2023年に入り、にわかに注目を浴びているのが中国市場だ。コロナ禍では感染の完全な封じ込めを目指す「ゼロコロナ政策」を掲げたために経済の回復が遅れたが、政府は2022年秋に行動制限を緩和。もともと経済成長率の高い国だけに、リオープニング(経済再開)期待も加わり、投資先として関心が高まっている。
中国の近年の経済・政治状況のサマリー
経済産業省のまとめによると、中国は2020年にいち早くコロナ禍からの回復を見せ、主要国においてプラスの経済成長を達成した唯一の国だった。
2021年の中国の実質GDP成長率は8.1%で、政府目標の6%を超えた。コロナショックで落ち込んだ2020年の反動もあり、成長率はコロナ前の2019年から伸びたものの、四半期別では年の半ばから洪水や感染の再拡大、電力不足、半導体不足、不動産規制、資源高騰などを背景に、3四半期連続で経済が減速した。
過去、中国経済は2000年代にGDPで主要国を次々と抜き、2010年に日本を上回って世界第2位となった。IMFの「世界経済見通し」によると、今後は主要国のうち米中のみが大きな成長を続け、成長がそのまま続けば2030年頃には中国が米国を抜いて世界一になるという。
その中国政府は2022年12月、3年間続けたゼロコロナ政策を大きく緩和し、経済が正常化に向かい始めた。アフターコロナ・ウィズコロナ時代、中国は世界経済における存在感をさらに増すとみられている。現在の中国株式市場は世界的な回復基調に比べて出遅れ気味であり、その反動で相場が大きく上昇する局面があるかも知れない。
中国で注目のセクターは?
中国政府はこれまでのゼロコロナ政策で、欧米諸国や日本とは異なる「国民の徹底的な行動管理による感染拡大の抑制」という独自の対策を講じてきた。その中で国民の生活は制限され、例えば工場は稼働を中止せざるを得なかった。
経済が正常化し、生産活動が元に戻ることで、製品の素材を扱うメーカーは活況になることが予想される。中国はかつて「世界の工場」と呼ばれ、近年は政治リスクを懸念した外国企業の拠点が中国国外に流出する動きもあったが、現在でも世界の工業国としての地位を誇っている。
中国工業情報化省は2023年1月、2022年の鉱工業生産が前年比3.6%増加したとみられると発表した。製造業部門の生産は3.1%増え、GDPの28%を占めた。2022年はコロナ対策で生産と供給網が混乱したが、2023年は自動車や消費財などの主要産業が安定するとの見通しを示している。
近年、中国政府は国内の格差問題の解消に向けて「共同富裕」というスローガンを掲げ、特に不動産やIT(情報技術)業界への締め付けを進めてきた。しかし、足元では両業界に対し、行き過ぎた制限を緩める動きがみられる。このような環境では、電気通信サービスや不動産といったセクターへの追い風が強くなる。
注目すべき企業の一例
アフターコロナに向けて、注目すべき中国企業をいくつか紹介しよう。
上海国際機場
注目したい銘柄の1つが、旅行関連銘柄の上海国際機場だ。空港運営会社であり、経済再開による航空需要の急回復は同社の株価に追い風を吹かせる可能性が高い。
上海の虹橋空港も傘下に置くなど事業を順調に拡大しており、コロナ禍で業績が悪化したが、強烈なV字回復に期待がかかる。この1年の株価はなだらかな右肩上がりで、まずはコロナ禍前の最高値の更新をできるかに注目だ。
アリババ
株価の回復余地が非常に大きい有力企業といえば、真っ先にアリババグループが挙げられる。
EC(電子商取引)事業で世界最大の流通総額を有し、中国政府の規制リスクによって株価が落ち込んだものの、当局からの圧力は緩和傾向にあり、今後は株価が回復に向かう可能性が指摘されている。
BYD(比亜迪)
BYD(比亜迪)は中国のEV(電気自動車)最大手で、EVの販売台数はテスラに次いで世界第2位だ。自動車業界に参入したのは2003年で、そこから急成長を遂げた。世界的なEV化の流れに乗り、さらに業容を拡大することが期待される。
まずは「分散」の観点で投資信託を
日本の人口減少が始まって久しい。今後も内需は縮小が予想されるため、中長期的な投資先としては、海外で稼ぐ日本企業か海外企業を検討したいところだ。しかし、日本にいると海外企業の情報は入りにくく、国によっては言語の問題もある。
そこで、さまざまな銘柄を組み合わせて作られた投資信託に目を向けたい。「個々の企業ではなく、1つの方向性に合致する企業群を買う」というイメージだ。
今回でいえば、今後中国で成長が予想されるセクターの企業をピックアップして組成した投資信託がそれに当たる。投資の原則である「分散」の観点でも、まずは投資信託商品を検討し、慣れたら個別株に移るというステップアップをおすすめしたい。
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