企業の卑劣なやり方を戒めた時代

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(画像=taka/stock.adobe.com)

「追い出し部屋」という、陰湿さとやるせなさが漂うその〝部屋〟の存在が、大々的に報じられたことを覚えていますか。

今から10年前の2012年の年の瀬。大手全国紙に、当時赤字にあえいでいたパナソニックグループの中に「従業員たちが『追い出し部屋』と呼ぶ部署がある」という文言で始まる記事が掲載されました。当時の私のメモによれば、「100台ほどの古い机とパソコンが並ぶがらんとした室内に、さまざまな部署から正社員113人が集められ、退職強要とも受けとめられる〝業務〟を課せられている」といった、企業の卑劣なやり方が、その記事には記されていました。

会社側は、「新たな技能を身に付けてもらい、新しい担当に再配置するための部署。会社として退職を強要するものではない」と説明。しかし、集められた社員の中には「希望退職するか異動を受け入れるか」の二者択一にしゃたくいつで配属されたケースもあった。似たような部署はソニーグループ、NECグループ、朝日生命保険などにもあり、自分自身が社外での自分の出向先を見つけることを「業務内容」としている会社もあったと報じられました。

50歳の壁 誰にも言えない本音
(画像=50歳の壁 誰にも言えない本音)

この報道は新年早々話題となり、連日メディアに取り上げられるなど社会問題に発展しました。あの頃の社会にはまだ、企業の卑劣なやり方を戒める空気が確実にあった。2000年以降、希望退職という「新手のリストラ」に企業が手をつけたことや、2008年に発生したリーマンショックの影響で派遣切りも多発。大きな騒動となった「年越し派遣村」の余韻も残っていたため、「会社は社員をなんだと思っているんだ!」という怒りが、社会全体で共有されたのです。