絵画保管

思いきって購入したお気に入りの絵画作品。良い状態を保つには、飾る場所と保管方法を工夫する必要があります。

今回は、特に油絵具やアクリル絵具で描かれた平面の絵画作品の保管方法について解説します。上手に保管するには、作品に使用されている素材と絵具の特性に合った保管・メンテナンスを行うことがポイントです。ぜひ参考にしてください。
(TOP画像引用:写真AC)

目次

  1. 絵画の保存状態を悪化させる”大敵”
  2. 絵画の保管に適した環境とは
  3. 倉庫やトランクルームの利用も
  4. 専門業者による絵画保管サービスが安全
  5. 美術品の保管サービスを手がける企業3社を紹介
  6. まとめ

絵画の保存状態を悪化させる”大敵”

油絵具で描かれている絵画作品は、主に亜麻・麻(リネン)の布を木枠に張ったキャンバスが支持体(絵具を塗っているもの)に使われています。

一方、アクリル絵具で描かれた作品は綿やナイロンの布を使ったキャンバスが多いです。そのほか、油絵具とアクリル絵具のどちらにも対応できる木製のパネルに描かれる場合もあります。

絵具も、亜麻・麻・綿などの天然繊維も、木材も時間の経過とともに劣化していくことは避けられません。できる限り良い状態を長い間キープするには、必ず避けたい2つの”大敵”がいます。

それは、カビやシミ、絵画の表面にシワなどを引き起こしてしまう「湿度」と、乾燥や退色(色あせ)、ひび割れや反りの原因となってしまう「紫外線」です。

高温多湿の環境に注意

まず、絶対に高温多湿の環境に絵画作品を飾らないでください。絵具の劣化や、キャンバスにシミやカビが発生してしまう原因になります。

また、絵画が描かれたキャンバスの布(画布)は湿度の変化でわずかに伸縮を繰り返します。その結果、表面にシワが寄り、過度な収縮によってキャンバスの木枠が歪んでしまう可能性があります。

絵画も紫外線が大敵

美術館や博物館で古い絵画作品を観に行ったとき、室内が暗いと感じたことはありませんか? 絵画作品は蛍光灯や日光などの光によって退色が進んでしまうため、できる限りダメージを与えないように部屋の明るさまで配慮した上で展示しているのです。

紫外線は絵具を過度に乾燥させたり、退色のスピードを早めてしまったりする原因になるので、直射日光は絶対に避けましょう。

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絵画の保管に適した環境とは

湿度や紫外線により引き起こされてしまったダメージを補修するのは、専門家でも大変な作業です。できる限り良好な環境で作品を保管しましょう。

絵画のキャンバスを置く理想的な環境は、室内の気温が17℃~25℃、湿度が44%~55%です。気温も湿度もできるだけ一定をキープし続けられる環境が望ましいところです。

さらには照明が明るすぎず、においやホコリの少ないきれいな空気の場所に保管しましょう。押し入れは湿気で結露してしまう可能性があるため、おすすめできません。

保管箱や布製などの袋に入れる

絵画作品は、届いた時に入っていた箱や専用の保管箱、または布や不織布などでできた袋に入れ、空間に余裕をもって保管しましょう。

絵具が載っている面をむきだしにしたままでキャンバスを保管すると、うっかり何かがぶつかった時に表面が破けてしまったり、絵具の表面が強くこすれてはがれてしまったり(剥落)と、作品に思わぬダメージを与えてしまう場合があります。

状態によっては修復が難しいものや、作品の価値を著しく低下させてしまう場合もあるので、細心の注意を払って保管してください。

立てた状態で置く

絵画作品は立てた状態で保管しましょう。また、作品そのものにあまり厚みがない場合(例えば、エディションタイプのシルクスクリーン作品のような紙を支持体にした作品や、まだ額装されていない状態など)は、作品のサイズに合う頑丈なファイリングケースで保管する方法もおすすめです。

保管したままにせず定期的に状態の確認を

季節ごとに押し入れやクローゼットに風を通すのと同じように、絵画作品も定期的に箱や袋から取り出し、風を通してあげましょう。

決まった保管場所に何年もずっと置きっぱなしはせず、ときどき作品を取り出して状態を確認することで、万が一のダメージにもいち早く気づくことができます。

もしシミやカビなどの変化を発見したら、できるだけ早い段階で補修を行なっている専門店などに相談しましょう。対応が早ければ、メンテナンスにかかる時間も費用も軽減できます。

