本記事は、藤由達藏の著書『「すぐやる人」になる一番かんたんな方法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
『7つの習慣』の時間管理のマトリックス
ビジネスが、「busy(忙しい)」という語根から成り立っているように、私たちは仕事は忙しいものと承知しています。そのため緊急の課題にばかり気を取られ、大事なことをないがしろにしてしまいがちです。
このことを、仕事の緊急度と重要度についてわかりやすく整理しているのが『完訳 7つの習慣 30周年記念版』(スティーヴン・R・コヴィー著 キングベアー出版 以下『7つの習慣』)で紹介されている「時間管理のマトリックス」です。
あらゆる仕事を緊急度(緊急/非緊急)と重要度(重要/非重要)の2つの軸で、4つの領域に分類して考えることが提案されています。
この時間管理のマトリックスは、私たちにいろいろなことを考えさせてくれる、味わい深いフレームワークです。『7つの習慣』によれば、この4つの領域の活動の特徴は次のように整理できます。
第Ⅰ領域:【緊急・重要】危機への対応・差し迫った問題・期限のある仕事
第Ⅱ領域:【非緊急・重要】予防・「成果をあげるための能力」を高める活動・人間関係づくり・新しい機会を見つけること・準備や計画・心身をリラックスさせること
第Ⅲ領域:【緊急・非重要】飛び込みの用事・多くの電話・多くのメールや報告書・多くの会議・無意味な接待や付き合い・期限のある催し物
第Ⅳ領域:【非緊急・非重要】取るに足らない仕事・雑用・多くのメール・多くの電話・暇つぶし・快楽だけを追求する遊び
言われてみれば確かにそうだと納得のいく分類ですが、普段私たちは目の前の仕事を、必ずしもこのようなマトリックスにあてはめて考えてはいません。だから、あれもこれもやらなければならないと考えてしまったり、仕事の本質からしたらどうでもいいことにこだわって長々と時間を費やしてしまったりするのです。
『7つの習慣』は、多くの人が第Ⅰ領域と第Ⅲ領域の活動に心を奪われて、その場その場を乗り切ることに大半の時間を費やして、緊急ではないが重要な第Ⅱ領域の活動をないがしろにしていることに警告を発しています。
周囲の変化や要求に振り回されて、受動的な反応を繰り返すだけでは、他人に支配されているようなものです。そんな生き方を変えて主体性を取り戻したいと思うなら、第Ⅱ領域の活動にこそ注力すべきなのです。
あなたにとって大事なことを最優先するために、取りこぼすことなく、必ず取り組めるようにスケジューリングしなさいということが『7つの習慣』には書かれています。これを学んだとき、まさにその通りだし、そうありたいと心から納得したのを覚えています。
あなたの人生において大事なことを大事にすることがもっとも大事なことなのです。
- ココがポイント!
- 大事なことを大事にするために緊急度と重要度で仕事を分類してみよう!
「すぐやる」べきは、第Ⅱ領域?
これまで「すぐやる人」になるための本では、脳科学や行動科学の理論に裏付けられたとされる方法が紹介され、とにかく行動できるようになるということが目ざされてきました。
『7つの習慣』の「時間管理のマトリックス」に当てはめて考えるならば、なんでもかんでも「すぐやればいい」というものではないことがわかります。
緊急性はないが重要である「第Ⅱ領域」の課題は、『7つの習慣』が最重要視しているように「すぐやる」方がいい気もします。しかし、冷静に考えれば、毎日さまざまなことをしなければならないのですから、いつもいつも「すぐやる」ことができるとは限りません。そこで、大事なことに取り組む時間を予めスケジューリングしておくことが大切なのです。今すぐできなくても、予め決めた日時にはその大事なことをするのだとわかっていれば、安心して眼の前にある別の課題に取り組むことができます。
その他の領域はどうでしょうか。
緊急で重要な課題は第Ⅰ領域です。これは、それこそすぐやらなければなりません。先延ばししていたら大変なことになります。そして多くの人はそれを体でわかっているので、すぐやっているはずです。だから「すぐやるメソッド」の数々は、この第Ⅰ領域については、適用する必要がない可能性があります。やらざるを得ないからです。
それでも中には、すぐにやれないこともあるでしょう。
では、第Ⅲ領域はどうでしょうか。これは緊急ではあるものの重要性の低い課題です。
第Ⅲ領域は、緊急性はあるのですぐに取り組まなければなりませんが、重要性は低いので、できるだけ早く終えたいものです。必要以上に時間を長引かせず、さっさと片づけたり、誰か他の人にやってもらうなどした方がいいでしょう。
残るのが第Ⅳ領域。緊急でも重要でもないものなので、できればなくしたい活動です。
それらは「時間の浪費」とか「時間の無駄」とか「暇つぶし」とか「どうでもいいこと」と呼ばれることもあります。
しかし、過密なスケジュールで重要な仕事を激しくこなしている経営者や売れっ子芸能人のような方は、ギャンブルにはまったり、泥酔するまで乱痴気騒ぎをしたりという、好ましからざる第Ⅳ領域の活動にはまっている場合があります。それは第Ⅰ領域の活動が多すぎてストレスを抱えているがために、好ましくない第Ⅳ領域の活動でなんとかバランスを保とうとしているのかもしれません。
第Ⅰ領域のことを次々こなしながら他人からは「すぐやる人」だと思われていても、第Ⅱ領域には手を付けられず、そのために自分では「先延ばししている」と感じながらも、第Ⅳ領域にはまってしまって身動きが取れないという方もいるのです。
第Ⅳ領域は、気晴らしの時間としてほどよく日常生活の中にあればよく、この領域の活動ばかり「すぐやる人」は、生活のバランスを見直した方がよいでしょう。
- ココがポイント!
- 「時間管理のマトリックス」の4領域それぞれに対処法がある!
1991年、早稲田大学卒業後、プラス株式会社に入社。営業や企画、新規事業設立などを経験。2009年全プラス労働組合中央執行委員長に就任。2010年、平本あきお氏のプロコーチ養成スクール(講師:宮越大樹氏)でコーチングを学ぶ。2013年独立。2016年に株式会社Gonmatusを設立し、コーチングや研修、ワークショップ、「魂が悦ぶ®出版講座」、「ビーイング瞑想®」などを企業や労働組合、個人の方々に提供している。
著書は、35万部突破した『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』(青春出版社)、『「鬼滅の刃」に学ぶ「夢を叶える8つの力」』(ぱる出版)等多数ある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます