日本の上場企業は、原則として四半期(3ヶ月)ごとに決算発表を行います。決算発表は言うなればその企業の「成績表」であり、その内容は株価にも影響を与えますが、業績がよかったからといって株価が必ず上がるとは限りません。なぜ、こうした現象が起こるのでしょうか。

決算発表の基礎知識

業績がよくても株価下落、なぜ?決算発表と株価の複雑な関係性
(画像=PIXTA)

東京証券取引所など、日本では株式市場に上場している企業であれば、原則として四半期ごとに決算発表を行います。決算発表では、売上高・営業利益・経常利益・純利益などのほか、今後の業績見通しなども発表されます。

例えば、会計年度を4月から翌年3月としている企業の場合は、4~6月を第1四半期、7~9月を第2四半期、10~12月を第3四半期、翌年1~3月を第4四半期とし、各四半期が終わってから基本的に45日以内に決算発表を行います。

最も注目されるのは、その会計年度の最後の決算発表です。第4四半期の決算発表は、その会計年度の通期(第1~4四半期)の決算発表の場でもあるからです。

ちなみに、第1~2四半期を合わせて「上半期(上期)決算」、第3~4四半期を合わせて「下半期(下期)決算」と呼びます。

投資家が決算発表でチェックしているポイント

続いて、投資家が決算発表でチェックしている、主な3つのポイントについて解説していきます。

●ポイント1:前月比や前期比の伸び

ひとつめのポイントは、売上高・営業利益・経常利益・純利益といった成績が、前月比や前年同期比でどれだけ伸びているか、です。

単に前月比や前年同期比でプラスだったかどうかだけではなく、伸び率が鈍化しているのか、それとも加速しているのかも重要なポイントです。伸び率が鈍化すれば、その企業の今後の成長性に陰りがあると受け止められ、株価の下落につながることもあります。

●ポイント2:業績見通しの修正

第1~3四半期においては「今期の通期業績見通し」、第4四半期(通期決算)においては「来期の通期業績見通し」が明らかにされることが一般的です。

この業績見通しは「未定」とされるケースもありますが、通常は「上方修正されたか」「下方修正されたか」、それとも「修正はなかったか」などがチェックされます。上方修正は投資家に好感されるケースが多く、株価の上昇につながりやすくなっています。

●ポイント3:「コンセンサス」を上回ったかも重視される

決算発表の内容を投資家は厳しくチェックしますが、決算発表で業績がよくても株価が下がることがあります。逆に、業績が悪くても株価が上昇することがあります。

このような現象が起こる理由は、市場の「マーケットコンセンサス(市場コンセンサス)」と比較されるからです。コンセンサスは「総意」「民意」を表し、マーケットコンセンサスは「市場予想平均」といった意味になります。実際には、アナリストなどの予想の平均値のことを指して用いられる場合が多いです。

投資家にとっては、コンセンサスより業績がよかったのか、それとも悪かったのか、ということも意思決定の重要な判断軸のひとつとなります。

わかりやすく表現すると、コンセンサスを上回る業績なら「期待以上」、コンセンサスを下回る業績なら「期待外れ」ということになります。例えば、売上高が前年同期比で50%増でもコンセンサスが70%増だった場合、「予想していたよりも成長率が低い」と受け止め、株を売ってしまう投資家もいるでしょう。その株を買いたい投資家(需要)より、売りたい投資家(供給)が優勢になってくると、株価の下落につながってしまう可能性があります。

「噂で買って事実で売る」という格言も知っておこう

投資家が見る決算発表の3つのポイントと株価の関係性について解説してきました。しかし、株式市場にはプロや初心者も含め様々な投資家が存在するため、株価の値動きの背景にある“投資家の心理”を説明するのは難しいものです。

こうした投資家の心理を知るには、投資の格言が参考になる場合があります。例えば、投資家に広く知られる格言のひとつに「噂で買って事実で売れ」(Buy the rumor, sell the fact)という言葉があります。

これは「よい噂が出た時点で株はすでに買われている(株価に反映されている=織り込み済みである)。そして、噂が決算という事実で裏付けられた時点ですでに株は売られている」といった意味で、決算発表などの事実よりも先に、“よい噂”や“悪い噂”が株価に反映されているという教訓を表しています。

もちろん格言がすべてではありませんが、「決算発表の内容はよかったのに株価が下がった」という場合、格言のように、すでに“噂”が株価に織り込まれていた可能性も考えられるでしょう。

値動きに一喜一憂するだけではなく、冷静な分析を

実際に株式投資を行う際には「なぜ上がったのか」「なぜ下がったのか」、その理由となる投資家の心理を冷静に分析することが重要です。

特に決算発表前後には、株価が大きく動く可能性があります。すでに株式投資をされている方はもちろん、これから株式投資をはじめる方も、決算内容の確認やコンセンサスとの比較を通じて“自分なりの答え”を考えてみましょう。そうした経験の積み重ねが、投資家としての分析力の向上につながっていくと考えられます。

執筆者:株式会社ZUU

(提供=auじぶん銀行)

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