36協定の適用で変わったこと
建設業は、2024年4月1日以降は36協定の時間外労働上限規制が他の産業と同じように適用されている。具体的にどのように変わったのだろうか。
時間外労働に罰則規定が設けられる
36協定の時間外労働の上限規制は、原則「月45時間、年360時間」になり、これを超えると6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が適用された。
また、特別の事情があって労使で合意していても、以下の各上限を超えてはならない。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が1ヵ月で100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計が2〜6ヵ月のそれぞれの月平均が80時間以内
- 月45時間の時間外労働を超えられるのは年6回まで
・災害の復旧・復興事業に関しては例外規定がある
なお、災害が発生した際の復旧・復興事業に関してのみ、以下の上限規制は適用されない。
- 時間外労働と休日労働の合計が1ヵ月で100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計が2〜6ヵ月のそれぞれの月平均が80時間以内
建設業の労働環境の現状と解決すべき課題
建設業が働き方改革の時間外労働規制に猶予が与えられていたのは、業界特有の理由がある。ここでは、建設業が慢性的に抱えている課題を解説する。
建設業の労働時間と出勤日数は格段に多い
国土交通省の資料『最近の建設業を巡る状況について』によると、建設業の年間実労働時間と年間出勤日数は調査産業計よりもかなり多く、類似した業界である製造業よりも多いことが分かる。
また、同資料の2020年の『日建協時短アンケート』で報告されたのは、建設工事全体の36.3%が4週4休以下で業務に従事していることだ。労働基準法では4週4休以上の取得が定められており、他の産業では週休2日制が一般化している中で、業界としてギリギリの就労状況であることが分かる。
人手不足の常態化と高年齢化
総務省の『労働力調査(2023年)』によると、建設業の年齢階級別の就業者数は以下のグラフの通りだ。
建設業では、女性労働者が少ないのはもちろん、若手人材が極端に少ない業界構造であり、団塊の世代など高齢者層の大量退職も控えている。ベテラン層の退職により、若手世代への技術の引継ぎがこれからさらに難しくなると予想される。
若手層の人材不足はもちろんだが、2023年の就業者数は483万人で前年から4万人ほど増加しているものの、2020年からは10万人ほど減少している。