特集「不動産業界トップランナーに聞く。アフターコロナ時代の経営戦略」では、各社のトップにインタビューを実施。新型コロナウイルス感染症が収束した後の社会における不動産業界の展望や課題、この先の戦略について、各社の取り組みを紹介する。

2013年の創業以来、中古マンション再生販売で急成長を遂げ、第7期(2019年)に約45億円まで売上を拡大させた株式会社リアークスファインド。第8期以降は減少に転じているものの、コロナウイルス蔓延の影響は限定的で、「将来を見据えた先行投資の影響が大きい」と同社代表の大人慶太氏は言う。中古マンション販売が依然として堅調に推移する一方で、マンション管理事業にも進出し、テクノロジーを駆使したサービスで契約戸数を急増させている。

(取材・執筆・構成:大西洋平)

株式会社リアークスファインド
大人慶太(おおひと けいた)
株式会社リアークスファインド代表取締役
鹿児島県鹿児島市出身。働きながら通信制の高校で学び、父親が宅地建物取引主任者の資格を取得したことから不動産業界に興味を抱き、20歳で上京して中堅の不動産会社に入社。8年半ほど営業職として実績を残し、上京した頃から胸に秘めていた「20代で独立」という目標を果たすべく、2013年2月に東京都新宿区でリアークスファインドを設立。

株式会社リアークスファインド
2013年2月設立。本社は東京都新宿区。事業内容は、不動産商品の企画設計、販売、アフターサービス、不動産投資に関するサポートおよびコンサルティング、不動産情報の収集処理及び提供業務、宅地建物取引業、不動産の売買・賃貸・仲介・保有並びにそれらに関するコンサルティング、損害保険代理業など多岐にわたる。

目次

  1. 年収400万円程度でも手の届く中古マンション再販で急成長を遂げる
  2. アプリ上でトラブル解決が可能な「トクミン」でマンション管理の常識を一変
  3. IT化やカーボンニュートラルへの取り組みが遅れている不動産業界
  4. 長期事業構想に基づき、第2フェーズではIPO(株式新規公開)も目指す

年収400万円程度でも手の届く中古マンション再販で急成長を遂げる

−−創業当初から急速なピッチで売上を拡大してきましたが、リアークスファインドの主要な事業とその概要について教えてください。

リアークスファインド代表取締役・大人氏(以下、社名・敬称略):まず、当社のリアークスファインド(Rearx Find)という社名は、「不動産という意味のレジデンシャル(Re)」「架け橋(arch)」「未知数(x)」「発見(Find)」という4つの言葉を組み合わせた造語です。「不動産を通じて皆さまの架け橋のような存在になり、未知数の喜びを想像する。そういった皆さまの想いを発見し、形に変えていきたい」という意味が込められています。

現在、当社が3つの柱に位置づけている事業は、①不動産売買、②マンション管理、③テクノロジーです。順を追って説明しますと、不動産販売は創業時から主力となってきた事業で、中古マンションを買い取って再生したうえで販売しています。

2017年にはリフォーム会社をM&Aによって獲得し、自社で再生まで手掛けられる体制を構築しています。再生した中古マンションの販売を拡大していく流れの中で、賃貸管理事業にも手を広げていきました。

当初から積極的に仕入れてきたのは、都心から少し離れたベッドタウンと呼ばれる地域で、最寄り駅から徒歩10分以上の一般的には不人気な中古マンションでした。なぜなら、競合他社が見向きもしないため、割安な価格で仕入れられるからです。

子会社がリフォームを手掛けるので外注するケースよりもコストを抑えられ、賃貸物件に住む年収400万円程度の20〜30代のお客様が購入できる2000万円台の販売価格で再販が可能となっています。それまで毎月支払っていた家賃と同程度のローン返済額で、マイホーム持てるという選択肢を当社が提供してきたわけです。

一方、2020年から参入したのがマンション管理事業で、徹底的にコストを抑えたサービスを提供することで競合に差別化を図り、約2000戸の管理契約を獲得しています。そして、このマンション管理事業に付随して立ち上がったのがテクノロジー事業です。建物管理に関するコミュニティ形成を円滑にするウェブサイト「トクミン」やマンション管理アプリ「トクミンARCH」を開発・運用しています。

アプリ上でトラブル解決が可能な「トクミン」でマンション管理の常識を一変

−−マンション管理事業に進出した理由についてお聞かせください。

大人:マンション管理と言えば、賃貸管理と誤解される方もいらっしゃいます。当社では、建物の共有部を所有者から委託されて行う、マンションの維持管理を行っています。総会や理事会などのサポート、管理人のマネジメント、マンション内設備の管理などといった包括的なサービスを「トクミン」を利用し提供しています。

当社がこの分野に進出したのは、マンションの管理に関して日頃から不満を抱いているお客様が非常に多いうえ、ほとんどのケースではもっと管理委託コストを下げられるという実態を目の当たりにしたからです。

