この記事は2022年7月29日(金)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『外需減速と内需回復』を一部編集し、転載したものです。


外需,内需
(画像=PIXTA)

目次

  1. 要旨
  2. 2022年6月の鉱工業生産指数
  3. 2022年6月の実質輸出
  4. 2022年7月の政府の月例経済報告

要旨

  • サプライチェーンの修復が進み、生産はリバウンドした。挽回生産で在庫を積み上げる動きもある。今後、FEDの金融引き締めによる米国経済の減速に対する警戒感を含め、外需の減速の影響が出てきて、在庫が過剰と判断されれば、生産調整に入るリスクがある。

  • 2022年7月の政府の月例経済報告では、景気の基調判断が、「緩やかに持ち直している」に、2022年6月の「持ち直しの動きがみられる」から上方修正された。「持ち直している」との判断は、新型コロナウィルスの感染拡大後、初めてとなる。コロナによる行動制限が解かれたことなどで、経済活動の再開が進み、雇用状況も改善しているとの判断が背景にある。

  • 政府は、「状況に応じた迅速かつ総合的な対応に切れ目なく取り組む」としている。外需の減速に対して、内需の回復で景気の上向きの動きを確かなものとするため、2022年9月からとみられる臨時国会で、景気回復促進策、コスト増加に対する家計・企業支援策、そしてグリーン・デジタル・先端科学技術などを中心とする成長投資を含む、大規模な経済対策を実施するとみられる。

2022年6月の鉱工業生産指数

2022年6月の鉱工業生産指数は前月比+8.9%と、コンセンサス(同+4.2%)を上回る結果となった。2022年5月には同-7.5%と、中国のロックダウンや、部品などのサプライチェーンの問題で、生産活動は大きく落ち込んでいた。

2022年5月に落ち込んだ、自動車工業(同+14.0%、2022年5月同-8.3%)、電気・情報通信機械工業(同+11.0%、2022年5月同-11.3%)、電子部品・デバイス工業(同+11.4%、2022年5月同-4.2%)、生産用機械工業(同+7.4%、2022年5月同-5.0%)などがリバウンドした。

2022年6月のリバウンドで、2022年5月の落ち込みをカバーしたことになる。FRBの金融引き締めによる米国経済の先行き不安などで、製造業が生産により慎重にはなっていないようだ。

2022年6月の在庫指数は同+2.1%と、3カ月振りのプラスとなった。自動車工業や電子部品・デバイス工業などが、在庫の積み上げがようだ。経済産業省は、「生産は一進一退」とし、「弱含み」から判断を若干上方修正した。

2022年6月の実質輸出

2022年6月の実質輸出は同+0.9%と、2022年5月の+2.7%に続き、2カ月連続の増加となった。しかし、2022年4月の同-6.0%の落ち込みをカバーしきれていない。2022年5月の実質輸入は同+7.4%と、20222年4月の同-1.6%から持ち直しが強い。

中国のロックダウンの影響が緩和するなどして、部品などの輸入が増加し、サプライチェーンの修復が進んだ。しかし、2022年6月の実質輸入は同-0.9%と増加は続かず、問題解消には時間がかかることを示している。

2022年7・8月の経済産業省予測指数は、同+3.8%・+6.0%と、生産の回復が見込まれている。サプライチェーンの修復が進む中で、挽回生産で在庫を積み上げる動きもある。

FEDの金融引き締めによる米国経済の減速に対する警戒感を含め、外需の減速の影響が出てきて、在庫が過剰と判断されれば、生産調整に入るリスクがある。2022年7月の経済産業省予測指数は誤差調整後では同-0.9%であり、若干の警戒感があるのかもしれない。

2022年7月の政府の月例経済報告

2022年7月の政府の月例経済報告では、景気の基調判断が、「緩やかに持ち直している」に、2022年6月の「持ち直しの動きがみられる」から上方修正された。

「持ち直し」の判断は、新型コロナウィルスの感染拡大後、初めてとなる。コロナによる行動制限が解かれたことなどで、経済活動の再開が進み、雇用状況も改善しているとの判断が背景にある。

一方、「世界的に金融引き締めが進むなかでの金融資本市場の変動や原材料価格の上昇、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要がある」としている。

生産の判断は、「持ち直しに動きに足踏みがみられる」と警戒感を残したままだ。政府は、「状況に応じた迅速かつ総合的な対応に切れ目なく取り組む」としている。

外需の減速に対して、内需の回復で景気の上向きの動きを確かなものとするため、2022年9月からとみられる臨時国会で、景気回復促進策、コスト増加に対する家計・企業支援策、そしてグリーン・デジタル・先端科学技術などを中心とする成長投資を含む、大規模な経済対策を実施するとみられる。

会田 卓司
岡三証券 チーフエコノミスト
田 未来
岡三証券 エコノミスト
松本 賢
岡三証券 エコノミスト

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