本記事は、加藤俊徳氏の著書『脳の名医が教える すごい自己肯定感』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

自己否定をスパッとやめる方法

頭のいい人の脳の使い方
(画像=barameefotolia/stock.adobe.com)

自己否定する人の8つの特徴は、おそらく、誰でもいくつか当てはまると思います。でも、焦ったり心配したりしなくて大丈夫です。

たとえ当てはまっても、自分自身がそれに気づくことによって、状況が大きく変わってきます。

一番の問題は、気がつかないうちに自己否定パターンにハマり込み、その状況を自分が認識できていないということです。

よく、体重計に毎日乗って、自分の体重が何㎏かを知ることで、自然とダイエットにつながるという話を聞きますよね。客観的に自分の姿や状態を知ることで、脳や肉体が自然と正常な状態に戻そうと働くのです。

「自己否定」に関しても、客観的にそれを知るだけで、自然とそれを回復しようとする機制が働くのです。

もう一つ、脳を働かせることで、自己否定のスパイラルから抜け出すという方法があります。

強い自己否定に陥っているときは、脳がフリーズしているときだというお話をしました。

そこで、脳に刺激を与えることで、フリーズした回路を動かし、負のスパイラルから脱却することができるのです。

自己認知力が高まること自体が、大きな刺激となります。

それを大前提として、それ以外の自己否定スパイラルから抜け出すポイントをいくつか解説しましょう。

自己否定をスパッとやめる方法 1.「右脳」の自己否定を「左脳」で抑える

いまの社会は、自己肯定感を育てることが、とても難しい時代だと思います。それは、社会全体が「自己否定人間」をたくさん作り出すようにできているからです。

それはなぜでしょうか?

一言で言えば、「競争社会」であることが大きいと思います。

学業にしても、仕事にしても、私たちは何らかの形で競争にさらされています。すると、必ず成績でトップを頂点にして階層ができてしまいます。

競争社会というのは、基本的にトップの人しか肯定感が得られない社会です。トップの人を頂点にしたピラミッドで、下に行くほど負けた人が多くなります。

現代社会は、負ける人を生み出すことによって成り立っていると言っても過言ではありません。

このような社会では、多くの人が自己肯定感どころか、自己否定感を背負わされてしまうのです。すると、全体としてプラス思考よりも、マイナス思考が強い社会となります。

マイナス思考が優勢の社会は、突出したプラス思考人間を排除する傾向があります。「出る杭は打たれる」というやつです。

実際、いまの日本の社会全体が、同調圧力が高くなっています。人と違った意見や行動を取ると、すぐにバッシングを受けるでしょう。とくに新型コロナによって、その傾向に拍車が掛かったように思います。

