本記事は、堀江貴文氏の著書『キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由』(ぴあ)の中から一部を抜粋・編集しています。
人材不足は全国どころか世界共通
〝日本語が喋れてうそをつかない〟人材の確保すら難しい
堀江 木下さんは、地方創生のプロですよね。
木下 そうですね。高校3年生のときから全国の商店街の共同出資会社を作って、オンラインで情報交換をしながら事業展開をしたりしてました。まだ「地方創生」なんて言葉がなかったころからです。最近は韓国や台湾とも仕事をしています。
堀江 韓国や台湾ともですか。
木下 日本の比じゃない少子化で、人口減少している状況ですね。台湾は今地方支援を集中的に行っています。
堀江 それはパン屋をやらないと!(笑)
木下 そう思います。
堀江 台湾、韓国なら冷凍で十分に送れます。
木下 めちゃくちゃアリですよ。私の仲間でも、中国の田舎でパン屋をやったりしている人がいますが、やっぱりパン屋は「手間がかかる」「人を雇うとお金がかかる」って。住んでいる人というよりも働く人の減少率が高くて、マーケットは残っているけれど供給が先細りという。
堀江 日本とまったく同じですね。
木下 2019年に台湾をまるまる一周してきたんです。僕が書いた地方創生に関する「稼ぐまちが地方を変える」(NHK出版刊)、「地方創生大全」(東洋経済新報社刊)、「まちづくくり幻想」(SBクリエイティブ刊)といった本は、台湾でも翻訳版が出ていて、過疎地でいろんなことにチャレンジしてるんです。台湾は日本に対して今良好な関係を意識してくださっているので、ビジネスも非常にやりやすい。知り合いがやっている『九州パンケーキ』は3店舗くらいあるのかな。絶好調です。
堀江 ああ、ありますね。
木下 宮崎の店なんですけど、台湾の方がフランチャイズで3店舗やっているんだそうです。だから、日本のフランチャイズを向こうでやるっていうのもいいですね。
堀江 パン屋は人の確保が大変、というお話が出ましたが、『小麦の奴隷』では、おいしさを損なわず、誰でもできる工程を残すギリギリをシステム化したんです。なんならその日だけのバイトでもできるくらいにしてます。
木下 やっぱりそこですよね。地方では「日本語が喋れて、うそをつかない人を探すのが大変」という声がありますから。
堀江 笑い事じゃないんですよ。レベル的に。
木下 高度な人を東京から連れてきたら、すぐにお金が合わなくなりますからね。立ち上げやオペレーションはできるんですけど、すぐに給料を上げてくれっていう話になる。彼は辞めても大丈夫。引く手あまたですから。
堀江 もう限界なんですよ。だからパン屋さんも山崎製パンの工場から仕入れて……ってなるんですけど、すごいですからねぇ。僕もやってたことあるからわかるけど。ソーセージをえんえんと置くみたいな仕事を今もやっている人がいるという。
木下 え、今も機械化されていないんですか?
堀江 そうですよ。だって、機械にするより安いですから。
木下 うわー、そうか。専門のラインを作るより安いかもしれませんね。
堀江 特殊なパンも多いですからね。コンビニ1店舗に数個置かれるパンでも何万個と作るわけだから。それぞれに汎用できるロボットなんてまだできていないし、開発費と償却考えると人の方がいいですよ。
日本が誇るおいしいパンは世界でも必ず売れる
堀江 海外展開を考えるなら、僕なら食パンですね。海外にもあるにはあるけれど、あんまりおいしくない。
木下 そうですね。パリのクロワッサンとかは圧倒的においしいけど、食パンは日本の方がおいしい。
堀江 焼いたら表面がサクサクして、中はふわっとしてるでしょう。あれって「湯種」という製法で作っているんです。こねるときの水分の温度によって、タンパク質のグルテン構造のでき方が変わる。
木下 日本独自に進化したわけですか。
堀江 面白いですよね。この技術は世界にウケる。ヨーロッパに持って行ってもいいと思いますよ。