ピカソやアンディ・ウォーホル、バンクシーなど、名だたる美術作家の作品が「オークションにて過去最高額で落札された」というニュースを目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
「アートオークション」というと一部の富裕層だけが参加できる世界、というイメージを持たれるかもしれませんが、実は数万円から入札に参加できる作品も多数出品されています。
また、普段は購入が難しい超人気作家の過去作品を運よく手にできるチャンスもあるなど、オークションならではの魅力もあります。
この記事ではアートオークションの仕組みや参加方法のほか、日本国内の主なアートオークションについてご紹介します。
(TOP画像引用:
アート作品に注目が集まる理由
2023年3月の世界の美術品の売上高は、前年比 3% 増の推定 678 億ドル(約9兆円)に達し、2019年のパンデミック以前の水準を上回るほどの回復を見せました。
そのうち、日本のアート市場規模は世界のわずか1%(約6億7,800万ドル、約900億円)の規模と推定されており、まだまだ伸びしろの大きい市場と言えるでしょう。実際、日本国内では企業経営者や富裕層の間でアート作品をコレクションする動きが活発です。
その背景には、アート作品がオークションに出品されて価格が急上昇する状況を知り、投資対象としてアート作品を入手したいというニーズもあると考えられます。
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アートオークションで作品を購入するには?
アート作品を購入するには、
・プライマリー(一次流通)のギャラリー
・セカンダリー(二次流通)のギャラリー
・コミッションワーク(オーダー制作を依頼)
・アートオークション
など、さまざまな方法があります。
今回は、国内のアートオークションで作品を購入する方法を詳しく解説します。
開催スケジュールをチェック
日本国内には多数のオークションハウスが存在しています。オークションに興味をお持ちの方は、まずいつどんなジャンルのアートオークションが、どのオークションハウスで開催予定なのか、スケジュールを確認しましょう。
各社の公式ホームページには、開催スケジュールと出品される作品のジャンルが紹介されています。各社は得意分野を持っているので、入手したい作家や作品のジャンルが決まっていれば、それらを得意とするオークションハウスの情報を確認すると良いでしょう。
下見会に参加
アートオークションでは、事前にすべての出品作品が下見会で公開され、入札希望者は実物の作品の状態を直に確認できます(招待制の場合もあります)。
合わせて、公式サイト上に出品作品の画像が掲載される(掲載可能な作品に限る)ため、下見会の会場へ直接足を運べない場合は、画像で確認したり、オークション会社へ詳細を問い合わせたりすることも可能です。
また、出品作品の写真や情報などが掲載された分厚い冊子(オークションカタログ)もあり、オークション会社によっては希望者に無料配布しています。
オークション当日までに、リザーブプライス(Reserve Price/最低売却価格)の有無を確認したり、エスティメート(Estimate/オークションハウスが査定した落札予想価格)を確認して予算を検討したりと、参加の準備をしましょう。
参加登録~入札
出品作品の下見のみであれば事前登録は原則不要ですが、入札に参加したい場合は決められた期限までにアカウント登録や決済で使用するクレジットカードなどの情報を登録する必要があります。
オークションの開催時にリアルタイムで入札する「ライブオークション」への参加方法は、主に電話・オンライン・FAX・書面での事前入札による4つです。
落札後の流れ
入札は先着順での受付で、各ロットにおいて最高額の入札をもって落札となります。落札価格に応じた所定の手数料と作品の梱包・輸送費などが加算された金額がオークション会社から請求されます。
指定された期日までに代金を支払えない場合には、残念ながら落札が取り消されてしまうため、予算に余裕を持って入札に参加しましょう。
アート作品が取り引きされている国内のオークション7選
ここからは、国内を代表するアートオークションを7つご紹介します。様々なジャンルを網羅的に手掛ける大手オークションから特に注力しているジャンルを持つオークションまで、各社の特徴も合わせて解説します。
(1)iART auction(アイアート株式会社)
2008年に設立したアイアート株式会社は、今回ご紹介する5社の中では比較的新しいオークション会社です。
しかし、設立からわずか10年後の2018年に、パブロ・ピカソが愛人だった写真家ドラ・マールをモデルに描いたとされる連作『泣く女』のうちの1点が、アイアート社主催のオークションに登場。当時の国内最高額である10憶円という異例の高値で落札され、大きな話題となりました。
また、2023年2月にもポール・セザンヌの『Sous-Bois(森)』が1億6,000万円で取引されたことも記憶に新しいところです。
iART auctionは日本画や古書画、近代工芸などの日本・東洋美術や、西洋絵画や西洋の骨董品、現代アート、中国の絵画や工芸、ジュエリー、時計まで幅広いジャンルを扱っています。同オークションへの参加方法は、会場もしくは電話・書面での入札です。
(2)SBIアートオークション(SBIアートオークション株式会社)
2011年に設立したSBIアートオークション株式会社は、今回ご紹介する5社の中では最も新しいオークションハウスです。
主に20世紀以降のコンテンポラリーアートを中心に、モダンアートや写真・デザイン・工芸などのジャンルを得意としており、日本のアートマーケットを象徴する作家の作品に加え、国内オークションへの出品が少ない海外作家の作品も積極的に紹介しています。
登録顧客の国籍は50ヶ国以上(※2022年4月現在)で、落札者の約3割を海外顧客が占めるなど、国内随一の国際性を持つオークションと言えるでしょう。
2023年3月に「アートフェア東京2023」の会期中に開催されたオークションでは、井田幸昌『Picasso』が5,520万円、草間彌生の『かぼちゃ (B.H.T)』が1億7,250万円とそれぞれ高値で落札されました。
