ブロックチェーン技術を基盤とする次世代分散型インターネット「Web3.0(ウェブスリー)」の概念が広がる中、水面下では「Web 5.0(ウェブファイブ)」の開発が進行しています。Web 5.0がスローガンに掲げる「超分散型ウェブ」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
インターネットの進化「Web1.0~4.0」
まずはWeb5.0への理解を深めるために、Web1 .0~Web4.0との違いやそれぞれの特徴を見てみましょう。
Web1.0(1990年~2000年前半)
初代インターネットWeb1 .0は、html(HyperText Markup Language)を用いた閲覧専用のテキストサイトが主流でした。「情報発信者主導型」と呼ばれることもあります。
Web2.0(2000年後半~2020年前後)
Web2 .0への移行を機にSNSやEコマースが急速に普及し、ユーザー同士(情報発信者・閲覧者)のコミュニケーションが可能になりました。その一方で、インターネット市場におけるGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の存在感が飛躍的に高まりました。これらの大手企業による市場独占やユーザーの個人情報及びプライバシー侵害などは、社会問題視されています。
Web3.0(2021年~)
このような問題のソリューションとして、世界中でさまざまなプロジェクトが進められています。それがWeb3 .0です。
ブロックチェーン技術を基盤とするWeb3.0は、GAFAM(※)のようなサービスの管理者を必要とせず、ユーザーが個人情報やデータを自分で管理できる、非中央集権的エコシステムの構築を目指しています。
(※)Google(現Alphabet)、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoftの総称。
Web4.0(開発初期段階)
現時点では開発初期段階にあるものの、Web4.0の基盤となるいくつかの重要なコンセプトは、すでに具体化され始めています。
キーワードは「モビリティの向上」や「パーソナライゼーション」などです。ユーザーは世界中どこからでも、VR/AR(仮想現実・拡張現実)デバイスを接続してリアルタイムで仮想世界を楽しむことができ、需要や嗜好に合わせて最適化されたサービスを利用できるようになると期待されています。
完全なID・データの自己主権化を目指す「Web5.0」
Web3.0以降は「ブロックチェーン技術を活用して、インターネットの分散化を目指す」「データの所有権をユーザーに返還する」という動きが主流になることが予想されます。
Web5.0は「ユーザー主導のインターネット」という概念を維持する一方で、より独立した分散型アイデンティティ(Identity、ID)の提供を目指しています。
現段階ではWeb5.0の明確な定義は存在しないものの、Web5.0の提唱者であるTwitterの創設者ジャック・ドーシー氏は、「Web2 .0(データストレージ)+Web3.0(分散型アイデンティティ)=Web5 .0」という構想を打ち出しています。
具体的には、分散型アイデンティティとデータストレージをユーザー一人ひとりのアプリケーションに提供することにより、ユーザーがIDを含むデータや情報を作成・承認・所有・管理できるエコシステムを構築するというものです。Web5.0の分散型IDアプリを介して作成された全ての情報やデータは、デジタルウォレットに保管されます。
ドーシー氏は実現に向け、自身がCEOを務めるモバイル決済企業ブロック(旧スクエア)の仮想通貨事業TBDを介し、Web5.0の開発に取り組んでいます。
「機械が人間の感情を読みとる」時代に?
もう一つ、Web5.0の概念で注目されているのは、コンピューターと人間の相互関係です。
具体的には「ニューロテクノロジー(機械と人間の神経系との直接的な接続を可能にする技術)」や「アフェクティブ・コンピューティング(affective computing /人工知能で人間の感情や感性を扱うコンピューター技術)」などを活用し、ユーザーの行動や感情、その他の人間的側面を観察し、ユーザーの要求を予測するという構想です。
要するに、キーワードを入力したりマイクに話しかけたりしなくても、ユーザーが何を必要としているかをコンピューターが正確に識別し、適切に対応してくれるというわけです。
「Web5.0」で可能になること
Web5.0が実現した場合、インターネット環境を取り巻く我々の生活は以下のように変化すると予想されます。
複数のパスワードが不要になる
前述の通り、Web5.0に記録された情報やデータは、ユーザー個人のデータストレージに保管されます。各種サービスを利用する際には外部からのアクセスを許可するだけで済むため、これまでのようにサービスごとに異なるパスワードやプロフィールを作成する必要がなくなります。
個人情報の漏洩リスクが低くなる
中央管理者を介入させず、ユーザーが自身の情報やデータを所有・管理するため、不正流出や改ざんのリスクが低くなります。その一方で、ハッキングによる暗号資産流出の被害が増加していることから、セキュリティ強化が重要な課題となりそうです。
よりリアルな遠隔コミュニケーションが可能になる
例えばコロナ禍で普及が進んだオンライン診察は、「遠隔でも医療を提供できる」「待ち時間や通院時間が不要になる」などのメリットがある反面、対面診察と比べると「患者の精神的な不安や苦痛を読み取りにくい」といったデメリットが指摘されています。オンライン授業も同様に、「教師・講師が生徒の様子を把握しにくい」「生徒の集中力や緊張感が途切れてしまう」といった課題があります。
感情コンピューティング技術を活用すれば、患者や生徒の表情や話し方、身振りなどからオンラインでは認識しづらい心理状態を分析し、必要に応じて適切な対応を取りやすくなります。
エンターテインメントなどの分野においては、ユーザーエクスペリエンスに関するよりリアルな情報収集に貢献することでしょう。
繰り返しになりますが、Web5.0 の開発は始まったばかりです。実現への道のりは長いと予想されるものの、「人間と機械が相互作用する、インタラクティブな次世代インターネット」の到来を予感させます。Wealth Roadでは、今後もインターネット市場の最新動向をレポートします。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。
(提供:Wealth Road)