本記事は、山本真司氏の著書『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています。

「組織の常識」は大きく変わった

―だから、あなたのマネジメントは失敗する

そもそも「フラット型組織」とは?
(画像=Gelpi/stock.adobe.com)

そもそも「フラット型組織」とは?

日本企業の従業員のエンゲージメントが極めて低いです

そして、その理由として「時代の変化にマネジメントが追いついていない」ことと、ピラミッド型組織からフラット型組織への転換が必要です。

いわば、私の経験した「ピラミッド型のマネジメントからフラット型のマネジメント」への転換でした。私自身がそれを意識していたわけではないのですが、結果的に、時代の変化を先取りしたマネジメントの変革をしていたことになります。

では、そもそもなぜピラミッド型組織からフラット型組織への転換が必要なのでしょうか。

最初に、これまでの「ピラミッド型組織」と、これからの「フラット型組織」とはどう違うのか、キーワードを挙げていきましょう。

ピラミッド型組織では、上司が部下に命令し、部下はその指示通りに働く。

フラット型組織では、リーダーはチームメンバーの自発性に任せ、そのサポートをする。

ピラミッド型組織では、上司の発言権が一番強く、部下はそれに従う必要がある。

フラット型組織では、立場に関係なく誰もが言いたいことを言う。

ピラミッド型組織では、社員に会社への貢献を求める。

フラット型組織では、チームメンバーに自分自身の成長や顧客・社会への貢献を求める。

ピラミッド型組織では、組織内で部下同士を競争させる。

フラット型組織では、チーム内で助け合いをする。

ピラミッド型組織では、トップが情報を独占する。

フラット型組織では、チームであらゆる情報を共有する。

「トップダウン」だから、いつまでも仕事が終わらない

これを見て、「そんな甘いことで成果が出せるのか」と思う人もいるでしょう。特に、上司の言うことには口答えしない、言われた通りにやればいい、という世界で育ってきた人は、そう考えると思います。かくいう私もそうでした。

しかし、いまの時代を考えると、「そうしなければ成果が出ない」のです。

フラット型組織でないと、チームメンバーは会社に対してエンゲージメントを持つことができません。社員のエンゲージメントが高い企業の業績が良いということは、数字が証明しています。そもそも、エンゲージメントが低い会社の社員はさっさと転職してしまうため、組織自体が成り立たなくなります。

さらにいえば、現代のような変化の激しい時代に、上司が「トップダウン」をやろうとすると、仕事は際限なく膨らんでいきます。そう、私がかつて陥ったように、「いくら仕事をしても終わらない」という状況になってしまうのです。おそらく、多くのプレイングマネジャーの方がこのような状況に陥ってしまっているのではないでしょうか。

そうではなく、リーダーとメンバーが一緒になって、どう結果を出すか、メンバーをどうやって成長させていくかを考える。それがあなたの仕事を減らし、かつ、メンバーを成長させ、業績を向上させることになるのです。

なぜ、このような変化が起きたのでしょうか。その理由は3つあります。

「新世代の登場」「イノベーション」「グローバリゼーション」です。

以下、一つひとつ説明していきましょう。

X世代とY世代、Z世代の「埋めがたい差」

いま、企業で現役で働く人は、大きく3つの世代に分類できます。

58歳から43歳くらいまでを指す「X世代」と、42歳から28歳くらいまでの「ミレニアルズ」とも呼ばれる「Y世代」。そして、27歳以下の「Z世代」の3つです。

どんな時代でもいわゆる「ジェネレーションギャップ」は存在していたはずです。しかし現在、これら世代のギャップはかつてないほど大きく、この三つの世代が同じ組織で働いていることが、組織に大きな齟齬そごを生み出してしまっているのです。

X世代はバブルをギリギリ知っている世代です。日本の一人当たりGDPを世界主要国と比較すると(市場為替レートで評価)、最大になったのは1995年から2000年にかけてのこと。その当時は就職氷河期で、その後もリーマンショックなどの厳しい時代が続きましたが、その上の世代が日本の高度成長時代を経験してきたこともあり、X世代は高度成長時代のマネジメントスタイルで育てられてきた世代でもあります。

