改正労働法施行後も継続的に取り組むべき5つのこと

2024年の改正労働法施行された後でも、建設業では職場環境の改善のためにも継続的に5つの取り組みを続ける必要がある。

1.長時間労働への対策

全産業の中でも建設業の就業時間の長さはトップレベルのため、その対策は継続的な取り組みが必要だ。

業界全体として求められるのは、工期の適正な設定と週休2日制度の拡大である。発注者には施工条件を明確化した上で請負契約を締結することが求められ、状況に応じた工期変更も検討しなければならない。

工事以外の面では、従業員の勤務時間を正確に把握するための勤怠管理システムの導入、アウトソーシングの活用、バックオフィス業務や設計業務などのリモートワーク化などを対策の一つとして考慮する必要があるだろう。

2.給与体系や社会保険の見直し

同一労働同一賃金に向け、処遇の見直しや社会保険への加入促進も必要だ。

国土交通省は、工事に関わる技能者情報や社会保険の加入状況、各工事現場での就業履歴などを登録してデータを蓄積する「建設キャリアアップシステム」の普及を目指している。建設業許可制度の見直しも検討されており、社会保険に加入していない建設業者は、業務従事の許可はもちろん更新も認めない仕組みの構築を実現しなければならない。

建設業者は、「建設キャリアアップシステム」を活用しつつ、従業員の能力に合わせた処遇制度を構築して社会保険への速やかな加入を求められている。

3.生産性向上への取り組み

働き方改革の目標の一つである、生産性向上に取り組む必要もある。

建設業はデジタル化が遅れており、2021年の『日建協時短アンケート』でも残業理由の首位が「社内書類等の事務処理業務が多い」と、書類削減はもちろん申請書類などの簡素化が欠かせない。

中小企業には、タブレット活用によるペーパーレス化や工事現場へのICT建設機械の導入、ウェアラブルカメラの活用による遠隔管理といった、IoT技術の活用による省力化が推奨されている。

建設業界が改正労働法施行までに改善すべき点として既に挙げられている3つの要素に加えて、以下の2つの改善点も重要です。

4.職場内コミュニケーションの改善

改正労働法施行後の建設業界では、プロジェクトの効率性を高めて作業や伝達のミスなどを減らすためにも、職場内コミュニケーションの改善が不可欠だ。簡潔かつ明確な指示の提供、ツールなども用いた多様な情報共有や遠距離での対話手段の活用、そしてチームメンバー間の信頼関係の構築が必要だ。

また、プロジェクトに関わる異なる専門分野や背景を持つ関係者間の意見交換を促進することで、より革新的で実践的な解決策が生み出される可能性もある。

5.労働安全衛生管理の強化

建設業界は労働者の健康と安全を保護し、事故や職業病の発生を防止するためにも、労働安全衛生管理体制の全面的な見直しと強化を進める必要がある。

建設業界は全産業の中でも労働災害の発生件数が突出して多く、2020年の同業界での死亡者数は労働者数334万人の中で258人であり、一人親方のみに絞ると59万人中57人が亡くなっている。

安全な作業環境の確保、安全装備の提供、定期的な安全教育と訓練の実施はもちろん、現場の安全基準を定期的に見直し、最新の安全技術を取り入れるといった対応が求められる。労働安全衛生管理の強化は、労働者の健康を守るだけでなく、作業効率の向上やプロジェクトの遅延防止にも寄与する。