倉庫やトランクルームの利用も

大事な絵を自宅で保管していませんか?価値ある絵画を守る方法を解説

「どうしても自宅には安心して保管できそうなスペースがない」という方や、「自分で保管するのは不安だ」という方は、オンラインで利用できる荷物の預かりサービスや、近隣で借りられる倉庫やトランクルームなどを探し、専用の保管庫として利用することもおすすめです。

使用契約を締結する前には、預けられる品物のルールや月額利用料、サービスの詳細を必ず確認することが大切です。倉庫やトランクルームは必ず屋内型のスペースを選び、保管スペース内部の気温と湿度が絵画作品に適した数値を保たれているかどうか確認しましょう。

また、高価で貴重な作品を預ける場合は、防犯・防火・防災対策が徹底されているかどうか確認しておくと安心です。

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専門業者による絵画保管サービスが安全

大事な絵を自宅で保管していませんか?価値ある絵画を守る方法を解説
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非常に貴重で高価な絵画作品の場合は、美術品の保管サービスを提供している専門業者が安心・安全、かつおすすめです。

美術品の管理や保存、取り扱いに精通したスタッフと、万全のセキュリティ体制を持つ絵画作品の長期保管に最適な気温と湿度、耐震・耐火構造の屋内で手厚く管理してくれるため、個人・法人を問わず多くの方々が活用しています。

月額利用料は預けたい作品のサイズで変動します。もし絵画を手元で飾りたいと思ったら、問い合わせ後に専門スタッフがすぐに梱包・配送するサービスを行う企業もあるなど、利便性の高さにも注目です。

専門業者を選ぶポイント

個人向けに美術品の保管サービスを提供している専門業者は複数ありますが、貴重な作品を預ける場所ですので信頼できるサービスを利用しましょう。

特にポイントとなるのは、作品の特性に合った保管環境が揃っているか、ランニングコストはどのくらいかかるのか、作品のメンテナンスや展示・輸送・売却など様々なタイミングで利用できるオプションサービスの内容でしょう。

例えば、施設内に「燻蒸設備」(美術品をカビや害虫から守るための処理施設)があったり、美術品保管庫の温度や湿度に馴染ませる「シーズニングルーム」を完備していたりと、大型の美術館・博物館と同等レベルの設備やサービスを提供している企業もあります。

契約する前には必ずご自身で各社の特徴やサービス、料金などをしっかり比較して選びましょう。

美術品の保管サービスを手がける企業3社を紹介

大事な絵を自宅で保管していませんか?価値ある絵画を守る方法を解説

(1)寺田倉庫株式会社「TERRADA ART STORAGE」

1975年から美術品の保管事業を手がける寺田倉庫では、預けたい作品のジャンル・サイズや価格に応じたプランやオプションサービスを提供しています。

美術品は1点単位から預け入れでき、オンライン上で管理可能なほか、美術品の国内外の輸送や展示・修復・保険など、美術館・博物館に匹敵するような美術品に関するサービスを受けられることが非常に魅力的です。

https://www.terrada.co.jp/ja/service/category/art/

(2)三菱倉庫株式会社

明治の初めに海運や物流事業からスタートした三菱は倉庫業の歴史も古く、多くの法人・個人が利用しています。その中で、美術品保管サービスは東京・名古屋・神戸・福岡に拠点があり、個人でも月額6,000円代から利用可能です。

耐震、耐火構造の堅牢な建物と、美術品にとって最適な温度・湿度に設定された室内で、特に管理が難しいとされる掛け軸や屏風の作品なども安心して預けられるでしょう。

https://www.mitsubishi-logistics.co.jp/logistics/others/trunk_indivi/fineart.html

(3)株式会社between the arts「COLLET STORAGE

コレクション資産管理アプリ「COLLET」を提供するbetween the artsの保管オプションサービスが「COLLET STORAGE」です。料金は月額で1点あたり400円から。コスト面のメリットも高く感じられるサービスです。

専用倉庫内での保管に加え、利用するプランに応じて専用窓口での問い合わせ対応や補償サービス、購入後の納品の立ち合い、定期的なコンディションチェック、手放したい場合の販売代行まで幅広いサービスが利用可能です。

また、保管のみならず「COLLET」上でコレクション資産として管理ができるのも大きな特長。オークションなどセカンダリーマーケットでの落札実績があるアート作品などは、現在の推定価値を把握することも可能です。

https://lp.collet.am/storage/

まとめ

大切な絵画作品を美しく良好な状態をキープするためには、できるだけ適切な気温と湿度を一定に保つことができる空間で紫外線を避けること、そして室内で保管する場合は専用の箱や袋に入れて立てた状態で置くことが大切です。

自宅に安心して保管できるスペースがない場合は、倉庫やトランクルーム、特に美術品の保管を専門に行っている企業のサービスの利用を検討しましょう。

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