一方、Y世代やZ世代はバブルを体験したことがなく、日本経済がずっと衰退し、社会が不安定になっていく時代しか知りません。彼らが体験してきたのは阪神・淡路大震災、9・11、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍にウクライナ戦争です。価値観が違ってくるのも当然と言えるでしょう。

「会社のため」という理屈は通用しない

高度成長時代のマネジメントの下で育てられたX世代の価値観の根本には、「社員は会社のために滅私奉公して働くべき」という考え方があります。いわば「24時間戦えますか」の世界です。

確かに当時は、会社のために頑張って働いて会社が発展すれば、給料も上がるし年功序列で出世もできる。さらに、終身雇用により生活は守られる。社会保障制度も安心して頼れる。つまり、会社のために滅私奉公して働くことには合理性があったのです。ただ、この価値観はそれに続くY世代、Z世代にはまったくといっていいほど存在しません。それも当然で、彼らは日本経済の絶頂期を知らず、企業が相次いでリストラを行い、大企業がもろくも破綻していく姿ばかりを目にしてきたのです。つまり彼らは「会社」を信じていないのです。

だからこそ、「会社のために働け」と言われてもピンとこないし、転職も当たり前。

転職サービスが流行るのもそれが理由です。

「ワークライフバランス」という言葉が陳腐化している

では、Y世代、Z世代の関心は会社の代わりにどこに向いているのか。それは「個人」と「社会」です。

彼らは、ウェルビーイング、つまり幸福な状態、自分が身体的にも精神的も健全な状態を目指すことが重要だと考えています。仕事のために自分の生活が阻害されるのはあり得ないし、辛い思いをしてまで仕事を続けるくらいなら、会社を辞めたほうがいいと考える。

会社も、国も自分の将来の人生を守ってくれないかもしれない。だったら、自分で自分と家族を守らなければいけないと考えるのは自然です。そんな彼らに、「会社のために頑張れ」と尻を叩いたところで動くわけがありません。会社、国への依存心を持ち得ない、自立を余儀なくされた世代です。

彼らにとって、ワークライフバランスという言葉は当たり前すぎて、もはや死語。そもそもこの言葉は、仕事にばかり時間を費やしてきたX世代向けの言葉なのです。

そしてもう一つが「社会」への関心です。デロイトトーマツのによるY世代とZ世代への調査結果で、どちらの世代も社会問題への関心を極めて強く持っていることがわかりました。中でも関心が高いのは高齢化/高齢者の介護、気候変動/環境保護、経済格差といった分野です。

社会問題への関心は、若い世代のほうが一般的に強いものです。彼らのほうが長く、この世界で生きていくわけですから、世界の社会が良い方向に向かっていると思えない現代では、当然の話です。同調査での「環境に関して、取返しが付かない状況であり、損害を修復するには手遅れであるということに強く同意する/やや同意する」という問いに対しては、Y世代、Z世代とも約45%の人が同意すると答えています。

私も若い世代から、「いま手を打たなければ我々は将来生きていけないんです」と言われることがあります。X世代には「環境など関係ない。自社が儲かればいいんだ」という高度経済成長期のスタイルがいまだに残っているかもしれませんが、そのような姿勢はY世代にもZ世代にも受け入れられません。このギャップは若い人から、私ぐらいの年齢層までがともに学ぶ大学院でもよく経験することです。

忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み
山本真司(やまもと・しんじ)
立命館大学ビジネススクール教授。山本真司事務所代表取締役。1958年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、東京銀行入行。シカゴ大学経営大学院(現シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス)にて修士号(MBA with honors、全米成績優秀者協会会員)取得。1990 年、ボストン・コンサルティング・グループ東京事務所入社。その後、A. T. カーニーマネージング・ディレクター極東アジア共同代表、戦略グループアジア太平洋代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを歴任。2005 年、英国ユーロマネー誌より、世界のトップ金融コンサルタントに、日本人として唯一選出される。2009年に独立。早稲田大学大学院客員教授等を経て、現在、立命館大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授、慶應義塾大学大学院非常勤講師として、教育の分野でも活動中。大手企業、経営者団体などに対する講演会多数。著書に、『40 歳からの仕事術』(新潮新書)、『実力派たちの成長戦略』(PHP 研究所)、『20代 仕事筋の鍛え方』(ダイヤモンド社)、訳書に『エンゲージド・リーダー』(英治出版、共訳)など多数。

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