お互いがけん制しあい、自由に活動しにくい状況です。閉塞感はより高まっていると考えていいでしょう。

このような閉塞した社会の空気感というのは、確実に私たちの脳の働きに影響を与えます。

ちなみに、雰囲気や空気感を察知するのは、「右脳」を中心に行われます。右脳が優勢になると、どうしても社会全体の空気に流され、自己否定的な思考になりがちなのです。

そこで、「左脳」を働かせることでバランスを取ることが必要になります。右脳が非言語的な領域に対して、左脳は言語的な処理をする領域とされています。

自己認知も自己評価も、言語を通じて行います。

「私は手先が器用で、モノづくりが得意だ」
「プレゼン能力は人よりも高いものがある」
「周りの人たちとコミュニケーションを取っている分、協力を得やすい」

など、自分の強みを言葉にして再認識するのです。

それによって、右脳優先で自己否定に傾きがちなところを、左脳の言語の働きで自己肯定の方に引き寄せることができるのです。

逆に、左脳があまりにも優先していると、これも正しい判断を誤ることがあります。

ふだんの会話には、交わされた言葉上の意味だけではなく、非言語的な意味が含まれていることが往々にしてあります。

たとえば、上司が部下であるあなたに向かって、「そろそろ自分で仕事を生み出さないとダメだ!」と激を飛ばしたとしましょう。

言葉そのままの解釈だと、言われたことだけやっているあなたの仕事の仕方を否定しています。

しかし、そのときの前後の状況や上司との関係性、上司の表情やしゃべり方によっては、違う意味が盛られている可能性があります。

「もう、そのくらいの力があるのだから、頑張れ」

そんな、激励のニュアンスが強い場合もあり得るのです。

実際、日常のやり取りでは、このような非言語メッセージが反映されていることがしばしばあります。

ところが左脳では、非言語メッセージをキャッチすることが難しいです。

左脳優先で解釈すると、言葉通りで自分が否定されたかのように感じてしまうのです。

その結果、上司があなたに期待をしているのにもかかわらず、「自分は上司の評価が低い」とか「あの上司は全然自分を認めてくれない」と、真意を汲み取ることができなくなってしまうのです。

大事なことは、左右の脳をバランスよく使うことです。

とくに、いまの社会的な状況は、放っておくと雰囲気や空気感のなかで自己否定の方に流されがちです。とくに左脳を働かせることに意識を向けることが必要でしょう。

自己否定をスパッとやめる方法 2.「おうち時間」を減らす

新型コロナの蔓延で、このところめっきり外に出る機会が減ったという人は多いのではないでしょうか?

「おうち時間」が増え、SNSやインターネットを活用する時間が増えていることは、すでにお話しした通りです。

情報ツールが発達し、さまざまなコンテンツが普及しています。

TwitterやLINE、YouTubeやTikTokを見たり、Zoomなどでリモート飲み会など、「おうち時間」をむしろ楽しんでいるという人もいるでしょう。

ただし、脳科学的に見ると、そこに一つの落とし穴があることを指摘しておかねばなりません。

それは、情報が文字や写真、動画といった2次元のものばかりになってしまうことです。

あらゆる情報がいまやスマホやパソコンの画面を通じて入ってきます。しかも自宅の椅子やソファーに座って、端末を操作するだけです。

じつはこのような状況は、脳科学的には、決して健全だとは言えません。

というのも、2次元情報というのは文字や画像によって得たものです。このような体験を「知識経験」と呼んでいます。

一方、体を動かし、実際に何かを体感して得た経験を「体感経験」と呼びます。皮膚感覚など、五感をフル回転させて得た経験です。

SNSやインターネットの発達で、端末情報ばかりになってしまった私たちは、「知識経験」ばかりが肥大して、「体感経験」が激減しているのです。

このことを「脳番地」で解説すると、「視覚系」「聴覚系」「理解系」などがフル回転しているのですが、「運動系」がまったく働いていないということになります。

いずれにしても、脳の働き方のバランスが崩れていて、それによって脳の働きが悪くなっている状態と言っていいでしょう。脳の働きが悪くなれば、やはり自己肯定力も次第に下がってきてしまいます。

実際、自己肯定感の低い人を診断すると、ほとんどの人が体感経験が乏しいことに気づきます。

中にはオタク系の人がいて、それこそ知識経験は豊富なのですが、実体験が乏しいので、なかなか本当の自信を持てないようです。

五感をフル活動させ、肉体を通じて得た経験は、生命体として一つの自信につながるのだと思います。

膨大な2次元情報に取り巻かれている私たちは、意識的に知識経験を減らし、体感経験を増やす必要があります。

夜寝る前に枕元にスマホを置いて、LINEでやり取りしたり、YouTubeやTikTokを見ていませんか?

電磁波の悪影響を指摘する人もいますが、つねに文字情報や動画によって脳の視覚系や聴覚系、伝達系が刺激され、一部の脳だけが興奮状態が続いているのは、決していい状態ではありません。

「スマホ断ち」という言葉を耳にしませんか?

