国内の生涯未婚率は上昇を続けており、将来的に単身世帯の高齢者はさらに増えると考えられる。そこで本記事では、いわゆる「おひとり様」の老後資金や貯め方などを分かりやすくまとめた。現時点で老後に不安を感じている方は、ぜひ最後まで読み進めてほしい。
生涯未婚率の推移
結婚をせずに老後を1人で迎える「おひとり様」は、今後さらに増える可能性が高い。
以下のデータは、国立社会保障・人口問題研究所の資料をもとに、厚生労働省が公開した「平成27年度版厚生労働白書」によるものだ。2015年以降は推計値となるが、日本の未婚率は1990年代中ごろから増え続けていることが分かる。
時期 | 男性の生涯未婚率 | 女性の生涯未婚率 |
---|---|---|
1995年 | 9.0% | 5.1% |
2000年 | 12.6% | 5.8% |
2005年 | 16.0% | 7.3% |
2010年 | 20.1% | 10.6% |
2015年 | 24.2% | 14.9% |
以下、推計値 (※「日本の世帯数の将来推計」をもとに算出) | ||
2020年 | 26.6% | 17.8% |
2025年 | 27.4% | 18.9% |
2030年 | 27.6% | 18.8% |
2035年 | 29.0% | 19.2% |
国勢調査のデータを見てみると、2020年時点での実際の生涯未婚率は男性が25.7%、女性が16.4%だった。上記の推計値からそれほど離れていないため、生涯未婚率の増加傾向はしばらく続くと考えられるだろう。
老後にかかる生活費は ? 2つのケースに分けて紹介
では、おひとり様が安定した老後生活を送るには、どれくらいの生活費が必要になるのだろうか。ここからは「必要最低限の老後生活」と「豊かな老後生活」に分けて、必要になる金額を紹介する。
●老後における必要最低限の生活費
総務省が集計した「家計調査 (家計収支編) 」によると、2021年における単身世帯の平均消費支出 (月) は大都市で15万9,500円、中都市で15万4,235円とされている。実際にはどのような費用がかかっているのか、必要最低限の費用に絞って大まかな内訳を見ていこう。
主な支出項目 (大都市) | 金額の平均 (1ヶ月あたり) |
---|---|
食料 | 4万0,299円 |
住居 | 2万5,926円 |
光熱・水道 | 9,677円 |
家具・家事用品 | 5,617円 |
被覆及び履物 | 5,004円 |
医薬品 | 1,505円 |
保険医療サービス | 4,573円 |
交通・通信 | 1万7,418円 |
その他の消費支出 | 2万8,286円 |
上記は削ることが難しい費用をまとめたものであり、すべてを合計すると13万8,305円となる。日本人の平均寿命から考えれば、60歳からの老後生活は20~30年ほど続くため、大都市では約3,320~4,980万円 (13万8,305円×12ヶ月×20~30年) の老後資金が必要になると計算できる。
●豊かな老後生活を送る場合の生活費
豊かな老後生活を送りたい場合は、上記に加えて教養娯楽費が必要になる。世の中の単身世帯がどれくらい費やしているのか、「家計調査 (家計収支編) 」によるデータ見ていこう。
時期 | 大都市における教養娯楽費 | 中都市における教養娯楽費 |
---|---|---|
2017年 | 1万8,949円 | 1万8,589円 |
2019年 | 2万0,683円 | 1万7,616円 |
2021年 | 1万8,574円 | 1万7,225円 |
2000年代に比べると教養娯楽費は徐々に減っているが、2020年以降の新型コロナウイルスによる影響はあまり受けておらず、近年は17,000~20,000円の間を推移している。では、必要最低限の生活費にこの金額を足すと、合計でいくらの老後資金が必要になるだろうか。
教養娯楽費の合計= (1万7,000円~20,000円) ×12ヶ月× (20~30年)
=408~720万円
必要な老後資金= (3,320~4,980万円) + (408~720万円)
=3,728~5,700万円
なお、上記のデータには持家の単身者 (約50%) も含まれるため、賃貸に住んでいる場合はさらに多くの資金が必要になる。また、「諸雑費」や「その他の消費支出」は含めずに計算を行っているので、実際の金額とは離れる可能性があることに留意してもらいたい。
老後に向けてできる対策とは ?
老後資金が不足している場合は、早い段階で対策を立てることが重要になる。ここからは、比較的取り組みやすい3つの対策を紹介していこう。
1.節約
日々の生活費を節約する対策は、今すぐにでも始められる。例えば、現在30歳の人が毎月の食費を5,000円ほど減らした場合、60歳までに得られる節約効果は以下のように計算できる。
節約金額の合計=5,000円×12ヶ月×30年間
=180万円
ほかにも水道光熱費や通信費などは、契約先やプランを見直すことで節約できる可能性がある。ただし、節約によって貯められる金額には限りがあるため、目標金額まで遠い場合は別の方法と組み合わせることを検討したい。
2.貯蓄
節約によって浮いた資金は、日頃からしっかりと貯蓄しておくことが重要だ。単に普通預金口座へ預けるだけではなく、以下のような金融商品を活用すると、さらに多くの資金を貯められる可能性がある。
・定期預金:預け入れる期間が決まっている代わりに、普通預金よりも高金利な金融商品
・貯蓄型保険:毎月積み立てた保険料の一部を、満期時に受け取れるタイプの保険商品
ただし、貯蓄型の金融商品でも数千万円の資金を貯めることは難しいため、老後資金が大きく不足している場合は別の対策を考える必要がある。
3.資産運用 (投資)
上記の定期預金なども資産運用の一種だが、多くの老後資金を貯める必要がある場合は、もう少し積極的な方法を考えたい。損失を被るリスクはあるが、以下のような方法を選ぶとハイリターンを期待できる可能性がある。
・株式投資
・投資信託
・外貨預金
・iDeCo
・不動産投資 など
株式投資や投資信託による投資を行う場合は「NISA (※) 」を利用できるケースもある。ただし、資産運用は損失リスクを抑えるには知識や情報が必要になる。商品を購入する前には準備期間をしっかりと設けておきたい。
(※) 投資によって生じた利益が非課税になる制度。
将来のビジョンに合わせた資産計画を立てよう
今回は大まかな老後資金を紹介したが、実際に必要になる資金は「どのような生活を送りたいか ? 」によって異なる。そのため、まずは老後生活におけるビジョンを明確にし、それに合わせた資産計画を立てることが重要だ。
また、老後資金を貯める方法もいくつかあるため、各方法の概要やメリット・デメリットをしっかりと理解し、自身のケースに最適なものを選んでいこう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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