本記事は、藤由達藏の著書『「すぐやる人」になる一番かんたんな方法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

マルチタスク
(画像=marcinmaslows/stock.adobe.com)

カムイの法則1:「かねる」

カムイの法則の1番目は「かねる」です。

2つ以上の活動を「兼ね」させることで、時間を有効に使うとともに、兼ねることによる相乗効果を生み出すことを目的とします。

「かねる」というのは、同じ時間に2つ以上のことをやってしまおうという都合のいい考え方ですが、マルチタスクというわけではありません。1つのことをしているのに、2つの用を済ませてしまう工夫です。

第Ⅳ領域の活動を、特に第Ⅱ領域の活動と「かねる」ことはできないかと考えるのが基本です。そこに留まらず、第Ⅱ領域以外の領域の活動と活動を「かねる」工夫をしていけば時間を有効に使えます。

【「第Ⅳ領域の活動」と「第Ⅱ領域の活動」をかねる】

忙しさの中で高ぶった神経を休めるために、ぼーっとテレビを延々と見てしまうという行動は、第Ⅳ領域の活動と言えます。

この活動の目的は、神経を癒やすことです。

この活動を、第Ⅱ領域の活動と「かねる」ことはできないか、と考えるのです。第Ⅱ領域の活動は、あなたの大事にしていることを育て、維持し、支える活動です。そのようなものと、神経を癒やすことをかねさせるのです。

たとえば、私はミャンマーの文化や政治について興味があるので、いくつかのミャンマー料理店の方々と懇意にしています。打ち合わせや懇親会はいつもそういったお店を使っています。ミャンマー好きという価値観がある私の場合なら、ちょっとむしゃくしゃしたから酒を飲もうかと思えば、ミャンマー料理店に行きます。そこに行けば、ミャンマー関係の人と出会うこともあれば、思いがけない人を紹介されることもあるのです。単なる気晴らしと人間関係づくりを「かねる」活動になるのです。

【第Ⅱ領域と第Ⅱ領域の活動をかねる】

「かねる」ことは、かけ算の式に表すと次のようになります。

  • 「旧友とたまには会いたい」×「異業種交流会に参加したい」=「旧友と一緒に異業種交流会に参加する」
  • 「人脈を広げたい」×「資格の勉強をしたい」=「その資格に興味のある人と勉強会を開催する」
  • 「家族との団らんを楽しみたい」×「健康のために運動をしたい」=「家族で山に出かけてウォーキングを楽しむ」

まだまだ他にも2つ以上のことを同じ時間の中で、兼ねさせることができます。第Ⅰ、第Ⅲ、第Ⅳの領域の活動を、第Ⅱ領域の活動と「かねる」ことを考えていけば、どんな活動も有意義なものになります。これを意識さえしていれば、いつでも「かねる」を実践していくことができます。

ココがポイント!
どんな活動も第Ⅱ領域の活動と「かねる」ことができないかと考える

カムイの法則2:「むすぶ」

「むすぶ」というのは、結ぶということで、経験や知識を他の経験や知識と結びつけることです。アイデア創出の基本は「既存の事物と事物の新しい組み合わせ」と言われているように、「むすぶ」ことによって、新しいアイデアを生み出すのです。

第Ⅳ領域の活動を、他の活動や他の知識と「むすぶ」ことによって新しいアイデアを生み出そうとすることです。もしもそこで新しいアイデアが生まれたら、もともとは第Ⅳ領域の活動だったものは、もはや第Ⅳ領域ではなく第Ⅱ領域の活動に格上げされてしまうのです。

たとえば、私は原稿を書こうと深夜まで頑張って起きているのに、夏の暑さと昼間の仕事による神経の高ぶりがあって、どうにも原稿に集中できず、気がつけば連日深夜に鶴田浩二さんや高倉健さん主演の東映の任侠映画を観ていたことがあります。

これはまさに第Ⅳ領域の活動にふけっていたのです。しかし、その体験をさまざまな関心事項と結びつけるとアイデアを生み出せそうなことがわかりました。

  • 教育:東映の任侠映画は、日本社会の人間関係を学ぶための教材にできる
  • 政治:日本政治の派閥争いを任侠映画の抗争にたとえることもできそうだ
  • 国際関係:国際紛争を任侠映画の抗争と対比させたらわかりやすく解説できそうだ
  • 関係づくり:旅人の挨拶(仁義)は、プロフィール作成や自己紹介に応用できる

などのアイデアを見出すことができたのです。

こうなると、単にだらだら映画を見ていただけではなく、同時に、作家としてのアイデアや雑談の材料を取材するような第Ⅱ領域の活動をしていたことになります。

たとえすでにやってしまったことであっても、その体験と何かを結びつけてアイデアを生み出そうと思った途端に、第Ⅳ領域の活動を第Ⅱ領域の活動に格上げしてしまえるといのが「むすぶ」なのです。