寝る前は手元に端末を置かないなど、1日のうちで数時間はスマホやタブレットから距離を置くことをお勧めします。

同時に、「体験知識」を増やすことを考えましょう。散歩や公園などの広い野外を散策したり、密にならない状況で人に会うなど、外に出て体感経験を意識的に増やすことが必要です。

新型コロナが落ち着いたなら、たとえば地域の様々なサークル活動や趣味の集まりなどに参加し、新しい人間関係を築いてみるのです。

新しい環境と人間関係は脳には大変刺激的で、そこでのコミュニケーションやさまざまな実体験が貴重な体感経験になるはずです。

自己否定をスパッとやめる方法 3.「運動」で肯定感を高める

方法の2とも関係していますが、自己肯定感の低い人は体を動かすことが苦手な人が多いようです。

逆にスポーツなどでつねに体を動かしている人は、自己肯定感が明らかに高い傾向があります。

東京成徳大学の深谷和子教授らの調査(「運動の苦手な子」2000年度VOL.20―1/ベネッセ教育総合研究所)によれば、運動が得意な子どもは自分自身をポジティブに評価する傾向があることがわかりました。

運動が得意だとする子どもと、苦手だとする子どもにそれぞれ15項目の質問をしたそうです。すると、「自分は頑張ることができる」という項目で、運動が得意な子どもの61.3%が「とてもそうだ」と答えたのに対し、苦手な子どもは17.0%だったそうです。

逆に「気が弱い」とする項目では、得意な子どもの5.4%、苦手な子どもの22.1%が「とてもそうだ」と答えたという結果を報告しています。

ちなみに、スポーツ庁による令和3年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果では、「体力合計点については、令和元年度に比べ、小中男女ともに低下した」と報告されています。

体力低下の原因として、(1)運動時間の減少、(2)学習以外のスクリーンタイムの増加、(3)肥満である児童生徒の増加を挙げ、さらに新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う学校の活動が制限されたことが指摘されています。

大人の場合でも、「筋トレ」や「ランニング」をしている人ほど自己肯定感が高いという傾向があります。

とくに「筋トレ」は自分の肉体が明らかに変わっていきます。貧弱な身体や太ったお腹が、分厚い胸板や引き締まった腹筋、シャープで力強い肉体に変わっていきます。

肉体が視覚的にかっこよく、美しくなることは、それだけでも大変な自信になります。しかもそれは、日々の自分の努力のたまものです。その「達成感」が、さらに自己肯定感を高めることにつながるのです。

脳科学的にも、「運動系」を刺激し活性化することが、自己肯定感を高めるポイントだと考えられます。

人間もまた動物であることには変わりません。

動物として運動能力が高く、それに関する脳が発達している方が、生存適性が高いことは言うまでもありません。

「しっかりと運動している」「思うように体を動かしている」という実感は、生存そのものの本能に直結しています。

それゆえに、自信や自己肯定感にもつながっていくのです。

自己否定をスパッとやめる方法 4.「目標のない生活」から「目標のある生活」へ

あなたは何か目標を持っていますか?