https://www.sbiartauction.co.jp/
(3)シンワアートオークション(Shinwa Auction株式会社)
Shinwa Auction株式会社は、1987年に美術品の業者交換会「親和会」からスタートし、今や国内のアートオークション運営企業の中で唯一の上場企業として、多くの出品者・落札者から信頼を集めています。
現在は西洋美術、近代美術、近代陶芸、戦後美術のほか、漫画、ワインなどの酒類まで非常に幅広いジャンルの品々を取引しています。
また、業界内でいち早くライブビットのオンラインオークションをスタートさせたり、NFTアートやメタバース事業を展開する子会社を立ち上げたりと、新たなビジネスの時流に沿った事業開発にも積極的です。
2022年に羽田空港・保税蔵置場を活用して開催した特別オークションでは、アンディ・ウォーホル『Silver Liz(Ferus Type)』が国内オークション最高額の記録を大きく更新する23億円で落札され、大きなニュースとなりました。
https://www.shinwa-auction.com/
(4)毎日オークション(株式会社毎日オークション)
株式会社毎日新聞社の関連会社内における美術事業部として、1973年に創業した株式会社毎日オークション。今回ご紹介する5社の中で最も歴史が長く、かつ大規模なオークションを運営しています。
取り扱う作品は、国内外の作家による絵画、版画、彫刻、骨董品、ジュエリーや時計など、ジャンルも出品点数も国内最大級。
自社で専用のオークション会場を保有し、オンラインでのライブオークションと並行しながら、年間30回以上開催されるオークションでは、1回あたり平均1,200点もの膨大な作品が売買されています。
会場での下見会の後にオークションが開催されるので、会場でそのまま入札に参加できるほか、オンラインでのライブビットで参加も可能です。
(5)マレット アートオークション(株式会社マレット ジャパン)
近代から現代の美術品を中心に扱うオークションハウスとして、2005年に設立された株式会社マレット ジャパン。
東京の自社会場で年間4~5回ほどオークションが開かれ、ピカソ・ミロ・シャガール・ビュッフェ・草間彌生・奈良美智・村上隆・李禹煥・ロッカク アヤコら著名アーティストのほか、次世代を担う作家の作品が毎回約200点以上出品されています。
同社はオークションやプライベートセール(相対取引)のほか、顧客の要望に応じて、保有するアート作品の資産価値を査定する「美術品時価評価サービス」も実施している点がユニークと言えるでしょう。
創業時からいち早く海外マーケットの拡大を実現させ、アメリカ・フランス・中国・シンガポールなど欧米からアジアまで世界各国に顧客がいます。
(6)NEW AUCTION(株式会社New Auction)
New Auctionは、2022年に設立され、若手や注目の現代アーティストの作品を積極的に紹介しています。
同社の特長は、アートマーケットの持続的な循環を促すため、落札された作品の売上金の一部をアーティストなど著作権者に還元する国内初の「アーティスト還元金制度」を導入している点。また、原則として制作または発表から2年以内の作品はアーティストまたは取り扱いギャラリーの承認なしには出品しないとのことです。
2022年11月に開催した最初のオークションで、約5.5億円の落札総額を記録しました(落札率95.3%)。その際、最高落札価格は、ジョージ・コンドの《Little Ricky》(2004)。8000万円〜1億5000万円の予想落札価格に対し、1億3800万円で落札されました。
また、2023年1月に開催した第2回オークションでも、好調な結果を残しています。
(7)Artfield Artists(株式会社Artfield)
2022年に第一回を開催した「Artfield Artists」は日本初となる“ダッチオークション形式”を採用しています。ダッチオークションとは、最高価格から順番に呼び値を下げていき、最初に買い手がついた価格で売買が成立するオークションの形式です。通常のオークションで買い手側が価格をつり上げていく「イングリッシュオークション」に比べ、取引が高速化できるというメリットがあります。
若手作家支援のため、売り手手数料2~5%と出品がしやすくなっています。また出品者に関係なくアーティストに落札金額の1%を還元しています。不落札の場合の出品手数料はかかりません。
初回は、岡崎実央や上野裕二郎、福井江太郎、中島健太など国内作家15名の作品22点の作品が出品され、そのすべてが落札となりました。
今後は、抽選販売や先着順販売などの販売方式のひとつとして、ダッチオークションによる販売の一般化を目指し、このオークションの仕組みをレンタルするサービスも開始する予定とのことです。
https://artfield.jp/artfield-artists
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アート作品を購入するメリット・デメリット
オークションなどを活用して高額なアート作品を購入・所有することには、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
よく挙げられるメリットは「国内外のアートマーケットにおいて、自分が購入した作品や作家の評価が向上し続ければ、将来的に資産価値の向上や節税効果が期待できる」点です。
一方で、作品の価値が横ばいまたは下落する可能性も否定できません。また、日本は欧米諸国と比較すると、相続時やミュージアムへの寄附を行う場合、税制面の優遇措置が乏しいことも課題に挙げられます。
加えて、作品を売りたい場合に手続や売買に時間がかかるため、すぐに換金しづらい点もデメリットと言えるかもしれません。
まとめ
アート作品を購入して自宅に飾るという体験は、ただ作品を見るだけでは実感できなかった「アート作品をより深く、身近な存在」として鑑賞できるという大きな魅力があります。
年々、投資対象としても注目が高まるアート作品。実は誰もが参加できるアートオークションで、お気に入りの作品を手にしてみてはいかがでしょうか。
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