本記事は、清田幸弘氏の著書『相続専門の税理士、父の相続を担当する』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

毎年、同じ相手に、同じ金額を、同じタイミングで贈与してはいけない

何から始めればいいの?相続対策3つのキホン
(画像=eelnosiva/stock.adobe.com)

「連年贈与」とみなされない工夫が必要

贈与する際、「毎年、同じ相手に、同じ金額を、同じタイミングで贈与している」と、税務署側から「連年贈与」とみなされ「基礎控除額110万円」を超えていなくても、課税されます。連年贈与だと、贈与税の控除を受けられません。

連年贈与

毎年繰り返し贈与すること。

たとえば、「毎年100万円ずつ、20年にわたって贈与する」場合、20年間で2,000万円贈与したことと同じです。

こうした方法は「最初から2,000万円の贈与をする意図があった」と判断され、課税されます。

連年贈与とみなされないためには、

・毎年同じ日に振り込むのではなく、時期をずらす(贈与をしない年も間に挟むと、単発の贈与と主張しやすい)

・金額を少しずつ変える(年によっては、110万円を少し超える贈与を行って、贈与税を納めておく)

・子どもの進学や入学に合わせて贈与する

・贈与ごとに契約書をつくっておく

・通帳で記録を残す

などの工夫が必要です。

孫に生前贈与をすると、税負担がさらに軽くなる

私の父が「子ども(私と姉2人)」ではなく「孫」に生前贈与をしたのは、「孫のために財産を残してあげたい」という個人的な心情のほか、

「3年以内の持ち戻しがされない」
「相続税を1世代分スキップさせられる」

という税務のメリットがあったからです。

3年以内の持ち戻し

生前贈与をしてから3年以内に贈与者が亡くなった場合、贈与した財産の分も相続税の課税対象となること。

仮に、贈与をはじめて2年後に亡くなると、2年分の贈与財産は、相続財産として扱われ、相続税の対象になります。せっかく生前贈与をしても「3年以内に死亡」すると、相続で財産を譲ったのと税金の計算上は変わりません。

一方、孫への生前贈与なら、原則としては3年以内の贈与でも相続税の課税対象にはなりません。

また、孫へ生前贈与を行うことで、相続税を1世代分スキップさせられます。

「父親→子ども→孫」と順番に財産を相続していくと、すべて相続に税金が発生します。ですが、「父親→孫」の生前贈与であれば、「父親から子どもに財産を引き継ぐときの相続税」は発生しません。

「年間110万円の基礎控除」以外にも、贈与税の非課税枠がある

夫婦間で居住用不動産(自宅など)を贈与する場合は、「2,000万円の配偶者控除」と「110万円の基礎控除」、合わせて、2,110万円までは非課税です。

この特例を受けるには、

「結婚して20年以上であること」
「贈与するものが居住用不動産であること」
「その不動産に引き続き居住する見込みがあること」
「同一の配偶者からの贈与で過去にこの特例を受けていないこと」

が条件です。

たとえば夫の名義で、評価額6,000万円の居住用不動産(マイホーム)があった場合、3分の1(2,000万円分)を妻に贈与しておけば、控除額以下なので贈与税はかかりません。

贈与をしなければ、夫の死後、6,000万円に相続税がかかります。

けれど、贈与をしておけば、夫の財産が2,000万円分減るため、相続税を減らすことができます。

また、父母や祖父母から、

「住宅取得等資金の贈与」
「教育資金の一括贈与」
「結婚・子育て資金の一括贈与」

を受けた場合、一定の要件を満たすと贈与税の非課税枠が使えます。

贈与税の支払いを「後回し」にする方法がある

「相続時精算課税制度」で贈与税を「後回し」にする

生前贈与をするとき、「相続時精算課税制度」を利用すると、「贈与税をいったん先送り」にすることができます。

わかりやすく言うと、

「親が子どもに生前贈与したとき、2,500万円までは、ひとまず税金を払わなくていい。その代わり、親が亡くなって残りの財産を相続したときに、相続した財産(亡くなってから受け取った財産)と、贈与された財産(亡くなる前に受け取った財産)を加算して相続税を計算する」

という制度です。

つまり、贈与税を後回しにし、相続が発生したら、相続税として税金を「精算する」という制度です。

2,500万円までは贈与税は非課税です。相続時に加算されて相続税がかかります。

2,500万円を超えると、2,500万を超えた額に対し、「一律20%」の贈与税がかかります。そして、合算して精算をした時点で、すでに支払い済みの贈与税の額が差し引かれます。

この制度が使えるのは、「60歳以上の親または祖父母から20歳(成年年齢引き下げ後は18歳)以上の子や孫」にかぎります。ただし、住宅取得等資金贈与の場合は、この要件が変わることがあります。

この制度にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。「得か、損か」の判断が非常に難しいので、相続専門の税理士に相談したうえで利用を検討したほうがいいでしょう。

【相続時精算課税制度のメリット】

・2,500万円という大型の控除がある(2,500万円までは贈与税がかからない)。

暦年贈与の場合、控除は年間で110万円までしか適用されないため、2,500万円を非課税で贈与しようとすると、約23年かかる。

しかし、相続時精算課税制度を利用すれば1回で2,500万円を無税で贈与できる。

・贈与額の合計が2,500万円を超過した分も「一律20%」しか課税されない。

暦年贈与の場合、2,500万円以上の金額に対しては税率が45〜55%(累進課税)もかかってしまう。

・区画整理や都市開発事業の計画が決まっていて、「確実に値上がりすることがわかっている土地」を持っているなら、この制度を利用したほうが有利。

・生前に多くの贈与ができるため、相続時の争いを防止できる。

【相続時精算課税制度のデメリット】

・一度でも使うと、暦年贈与が使えなくなる。

・相続時に加算される贈与財産の額は、「贈与の時点」での評価額なので、相続時に節税になるとはかぎらない。

仮に、生前贈与で「評価額2,000万円」の土地を贈与した場合、この土地の評価額が相続時に「1,000万円」に下がっていたとしても、「2,000万円の評価額」として加算される。

贈与しなければ、相続時には「1,000万円」で評価されたのに、生前贈与をしたために、「1,000万円の価値しかないのに2,000万円の価値がある」とみなされる。

・金額の大きさに関係なく、税務署への申告義務がある。

相続専門の税理士、父の相続を担当する
清田幸弘(せいた・ゆきひろ)
ランドマーク税理士法人 代表税理士、立教大学大学院客員教授、1962年、神奈川県横浜市生まれ。明治大学卒業。横浜農協(旧横浜北農協)に9年間勤務、金融・経営相談業務を行う。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田会計事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)、『都市農家・地主の税金ガイド』(税務研究会出版局)など著書多数。

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