZ世代の特徴のひとつとして挙げたが、インターネット黎明期にインターネットに触れていた1996年前後に生まれた層と、インターネットが日常生活においてより重要なインフラとなり、ユビキタス社会(*1)が加速している現代の若者とを比較しても、同じネットネイティブといっても本質は異なるだろう。

学研教育総合研究所の『小学生白書』(*2)が実施したパソコン普及率(保有率)の調査によると、“家庭の普及率”は1996年には32.8%であったが、10年後の2006年には95.8%と10年で約3倍の普及率となっている。

また、“学校の普及率”でも、調査開始時の1998年には65.5%であったが、2006年には96.1%に達しており、ほぼ全校にパソコンが普及している状況となっている(図1)。

Z世代
(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、同白書の「通信機器としてのパソコン・タブレット・スマートフォン・ゲーム機の利用状況」によれば、「自由に使える通信機器はない」と答えた割合は調査開始時の2016年では、43.4%であったが、2019年には22.8%と大きく減少しており、5人のうち4人が自由にインターネットに接続できる環境下に身を置いている状況となっている(*3)。

家庭用にインターネットが普及し始めた当初は、インターネットへの接続方法として、電話回線を使用したダイヤルアップ接続が採用され、ネットワークへのアクセスには文字通り、接続作業を要した。

また、パソコンなどを使用して検索をする際も、検索をするにはまずデバイスを起動し、インターネットエクスプローラーなどの検索エンジンを選択し、検索するという能動的な作業を行う必要があったため、インターネットは意識をして使用されるモノであった。小学校で「インターネットの使い方」としてそのプロセスを授業で習ったY世代もいるのではないだろうか。

しかし、昨今では最初にインターネット回線接続の設定を行えば、常にネットワークに接続された状態が維持され、パソコンやスマホを使用した「検索機能」に限らず、Amazon AlexaのようなバーチャルアシスタントAI技術やテレビをはじめとした家電に至るまで、意識をしていない所で我々はインターネットを使用している。

このように、「Z世代はデジタルネイティブ」と一括りで特徴づけても、Z世代間の中でもその本質は大きく異なるのである。デジタルネイティブに限らず、Z世代に関する報道の多くで、その1つの特徴を17年間に生まれたZ世代全ての人に当てはめて議論する傾向があるが、筆者自身はそのような取り上げ方に疑問を抱いている。


*1:「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークにつながることにより、様々なサービスが提供され、人々の生活をより豊かにする社会。(総務省平成16年版 情報通信白書より)
*2:学研教育総合研究所白書シリーズWeb版『小学生白書30年史』「第2部小学生の生活・生活環境の変遷」
https://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/30history/chapter2/02.html
*3:もちろん、各家庭で利用時のルールはあるだろうから、手放しで自由であるわけではない。


片やたまごっち、片やiPhone5

Z世代の17年間には、インターネットの登場のような市場形態の根幹を大きく変化させるような市場革命に限らず、小さな市場変化や新しいトレンド、商品の開発などが行われている。

そこで、一例として電子機器市場に焦点を当ててみよう。1996年と言えばゲームでは任天堂株式会社から「NINTENDO64」が発売されており、Z世代初期に当たる若者はそれ以前の中心ハードであった「スーパーファミコン」ではなく「NINTENDO64」を据置型家庭用ゲーム機として初めて触る者もいたわけだ。また、同年にはバンダイから「たまごっち」が発売され、老若男女問わず携帯育成ゲームに熱中していた。

一方で2012年の電子機器市場をみると、アップルからiPhone5が発売されており、この年には既にスマートフォンがガラケーの割合を上回っていた。音楽視聴のスタイルにも変化は表れており、2001年に発売されたiPodシリーズのヒットにより、MP3形式での音楽視聴が広く普及し、CDプレイヤーやMDプレイヤーを持ち歩く消費者は少なくなっていた。

17年という歳月は、消費者の音楽消費の慣習をも大きく変化させていた。そして、据置型家庭用ゲーム機においても2012年には任天堂からインターネットを通じて他者との対戦などのコミュニケーション機能が付加された「Wii U」が発売されており、既にインターネットが日常生活に溶け込んでいたことがわかる。

Z世代
(画像=ニッセイ基礎研究所)

ここまで1996年から2012年を比較して消費されてきた商品の変化を雑多に認めてきたが、筆者が指摘するまでもなく、時代の流れと共に技術革新が行われ、商品やサービスが進歩するという事は、誰もが認識しており、改めて強調するほどの事ではないだろう。

しかし、同じ17年というあまりにも長い歳月の間に生まれた若者をZ世代として単純にラベリングし、十把一絡げに議論することに妥当性はあるのだろうか・・・。筆者はZ世代論を取り扱う際に3つの視点を考慮に入れている。(続)

廣瀨 涼(ひろせ りょう)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員

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