「むすぶ」も「かねる」と同様に、第Ⅳ領域以外の活動についても、新しいアイデアを生み出そうとすれば、応用できます。

たとえば、

  • 本を読んだら、自分や他人の経験に結びつけて、新たなアイデアを生み出す
  • 自分の感じたこととお客さまの言葉と上司の言葉を結びつけて、新しいサービスのアイデアを考える
  • 自己啓発書の内容と自分の人生で得た経験を結びつけて、自分の経験に即した教訓を得る

「むすぶ」は、アイデア創出に直結する行動です。「むすぶ」ことでさまざまな知恵や経験、知識を組み合わせて、ビジネスのアイデアや日常生活に役立つ知恵を生み出していきましょう。

ココがポイント!
どんな活動も「むすぶ」意識で他の知識や経験に結びつけてアイデアを生み出せる

カムイの法則3:「いかす」

これは、過去の知識や経験を現在または将来活用し応用しようと考え実践することです。第Ⅳ領域の、一見すると無駄な活動や失敗の体験なども「いかす」という意識で、活かしていけばそれは無駄でも失敗でもなくなります。起きてしまったことをあるがままに受けとめ、それを未来に活用しようとする態度です。

スティーブ・ジョブズが大学を辞めてカリグラフィー(西洋の文字装飾技術)を学んだことが、後にさまざまな書体をマッキントッシュに採用することにつながったという有名な話があります。これも、当時は役に立つはずもない第Ⅳ領域の活動と思えた活動を「いかす」ことによって、結果としてそれは、緊急性がないが重要な活動である第Ⅱ領域にしてしまった例です。その他にもたとえば、

  • たまたま立ち寄った、おいしいレストランは記録に取っておいて、友人との食事やお客さまの接待に使う。
  • 過去の失敗談は、後輩や部下を励ますときの材料(ネタ)として活かす。
  • 一度つくったスライド資料や画像は、別のプレゼンで修正して使う。
  • 今日体験したことを記録して、そこから教訓を引き出して、今後の仕事に活かす。

体験を「いかす」ためには、

  1. 教訓を引き出す
  2. エピソードを面白いストーリーにして語れるようにする
  3. 誰かの役に立つ情報として整理しておく

という作業をすればいいのです。何度も同じミスをしないように、経験から教訓を引き出しておくと、後々活かすことができます。あらかじめ教訓を引き出しておかなかったとしても、新しい状況に置かれたときに、かつてそれと似たようなことはなかったか、と過去を振り返り、その場になって教訓を引き出せば経験を「いかす」ことができます。

一度限りの体験であっても、切り口を変えればいくつも教訓を引き出すことができ、何度でも活用できます。

私が会社を辞めてコーチとして独立したばかりの頃、知り合いから「無重力装置を研究している発明家」なる人を紹介されました。「その方の宿泊セミナーがあるから参加しないか」と声を掛けられたので、数十万円もの金額を払って参加しました。参加者は6人くらいいました。セミナーの中では、小さな物体が浮遊する映像や、宇宙人に教えられた空中から水を生み出す装置の概念図、UFOの原理などを見せられました。クライマックスは、スタッフの制作による、物体を浮遊させる装置の実演でした。確かに金属が浮かび上がり、会場の参加者はその技術に舌を巻いていました。

後でわかったことは、その発明家なる人は、有名な詐欺的発明家で、浮遊装置も渦うず電流を発生させて金属を浮かせるだけの少しも不思議なものではなかったということでした。

この体験は、無駄なお金と時間を浪費したとも言えますが、セミナー代以外の詐欺にもあわず、笑い話として語れ、しかも生で詐欺師的発明家に接することができ、ネタにもなったので、無駄な時間ではなかったということになります。

ココがポイント!
無駄な経験も、教訓を引き出し、ストーリーをつくれれば無駄にはならない
=「すぐやる人」になる一番かんたんな方法
藤由達藏
株式会社 Gonmatus 代表取締役。夢実現応援家®。モットーは「人には無限の可能性がある」。個人には夢実現応援の対話(コーチング)を、企業や団体には研修や講演を提供し、「魂が悦ぶ®出版講座」では出版の実現をサポートしている。
1991年、早稲田大学卒業後、プラス株式会社に入社。営業や企画、新規事業設立などを経験。2009年全プラス労働組合中央執行委員長に就任。2010年、平本あきお氏のプロコーチ養成スクール(講師:宮越大樹氏)でコーチングを学ぶ。2013年独立。2016年に株式会社Gonmatusを設立し、コーチングや研修、ワークショップ、「魂が悦ぶ®出版講座」、「ビーイング瞑想®」などを企業や労働組合、個人の方々に提供している。
著書は、35万部突破した『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』(青春出版社)、『「鬼滅の刃」に学ぶ「夢を叶える8つの力」』(ぱる出版)等多数ある。

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