この記事は2022年10月7日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「コロナ・ショック並みに国内株式を逆張り~2022年9月の投信動向~」を一部編集し、転載したものです。
国内株式に今年最大の資金流入
2022年9月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、主として外国株式や国内株式を投資対象とするもの中心にすべての資産クラスのファンドに資金流入があった【図表1】。ファンド全体では8,900億円の資金流入となり、8月の5,300億円から約3,700億円増加し、今のところ2022年で最大となっている1月の9,100億円や6月の9,000億円に迫る規模であった。
9月のファンド全体への資金流入の増加は、国内株式ファンドに2,300億円の資金流入があり、8月の500億円の資金流出から転じたことが大きかった。国内株式ファンドへの流入額は2022年だけでなく、2018年10月以来で最大規模であった。特に、一般販売されているインデックス型の国内株式ファンド(黄棒)に1,500億円の資金流入があり、2022年1月の1,300億円を上回り、コロナ・ショックに見舞われた2020年3月(赤囲い)の1,700億円に迫る規模であった【図表2】。
国内株式は9月上旬こそ上昇し日経平均株価が一時2万8,600円台をつけていたが、9月中旬から下旬にかけて急落し、2万6,000円を下回って月末を迎えた。日経平均株価の月間の下落幅は2,154円とコロナ・ショックによる2020年3月の2,225円に迫った。9月中旬以降、株価が下落するとともに逆張り投資の買いが入り続けたこともあり、インデックス型には断続的に資金流入があった。
このように9月に資金流入が膨らんだのは株価の下落幅が大きかったことが要因であるが、それに加えて8月中旬に日経平均株価が一時2万9,000円を超え年初来高値に迫ったことも背景にあるかもしれない。7月から8月中旬は国内株式が上昇していたため、今年1月やそれ以前などに投資していたものの株価が下落していたため塩漬けにしていた投資家にとって清算する絶好の機会となったはずである。実際に7月と8月の2カ月でインデックス型から1,100億円の資金流出があった。その分、9月は新たに国内株式に投資できる資金を持つ投資家が多く、資金流入が特に膨らんだ可能性がある。
9月は国内株式のレバレッジ型ファンド(青棒)にも400億円の資金流入があり、2022年1月や2020年3月、さらには2018年10月をわずかに上回り、過去最大であった。レバレッジ型の売れ筋は9月に176億円の資金流入があった「楽天日本株4.3倍ブル」(【図表3】青太字)に代表されるような超高レバレッジのものである。なお、国内株式のレバレッジ型ファンドの400億円の資金流入は、【図表1】では「国内株式」ではなく、あくまでもブル・ベア型として「その他」で集計している。
外国株式や内外REITでも逆張り?
9月は外国株式ファンドにも3,800億円の資金流入があり、8月の2,500億円から1,300億円も増加した。SMA専用のもの(【図表1】紺棒)には300億円と8月とほぼ同規模であったが、それ以外のインデックス型に2,900億円、アクティブ型に600億円とタイプによらず8月の2,200億円、10億円から増加した。個別に9月に売れた外国株式ファンド(【図表3】赤太字)をみても、インデックス型、アクティブ型に関係なく概ね18月から資金流入が増加した。
2022年に入ってから外国株式ファンド、特に米国株式などのインデックス型のものは、9月のように外国株式が下落した月ほど資金流入が膨らむ傾向がみられる。国内株式ほどではないが、外国株式もインデックス型を中心にタイミング投資をする投資家が多いものと思われる。
その他にも9月は国内REITファンドに500億円、外国REITファンドに300億円の資金流入があり、8月から100億円、200億円増加した。また、バランス型ファンドに1,200億円の資金流入があり、8月の900億円から300億円増加し、引き続き販売が堅調であった。株価やREIT価格が大きく下落する中、積極的に投資をする投資家がいる一方で、先行きに対する不透明感が高いことや価額変動が大きいことを嫌気している投資家も少なからずいるはずである。バランス型ファンドは、そのような投資家の資金の受け皿になっていると思われる。
なお、外国債券ファンドと国内債券ファンドについては、資金流入が8月から減少した。特に外国債券ファンドについては300億円と8月の1,300億円から約1,100億円も減少した。ただし、9月に減少したというよりも、どちらかというと8月が新設ファンドやSMA専用ファンドによって外国債券ファンドと国内債券ファンドへの資金流入が膨らんでいた面が大きい。実際に外国債券ファンド、国内債券ファンドともに新設ファンドやSMA専用ファンドを除外すると、資金の動きは8月も9月も±100億円以内であり、資金の流出入はほぼなかったといえるだろう。
*1:「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信D毎月(ヘッジなし)予想分配金提示」は9月に売れた外国株式ファンドの中で唯一、8月から資金流入がやや減少した。ただ、これは分配金が9月に引き下げられ、それに伴い分配金再投資に伴う資金流入が減少した影響によるところが大きく、このファンドの9月の資金流入も分配金再投資を除外すると8月からやや増加していたと推測される。
一部の売りポジションを活用したファンドが好調
9月に高パフォーマンスであったファンドをみると、ロシア・ルーブルが2.31円から2.52円と1カ月間に対円で9%も上昇したこともあり、一部のロシア・ルーブルの通貨選択型ファンド(青太字)が好調であった【図表4】。
また、一部の売りポジションも活用するファンド(赤太字)も、相対的に高パフォーマンスをあげていた。その他、9月は1ドル138円台後半から145円目前まで円安ドル高が進んだため、単純なドル投資のファンド「ドルマネーファンド」(緑太字)が4.5%もの収益を上げていた。
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前山裕亮(まえやま ゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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