金融機関などにある大切な預金が「資産凍結」されてしまうと、本人や家族が自由に使えなくなる。資産凍結は、税金の滞納や会社の破産による場合のほか、本人が認知症と判断される場合などに行われてしまうため注意が必要だ。ここでは、万が一資産凍結が行われたときの対処や、資産凍結を事前に避ける方法について解説する。

「資産凍結」は本当に起きる ?

絶対避けたい「資産凍結」 ! なぜ起こる ? 対策は ?
(画像=diy13 / stock.adobe.com)

金融機関は、高齢者が認知症によって判断能力を失っていると判断すると、預金を引き出したり金融商品を解約したりできなくなる「資産凍結」を行うことがある。資産凍結されると、本人だけでなく家族も資産を動かすことができない状態となる。

銀行だけでなく信用金庫などでも同様で、不動産・株式・証券口座・生命保険といった金融資産も凍結されることがある。

資産凍結を受けて特に問題になるのは、高齢によって自宅のリフォームや介護施設への入居が必要になり、まとまったお金が必要になったときだ。認知症を発症していると預金が引き出せず、「老後のために蓄えていた資金が使えない」という事態になりかねない。

資産凍結されるのはどんなとき ?

金融機関が顧客の資産を凍結するのは、例えば以下の場合だ。

  • 税金を滞納したとき
  • 会社が破産したとき
  • 認知症と判断されたとき

このうち、認知症によって資産凍結される場合について詳細に説明する。

資産凍結されるタイミング

例えば、窓口で多額の預金を引き出そうとすると、名義人本人であることや使用目的を聞かれることが多い。その質問に的確に答えられない場合などには、窓口担当者は認知症の疑いを持つことがある。

資産凍結の目的は ?

金融機関が資産凍結を行う目的は、詐欺被害やトラブルの防止だ。被害が深刻化している特殊詐欺 (オレオレ詐欺など) に高齢者が巻き込まれて預金を引き出してしまうケースや、親族など第三者が本人の意思に反して資産を使い込んでしまうというリスクを減らしている。

全銀協による新指針も

全国銀行協会が2021年に公表した指針では、本人の判断能力が低下または喪失していても、親族からの払い戻し依頼に応じられるケースを示している。医療費の支払いなど、本人の利益になることが明らかな場合だ。しかし、金融機関は状況によって個別に判断するため、必ずしも対応が可能とは限らない。

実際に資産凍結されたらどうする ?

事前に対策をしておらず、本人が認知症になって資産凍結されてしまうと、その後の預金管理には「成年後見制度」を利用しなければならない。成年後見制度とは、本人が財産管理や契約などを行うための判断能力が不十分な場合、不利益を被らないようにする仕組みだ。

親族など「成年後見人」に選任された人は、本人にとって損害が生じる可能性がない限りで資産を管理できるようになる。しかし、後見を開始するには家庭裁判所への申し立てが必要で、通常1~2ヶ月かかる。緊急でお金が必要なタイミングに間に合わないことも考えられるため、前もって確認しておくことが重要だ。

資産凍結されないための方法は ?

いざという時に資産凍結されないように、あらかじめ備えておきたい。具体的な手段は「任意後見制度」と「家族信託」がある。それぞれの仕組みとメリット・デメリットを確認する。

任意後見制度

任意後見制度とは、将来的に判断能力が不十分になる場合に備え、判断能力があるうちに自分の意思で「任意後見人」を決め、「任意後見契約」を結んでおくことだ。任意後見人は、財産管理や病院の入退院手続きなどの事務について本人を代理できる。

本人の判断能力が十分なうちは、契約の効力は発生しない。また、実際に任意後見人の仕事が必要になったときは、その行為が適正になされているかをチェックする「任意後見監督人」が家庭裁判所によって選任される。

しかし、契約には公正証書が必要で、作成には手数料や登記嘱託料などがかかる。任意後見人を弁護士や司法書士などの専門家が務める場合や、後見監督人には報酬の支払いが必要だ。任意後見制度の利用は契約時に加え、その後も月々のコストがかかる点に留意したい。

家族信託

家族信託とは、本人を委託者として、預金や不動産の管理などを信頼できる家族や親族 (受託者) に託す仕組みだ。本人の判断能力があるうちに、委託者と受託者の間の信託契約で成立する。受託者に託した資産は「信託財産」となり、受託者は信託契約に定められた目的に従って管理・処分できるようになる。

ただし、家族信託は財産管理のための方法であり、成年後見制度のように身の回りの手続きなどをすることはできないので注意したい。また、信託契約を結ぶには、通常、専門家の関与が必要で、手続きには費用がかかる。裁判所などによる監督はないため、信頼して財産を託せる家族や親族の存在が不可欠だ。

資産凍結リスクを避けるための対策が重要

超高齢化社会が進む現代の日本では、資産凍結は社会問題にもなりつつある。将来のために準備してきた貯蓄や資産を、いざ活用したいときに凍結されてしまうリスクは避けたい。家族や親族、専門家との連携を取って、事前に対策を取っておくことが重要だ。

(提供:大和ネクスト銀行


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