大企業と中小企業とでは、売上減少の要因や仕組みがやや異なる。その点を理解できていないと、安定した経営基盤を作ることは難しい。資金ショートや倒産を迎える前に、中小企業ならではの障害や分析方法、対策の考え方を押さえておこう。
目次
売上減少はなぜ起こるのか? 取引先に左右されやすい中小企業
中小企業の売上高は、得意先や固定客などの取引先に左右されることが多い。以下のデータは、日本アプライドリサーチ研究所によるアンケート調査(2016年1月実施)をもとに、小規模事業者における売上高の減少要因をまとめたものである。
上記の結果から、半数以上の小規模事業者は取引先の影響を大きく受けることが分かる。中小企業は取引先が限られるため、得意先などが不況や倒産に見舞われると、深刻な売上減少を招くケースもあるようだ。
顧客が離れる要因は? 現状維持で競争力がなくなる仕組み
ヒット商品を開発しても、現状維持を続けるだけでは競争力を失う。消費ニーズや市場環境が変化するにつれて、徐々に顧客が離れてしまうためだ。
ここからは新規顧客と既存顧客に分けて、売上減少の要因や仕組みを解説する。
商品・サービスの知名度が低いと新規顧客は増えない
新規顧客を増やすには、商品・サービスを知ってもらう必要がある。そのため、現状の商品・サービスを提供し続けるだけでは、いくら質が良くても売上は増加しない。
新規顧客を開拓できない要因としては、営業力や販売チャネルの乏しさ、競合の存在などが挙げられる。また、流行に左右されやすい商品・サービスは、ブームが過ぎると潜在客から注目されなくなる。
品質や開発以外の問題を抱えているケースも多いので、まずは新規顧客が増えない理由を分析し、的確なアプローチを目指す必要があるだろう。
既存顧客は「品質・競合・取引先」の変化で離れる
安定した経営基盤を作る上で、一定の売上を見込める既存客は欠かせない存在だ。しかし、長年協働してきた取引先であっても、以下のような事情で自社から離れていくケースがある。
○既存顧客が離れる要因と具体例
品質の劣化:原材料の変更、モチベーションの低下、従業員のスキル低下など
競合の出現:業界大手の進出、コストパフォーマンスが高い競合店など
取引先の都合:景気の悪化、担当者の引越し、病気やケガなど
既存顧客が離れたら、まずは一時的な離脱であるかを確認しなければならない。もし自社側に要因があり、すでに同業他社と取引を始めている場合は、同じように離れていく取引先が増えるためだ。
品質の劣化が要因となっているケースでは、値引きが手っ取り早い対策になる。ただし、客単価が下がると売上減少につながるため、安易な値引きは避けるようにしたい。