この記事は2022年6月21日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「Z世代を1,000文字くらいで語りたい(1)-特徴的な3つの消費」を一部編集し、転載したものです。

Z世代
(画像=MQ-Illustrations/stock.adobe.com)

目次

  1. Z世代とは
  2. 3つの消費行動の特徴

Z世代とは

昨今「Z世代」という言葉をよく耳にしないだろうか?Z世代とは、主に欧米で議論されてきた世代論のことであり、1996年から2012年の間に生まれた若者の事を指す。日本でも、2020年アメリカ合衆国大統領選挙関連の報道で、新しい価値観を持つ彼らの1票が注目され、Z世代に関する特集が当時多く組まれた。

これと同時に、日本における若者もZ世代というラベリングがされて、主に消費行動の視点から、彼らの特徴が注目されてきた。筆者は、Z世代の消費文化を専門に研究しており、彼らの他の世代とは異なる価値観を日々目の当たりにしている。本コラムでは数回にわたり、彼らZ世代に対する筆者の気づきを認めていく。

Z世代
(画像=ニッセイ基礎研究所)

*1:研究者や研究領域によって定義の仕方が異なる


3つの消費行動の特徴

筆者は、Z世代の消費行動には(1)デジタルネイティブ、(2)フリーミアム、(3)サブスクリプションの3つの特徴があると考えている。

まず、(1)デジタルネイティブだが、Z世代は生まれた時から消費方法の選択肢として、インターネットという手段が存在していた。1999年にYahoo! JAPANにより、日本向けYahoo!オークションがサービス開始され、2000年にはアマゾンジャパンがサービスを開始している。それ以前の世代が、インターネットの登場に伴い、消費の方法としてインターネットを新たに受け入れる必要があったのに対して、Z世代は、逆にインターネットショッピングという選択肢がない時代を知らないといえる。

次に(2)フリーミアムであるが、フリーミアムとは基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高度なサービスや機能に関しては、有料で行う事により収益を得るビジネスモデルを指す。基本プレイ無料のスマホゲームは、その身近な例と言える。また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い普及した「Zoom」をはじめ、オンラインミーティングツールでは基本無料サービスと、より充実した有料サービスを消費者は選ぶことができる。Z世代では、そのようなフリーミアムな消費を行う機会が消費行動を始めた時から多く存在しており、無料で消費することで満足できるモノならばわざわざお金を払う必要がない、という価値観を擁している者も多い。一方でスマホゲームなどへの課金や、自分が推している(*2)人に対して「投げ銭」と呼ばれるインターネットを通じた送金を行うなど、サービスの拡充やコンテンツを支援するためには、自ら進んで支出を行うという価値観も定着している。

Z世代
(画像=ニッセイ基礎研究所)

最後の(3)サブスクリプションは、定期購読という意味である。昨今では動画配信に限らず、様々な商品やサービスがサブスクリプションの対象になっている。経済学者であるセオドア・レビット氏は「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」という有名な格言を残しているが、Z世代の中には、わざわざ手段に必要なモノを購入するのではなく、サブスクリプションやレンタルを利用することで目的を達成するという価値観を持つ消費者も増えている。

インターネットの普及に伴い情報量が増えたことで、Z世代は以前の消費者に比べて興味を刺激される機会が多くなっている。「インスタ映え」という言葉が流行したように、消費した結果をSNSに投稿し、他のユーザーからの反応を得ることを目的とした消費文化が若者を中心に定着し、どんな些細な消費結果でもSNSに投稿されるようになり、SNSには他人の消費結果が溢れている。

そのような投稿を見て消費欲求が駆り立てられたとしても、投稿と共にタグづけられているハッシュタグを見れば同じような消費結果で溢れている。そのため、他人の投稿を消費の疑似体験と捉え、わざわざ自分で消費(購買)する必要があるか、モノを所有する必要があるか、と検討するということも、Z世代の消費行動の特徴と言えるだろう。

自身の欲求を達成する上で所有するべきか否か、無料で済ますことができるのならば無料の方法を選択するのか、そもそも自身が消費する必要があるのか、とモノやサービスの消費に対して慎重な姿勢がある点が、それ以前の世代に「若者は消費をしない」「若者の○○離れ」と、捉えられてしまっている要因のひとつであると筆者は考える。


*2:芸能人やアニメのキャラクターなど他人に勧めたいほど贔屓している人


廣瀨 涼(ひろせ りょう)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員

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