「今年中にダイエットして、痩せたい」
「資格を取りたい」
「将来、独立したい」

何でも構いません。もしも確固とした目標があり、それに向かって日々何かしら努力をしている人は、自己肯定感がすでにかなり高い人かもしれません。

あるいは、いまは高くなくとも、いずれ自己肯定感を得ることができる可能性が高いと言えます。

目標を持ち、それを達成するためには計画をたてる必要があります。そしてそれを努力しながら実行し、目標に向かって邁進する。

このことができるだけで、自己肯定感がグッと高まるはずです。

私は子どもの頃、確かにコンプレックスは強かったのですが、一方で目標を立てて計画的に物事を進めることは得意でした。

小学校のとき、音読困難の症状などもあり、成績が振るわなかったことは前書きでお話しした通りです。

そこで私は、スポーツで故郷の新潟県で1番になりたいと思いました。中学校ではバスケット部でありながら、柔道を我流で習得し、黒帯を取りました。

中学3年のときには、陸上競技の大会に備えて練習を重ね、砲丸投げで1位を取ることができました。

その練習のさなかに、スポーツで体を動かす指令を出しているのは脳だ。ならば脳を鍛えなければならないとひらめきました。それは電気が走ったような衝撃でした。

そこから私は脳への好奇心が抑えられず、脳研究をするために将来医学部に進学して医者になりたいと強く考えるようになったのです。

高校生になってからは、それまでスポーツに集中していたエネルギーをすべて勉強に向けることにしました。

まず、決めたことが1日の勉強時間です。

家で過ごす1日のうちの5時間をコアタイムとして、どんなことがあっても合計3時間は勉強に割り当てると決めました。そして、実際にそれを実行しました。

医者になるという目標を立て、そのための計画を立てて実行し、その結果として目標を達成することができたのです。

いまから思うと、その体験が後に私が自己肯定感を持つきっかけになったと思います。

医者になってからも、まだしばらくは自己否定感に悩んでいたのですが、自律性自己肯定感を積み上げていく基礎のようなものが、このときにでき上がったのです。

自己否定をスパッとやめる方法 5.将来の選択肢を増やす

私が医師として働き出したあるとき、先輩が「何かやるとき、迷ったら自分の選択肢を減らさない方がいいよ」とアドバイスをしてくれたことがあります。

医師として進むべき道に迷っていたときだったので、先輩の言葉を重く受け止めました。

実際、英語論文を書いて認められたのも、将来の選択肢を増やすというその言葉を実践したおかげでした。

その後、米国の大学で最先端の脳科学を学び、自分の脳番地の理論ができたのも、選択肢を広く取り、さらにその後の自分の選択肢が広くなる方をいつも選んで進んできた結果でした。

いまも、つねに選択肢を減らさない方向で選択をしているつもりです。

そのおかげで私にはやりたいことがたくさんあり、いろんな可能性があると思えます。

それがそのまま、私の自己肯定の基礎になっていると言っていいでしょう。

この言葉にも、それを送ってくれた先輩にも大いに感謝しています。

ぜひ読者の皆さんも、人生の進路を決める際など、「迷ったら選択肢を増やす方を選ぶ」という言葉を思い出して欲しいと思います。

考えてみれば、選択肢を増やすということは、脳の働き方の理に適っているのです。

すでに脳の仕組みについていくつかお話してきました。

本来、健康な脳は入ってくる情報を、脳内のネットワークを駆使して、さまざまな脳番地に届けます。それによって、脳全体が課題や問題に向き合う仕組みになっています。

ところが、自己否定感が強い人は、問題や課題に直面したときにパニックになって視野狭窄に陥り、さらに脳の働きが限定されてしまう、というスパイラルに落ちてしまいがちです。

自己否定スパイラルから脱出するには、視野狭窄に陥らないように、意識的に視野を広げてさまざまな情報を、脳の8つの脳番地を働かせて取り込むことが有効になります。

判断や選択を迫られたときに、選択肢をたくさん持っていればパニックにならずに済むでしょう。むやみに自己否定しないためにも、選択肢が増える方を選ぶことが重要なのです。

迷ったら、選択肢が増える方を選ぶ──。

ぜひ実践してみてください。

自己否定をスパッとやめる方法 6.肯定感が上がる人とつき合う

あなたは友だちが多い方でしょうか?

それとも少ない方でしょうか?

多いと答えた人の方が、一見幸せそうに見えます。ですが、自己肯定感という観点で考えたとき、必ずしもそうとは言い切れません。

大切なのは「数」ではなく、「質」なのです。

じつは昨今の新型コロナによって、いろんなものを見直すきっかけになったという人がいます。

新型コロナで世の中が厳しくなると、平時よりはずっと本来の人間性が明らかになります。

たとえば、それまで寛容に自分の話を聞いてくれていた相手が、突然怒りっぽくなったり、他人に厳しくなってしまったりする人もいます。

ふだんは紳士的にふるまっていた経営者が、新型コロナによって経営が悪化して変わってしまったケースも耳にします。

自己保身に走り、社員や関係者にきつく当たる。自分の報酬は確保しながら社員の給料は下げたり、リストラする。

一方で、危機的な時代だからこそ周囲の人たち大切にし、スクラムを組んで頑張っていこうとする人たちもいます。

今回の危機は、ふだんの生活では表に出てきにくかった、その人の性格や考え方、人となりを照らし出すことになりました。

このことをよいきっかけに、つき合う人たちを絞り込んだという人もいるのではないでしょうか。

SNSでのつながりも、やり取りするのに疲れてしまう人が急速に増えているそうです。突然アカウントを消して、連絡を絶ってしまう人もいるとか。

いきなりすべての関係を断つのは行き過ぎと思いますが、無理をしてつき合うような関係なら、思い切って見直すことも必要でしょう。

相手に合わせるために自分を抑え、それによって時間も費やし、気持ちもすり減らしてしまうなら、それはもはや友だちとは言えません。

これからの人間関係は数ではなく、質を重視するといいでしょう。

その際、自分の自己肯定感を上げてくれる相手を選ぶことをお勧めします。

たとえば前向きで、明るく人生を生きている人。あなたを受け入れてくれる人。あなた自身が心を開いて向き合える人。会っていると心から楽しいと感じられる人。一緒に何かを学ぶことができ、成長できると考えられる人……。

