本記事は、山本真司氏の著書『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています。

期間限定「一兵卒」

―チームメンバーのやる気を保ちつつ、情報を集める

期間限定「一兵卒」
(画像=Camerene Pendl/peopleimages.com/stock.adobe.com)

あなたは「残念なマネジャー」になっていませんか?

仮説はスピードが大事。そして、なるべく短期間で的確な情報を得るための方法として、知り合いに連絡を取りまくるという方法を紹介しました。

しかし、社内に頼れる人が少ない、社外の人脈もあまりない、という人はどうすれば良いのでしょうか。そこで一つ、良い「仕組み」をお伝えしましょう。それは、3カ月で仕上げる仕事ならば、「最初の2週間だけ、一兵卒として現場に出る」ということです。

本来的には、マネジャーがメンバーに代わって現場に出るのはご法度はっとです。メンバーがマネジャーに依存する気持ちを生んでしまいますし、責任感があるメンバーの場合はやる気を失ってしまうことにもなります。顧客としても「誰に話をすればいいのか」がわからず、混乱させてしまいます。

だから、3カ月の仕事の「最初の2週間だけ」なのです。プロジェクトがスタートした最初の2週間だけは、一兵卒として現場に出向き、顧客や取引先から真摯にアドバイスや意見をもらうのです。

マネジャーの肩書きを持つ人が自ら出向いて、真摯に意見を聞きに来たら、誰でも結構、胸襟きょうきんを開いて教えてしまうものです。

ただ、ここで極めて「残念な人」がいます。それは、意見を聞きに来たはずなのに、「自分がいかに偉いか」をひたすら語って終わり、という人が意外と多いのです。

「こんなに大きな仕事を任されてしまいましてね」「いやー、こんなに若くしてマネジャーになって、大変なんですよ」など、一見謙虚な言葉を使いながらも、実は自分がいかにエリートかをアピールしたいだけの人がどれほど多いことか。「私も偉くなったでしょう」という自己宣伝に余念のない人には、相手も胸襟を開きません。自分の経験不足を補うために、他人に弟子入りする時の態度は、やはり謙虚な「一兵卒」でなければ駄目なのです。

言葉だけで得られる情報は、意外と少ない

「チームメンバーに情報を集めてもらい、それを集約したほうが速い」と考える人もいるでしょう。しかし、コミュニケーション論を学んだことがある方ならおわかりだと思いますが、情報の伝達において言葉や活字の占める割合は、意外に小さいものです。

実際にはその人の表情や仕草などのほうが、言葉よりも雄弁に語っていることが多いものです。

しかし、メンバーから現場の情報を上げてもらうだけだと、伝わってくるのは言葉のみです。しかも、自分より経験の少ないメンバーが得た情報ですから、相手の言語化されていない情報の解釈が正しいとは限りません。

あなたは、メンバーよりは経験豊富なはずです。現場の人と接し、情報を持っている人と話をして、その表情や仕草が何を意味しているかを解釈する思考回路は、より研ぎ澄まされているはずです。だからマネジャーが「期間限定で」現場に行かなければ、現実はわかりません。

私と同じ職場でかつて働いていた同僚に、頻繁に私の部屋に遊びに来ては、アドバイスを求めてくる人がいました。別に彼に教える義理はないのですが、聞かれると、聞かれたほうは嬉しいものです。先生にでもなった気分で、結構、本気でアドバイスをしてしまいます。

そういう人は、大体、外に出ることをおっくうがらず、愛嬌もあるものです。「自分はマネジャーになったんだ」とふんぞり返らず、こうした謙虚な姿勢を忘れないことが、情報収集の決め手と言えるでしょう。

忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み
山本真司(やまもと・しんじ)
立命館大学ビジネススクール教授。山本真司事務所代表取締役。1958年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、東京銀行入行。シカゴ大学経営大学院(現シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス)にて修士号(MBA with honors、全米成績優秀者協会会員)取得。1990 年、ボストン・コンサルティング・グループ東京事務所入社。その後、A. T. カーニーマネージング・ディレクター極東アジア共同代表、戦略グループアジア太平洋代表、ベイン・アンド・カンパニー東京事務所代表パートナーなどを歴任。2005 年、英国ユーロマネー誌より、世界のトップ金融コンサルタントに、日本人として唯一選出される。2009年に独立。早稲田大学大学院客員教授等を経て、現在、立命館大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授、慶應義塾大学大学院非常勤講師として、教育の分野でも活動中。大手企業、経営者団体などに対する講演会多数。著書に、『40 歳からの仕事術』(新潮新書)、『実力派たちの成長戦略』(PHP 研究所)、『20代 仕事筋の鍛え方』(ダイヤモンド社)、訳書に『エンゲージド・リーダー』(英治出版、共訳)など多数。

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