本記事は、堀江貴文氏の著書『キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由』(ぴあ)の中から一部を抜粋・編集しています。

Hand holding food related icons
(画像=ra2 studio/stock.adobe.com)

〝ずっとあるもの〟を疑え! その再構築こそが面白みだ

なぜ和牛は世界に知られ、日本酒はグローバルになれないのか

堀江 今の若い子たちって、みんな、勉強もすごくしてますよね。魚の締め方とか、調理の方法ってYouTubeで共有できてるから。みんな勉強していますよ。

牧元 そうですよね。勤勉です。

堀江 魚の締め方の『津本式』だって、決してマニアックではない。津本式って、今、LINEのグループで仕入れられるんですよ。

牧元 ええ! そんなことになっているんですか。それはすごいですね。

堀江 すごいことになってるんです。情報通信革命は、着実に起きています。

牧元 YouTubeなら世界中どこからでも見られますからね。魚は和牛に比べるとまだ知られてないかもしれませんが……。

堀江 まあ、和牛は圧倒的ですからね。日本酒は全然知られていないでしょう。

牧元 そうなんですよね。日本酒はグローバルではない。

堀江 日本酒を海外の人に説明しろってなっても、わかんないですもん。ハイコンテクストすぎちゃって。

牧元 和牛はわかりやすいですもんね。

堀江 目に見えますからね。ブラックアンガスだろうが黒毛和種だろうが、リブロースはリブロースの形をしている。

牧元 確かにそのとおり。

料理人にはイノベーションは起こせない

堀江 だから、共通言語で語れるんです。でもね、自分で飲食店をやってみて思ったんですけど、料理人って技術者なんで、イノベーションを起こせない。さっき話したそば屋のオペレーションもそうですけど、なかなか革命が起きないし、起こさなくていいと思い込んでる。

牧元 機械打ちで世界を変えたわけですもんね。

堀江 今、うちでやっている〝ワギュジスカン〟もそうです。和牛でおいしいのは脂なのに、落として捨ててた。ジンギスカン鍋で焼けば、そのおいしい脂を今まで焼肉屋でひどい扱いを受けていた(笑)野菜に吸わせてるんです。これだけのことなのに、なんで誰もやっていなかったのか。

牧元 ジンギスカンは羊の安い肉でやるもんだろう、という変なこだわりがありますからね。

堀江 厳密に言うと、ジンギスカン屋で黒毛和牛を出しているところは、ぽつりぽつりとはあるんですが、和牛だけっていうところはない。

牧元 見たことないですね。

堀江 鍋もさらに改良して。周りの受けの部分を大きくして、鍋もできるようにしたんです。だから、火鍋もできる。最初は牛骨スープを張ってもつ鍋をやっていて、火鍋をやり始めて、すき焼きもできる。火鍋に関しては、カレー粉とかを入れて薬膳火鍋になり、そこにごはんを入れたら薬膳カレーリゾットができて、めちゃくちゃうまい。「なんなのこれ、万能すぎない?」って世界ですよ。すき焼きもやりまくっていますが、最高です。

牧元 技術者はそういうことは考えないですからね。

堀江 そう、考えないんです。

焼肉のポテンシャルを誰も活かしていない

堀江 最近は、〝ハラミの薄切り〟っていうのを開発しました。

牧元 薄切り?

堀江 そう。極薄です。

牧元 どうやって切るんですか?

堀江 普通に包丁で手切りです。手切りじゃないと無理ですね。(写真を見せる)

牧元 おお、これはすごいね。どうやって食べるんですか?

堀江 ジンギスカン鍋で焼いてますよ。醤油と砂糖をのせてすき焼きにしてもいいし。ハラミの一番おいしい食べ方を見つけたかも。ただ、ハラミは内臓肉ですから、本当に締めたての新鮮なものを仕入れて、チルドの状態で切らないとくさくて食えないと思います。

牧元 そうでしょうね。

堀江 ハラミがよくタレ漬けになってるのは、くさいから。これは、塩だけで食えるハラミじゃないと。

牧元 そういうのがなかなか手に入らないから。

日本は肉食先進国なのに発想が昭和で止まっている

堀江 だから今までやってこなかったんでしょうね。これはうちでしか食えないでしょう。面白いことに、生産者自身もこういうことには追い付けないんですよ。だから、申し訳ないけど尾崎牛の尾崎さんの仲間の料理は昭和のオーソドックスで止まってる。もったいないですよね。こんなにおいしい肉を作ってるのに、ポテンシャルを引き出せてないし、引き出そうともしていない。僕は、今は焼肉の再発明みたいな感じでやるのが面白くて。だって、焼肉ってすごいシステムじゃないですか?プライムじゃないB級の部位をおいしく、しかも高く食べさせるって。