これらのポイントから、友だちを選ぶことが大事だと思います。

一番避けるべきは自己肯定感が低く、いつも恨み言ばかりで、他人の悪口ばかり言う人です。

マイナス思考の波動があなたにも確実に伝わり、あなた自身の自己肯定感をどんどん下げてしまうことになります。

自己否定をスパッとやめる方法 7.「自分基準」をつくる

他者の評価や基準に合わせているだけでは、本当の自信や自己肯定感=自律性自己肯定感は生まれません。

企業の経営者だとか、会社の役員のような要職に就いている人でも、本当の意味での自己肯定感が低い人がいます。

地位や肩書といった社会的な評価に依存して、自分自身の価値基準で自分を認めているわけではないのです。

こういう人にありがちなのが、誰か他の人を否定することによって、自分の価値を上げようとすることです。

比較する相手を限定し、自分の土俵の中で相手を否定してマウントを取ろうとする……。こういうことは、ビジネス社会の中だけではなく、一見仲良しの主婦たちの関係の中でもよくあるのではないでしょうか?

いずれにしても、評価の基準を他者の評価、他者との比較に置いています。相手がいなければ自分を評価できない。

他人に依存した自己肯定感ですから、他者の評価や存在がなくなると、たちまち消えてしまう儚い幻想のようなものなのです。

自分の中にしっかりとした価値観と基準を築き、それに合わせて自分で自分を認め受け入れることが必要です。

●自分が生きる上で、何を一番大事な価値として考えるか?
●自分の人生のテーマは何か?
●自分がこれだけは絶対にしない、したくないことはどんなことか?
●どんなことが善悪や美醜であると感じるか?
●どんなことをしているときが一番楽しく、幸福感を感じるか?

以上のような価値基準を自分の中で明確に持つことが、大前提になります。

ちなみに、子どもの頃の親からの教育が、これらの自己基準を作る上で大きな影響を与えることがわかっています。

私自身のことを言うなら、幼少の頃、母親は私の音読困難症状や成績不振に対して、否定的なことは一切言いませんでした。

ただし、「自分だけの得や利益を考えてはいけない」ということと、「相手の欠点ではなく、よいところを見るようにしなさい」ということだけは、口酸っぱく言われて育ちました。

「自分だけのことを考えてはいけない」という教えは、後年人間関係や仕事をする上で、私自身の大きな行動基準となりました。それを守ることが、自己肯定感につながったと思います。

また、「欠点ではなく、よいところが必ずある」という教えは、人に対して寛容になれただけでなく、自分が自分を評価するときにとても大きな影響を与えたと思います。

人にできて自分ができないことが、じつは自分だけの特異な能力であり個性である。他人に対してよいところを見るという教えは、じつは自分自身をそのように見ることができるための教えでもあったのです。

いずれにしても、自分の中の「価値基準」や「行動規範」というものが、自律性自己肯定感にはもっとも大事なことであり、大前提なのです。

脳の名医が教える すごい自己肯定感
加藤俊徳(かとう・としのり)
新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳番地トレーニング、脳活性おんどく法の提唱者。1991年近赤外光を用いて脳機能を計測する「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から米ミネソタ大学放射線科MR研究センターに研究員として従事。帰国後、「脳の学校」、「加藤プラチナクリニック」を開設し、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法(脳相診断)を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。脳の成長段階、強み弱みの脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳番地トレーニング処方を行う。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務める。著書に、『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』(ダイヤモンド社)、『不安を力に変える』(扶桑社)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)など多数。
加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com/
「脳の学校」公式サイト https://www.nonogakko.com/

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