当社のマンション管理サービスであれば、物件にもよりますが、中には競合の半分程度のコストでご利用いただけるケースもございます。なぜなら、マンション管理サービス自体で大きな利益を上げることは考えていないからです。

相続税の節税対策への活用も含めて中古マンションの再販事業は今後も堅調に推移する見通しです。マンション管理で安全・安心な生活環境をご提供することにより、「一番身近な不動産会社」を目指し、売却などのご相談を受けるうえでしっかりと利益を確保しながら、皆さまにご満足いただける低コストのマンション管理サービスを提供するのが当社の戦略です。

そして、マンション管理に関するさまざまな困りごとを容易に解決できるサービスがウェブサイトの「トクミン」とマンション管理アプリの「トクミンARCH」です。「マンション管理を手のひらで」というキャッチコピーのとおり、ウェブとアプリを組み合わせたサービスになっています。

−−「トクミン」や「トクミンARCH」にはどういったメリットがあって、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

大人:このサービスを導入することで、組合の運営に必要な煩雑な手続きを、すべてWEB上で完結させることが可能になるため、人件費という大きなコストの削減が可能です。

また、アプリ上で駐車場やマンション内施設(会議室等)の予約が24時間可能です。従来は管理人や管理会社へ申込書を取り寄せ、印鑑を捺印した書類を作成、提出、許可が下りたうえで、利用証を取得する。などの予約が主流で、不在時に不便を感じることも多く、手間が係るため利用すら控える入居者様も少なくなかったでしょう。

さらに、「トクミン」にはマンション管理組合の総会や理事会、設備点検などのスケジュールを一括管理できる機能や、それらのスケジュールを通知する機能も搭載されています。マンション内の掲示板にお知らせや案内を張り出す従来型の告知では見逃しも発生しがちですが、「トクミン」ならお知らせや案内がアプリに届き通知されるので万全です。なお、2022年8月1日にはアプリの大幅リニューアルを図りました。

人と人が接するマンション管理ではマニュアル外のことも発生しやすく、柔軟な対応が求められ、単に建物をきれいに維持するだけではなく、入居者とコミュニケーションを図ることが重要となってきます。従来なら現場に赴くことが必要でしたが、「トクミン」を利用すればオンライン上での解決が可能になり、管理側も入居者側も負荷が大幅に軽減します。

IT化やカーボンニュートラルへの取り組みが遅れている不動産業界

−−従来型マンション管理の問題点についてご指摘いただきましたが、他にも不動産業界における課題としてどういったことが挙げられますか?

大人:不動産業界ではIT化の推進がキーワードとなっています。これから当社はテクノロジー事業に力を入れていきます。

また、国が推進するカーボンニュートラルに対する不動産業界の取り組みも特に気になるところです。日本全体のCO2排出量において、住宅・建築物の利用に伴うものの割合が約4分の1を占めるとの推計もあります。

マンション管理においても、紙の印刷物によるお知らせや案内の廃止、共有スペースに設置された灯りのLED化などといった地道な取り組みを進めていくことが求められているでしょう。

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の目標11に「住み続けられるまちづくりを」というものがあるように、環境保全のみならず防災や防犯といった観点からも住環境を整えていくことが重要で、そのためにもマンション管理を通じたコミュニティ形成が大きな役割を果たすと考えています。

長期事業構想に基づき、第2フェーズではIPO(株式新規公開)も目指す

−−今後の成長戦略については、どのような構想を打ち出していますか?

大人:当社グループは2034年までに至る長期の事業構想を掲げ、それに基づいて3年ごとの中期計画を策定したうえで、各々の目標達成を目指しております。

まず第1フェーズ(2022〜25年)では「売買事業の安定化」を図り、中古再生における専門性の高さで価値の創出機会を生み出しながら、働く社員が誇りを持てる事業環境の整備や、株式の新規上場に向けた体制固めを進めます。

そのための具体策としては、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県を中心とした中古マンションと新築戸建の販売や、差別化された商品開発と品質の向上、賃貸・建物における管理戸数の拡大、コミュニティ形成システムの開発・活用、促進コミュニティ形成システムの開発などを掲げています。第1フェーズにおける数値目標は、グループ売上高100億円、グループ社員数150名、管理戸数13000戸の達成です。

続く第2フェーズ(2025〜28年)では「管理事業とテクノロジー事業のバリューアップ」を目指し、信用と実績を獲得してマンションに関する最初の相談者となることを追求するとともに、事業創出ができる環境の確立や株式新規上場の達成を目指します。

顧客ニーズに合わせた多様な不動産を提供しながら首都圏を中心に事業を拡大する一方、マンション内におけるコミュニティ形成にも力を注ぎ、グループ売上高270億円、グループ社員数200名、管理戸数30000戸という目標に挑みます。