牧元 しかも、最終調理はお客さんだからね(笑)。

堀江 そうなんですよ! 客に料理させて高いお金をとる。考えたやつは天才だなって思いますね。

牧元 確かにね。

堀江 あれはたぶん、マグロの希少部位から発想を得ているんです。マグロはいろいろな部位を分けて出す文化があるから。赤身とか中トロとか。中落ちみたいなところまで食べる。

牧元 日本人は丁寧ですからね。

堀江 そうなんです。鶏肉もそうですよ。4種類くらいさばき方があるんですけど、日本の焼鳥屋のさばき方が一番細かくて繊細。中華なんかはザクザク切っちゃうし、ロティサリーチキンも大雑把ですよね。日本人の職人なら、細かく部位に分けて、筋を丁寧に除いて、おいしく食べるために薄切りにしたりする。

牧元 そうですよね。

堀江 焼肉は肉が少量でも成立する。あれって実は結構すごいことだなと思って。ステーキってドーンってないとだめでしょ。アメリカじゃ、ステーキにならない部分は全部ミンチですから。

牧元 肉食後進国のはずが、今じゃ先進国になってる。

堀江 いつのまにか。で、話を戻すと、いわゆる〝日式焼肉〟が発達して、それがあまりにもよくできていたものだから、そのフォーマットを延々と繰り返しているというわけです。それ以上のことを考えられないほどに。「ジンギスカン鍋を作ろう」「ハラミを薄切りにしよう」なんて、思いつかないですよね。僕が肉をさばき始めて、一番びっくりしたのは、タン下を食べてないことですよ。

牧元 タン下、おいしいですよね。

堀江 焼肉屋でもなかなか出てこない。これだけ焼肉食べてるのに、出てきたところを見たことがないんです。あれは全部まかないになっちゃってるんですね。タンシチューにしたりとかして。でも、本来は薄切りにするとめちゃくちゃうまい。

牧元 確かに貴重ですね。

堀江 尾崎牛のタンでやったりしたらもう、本当にうまい。うちでは定番メニューになってますけど、それも僕が「なんでココ食わないの?」って言ったら、「そこおいしいですよ」だって。じゃあ、出そうよ!(笑)

牧元 わはは。

堀江 「それ、どういうことよ」って(笑)。いろんな部位を食べてみて経験しましたね。肩ロースなんかも、上手に使うといいんですよ。渋谷の『ヤキニク ホルモン どうげん』は、肩ロースを使ってうまく構成してますよね。利益率は非常に高いと思いますよ。

牧元 そう、肩ロースでリンゴを巻く名物があったりね。

堀江 『WAGYUMAFIA』はどうしているかというと、プライムは海外に輸出。セカンダリの部位とホルモンを焼肉用にしてます。月に5~6頭買うんです。

牧元 6頭買うのはすごいですね。尾崎牛で?

堀江 そうですね。

牧元 テールとかは?

堀江 テールはスープとかに使っています。牛骨スープって、ライセンスビジネスができるんですよ。海外のラーメン屋さんに卸します。香港とシドニーにできるラーメン屋さんがあるんですけど、そういう牛骨スープが日本でしか作れないので。

牧元 なるほどね。そこまで考えるわけですか。

堀江 原料ビジネスですよ。『小麦の奴隷』もそう。カレーパンの冷凍生地を一括して卸して、利益をとれます。そうやって〝原料〟を上手に握らないと。経営では大事なことだと思いますよ。

牧元 そこまで考えているんですね。それは、料理ひと筋でやってきた人にはなかなかできない発想。

堀江 それが面白みなんだと思いますけどね。少なくとも僕にとっては!

キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。ロケットエンジン開発など、幅広く活動。グルメ分野では2013年にリリースしたスマホアプリ「TERIYAKI」を主宰し、他にも「WAGYUMAFIA」や「小麦の奴隷」での活動などで注目を集めている。有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」は1万数千人の読者を持ち、2014年には会員制のコミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校」をスタート。主な著書に『多動力』(幻冬舎)、『好きなことだけで生きていく。』(ポプラ社)、『ゼロ』(ダイヤモンド社)、『堀江貴文VS.鮨職人 鮨屋に修業は必要か? 』(ぴあ)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)