近年は休廃業・解散の件数が増加傾向

近年、企業の休廃業・解散の件数が増加傾向にあるといわれている。企業の休廃業・解散の件数の推移をデータから確認してみよう。

近年における中小企業の休廃業の動向

中小企業庁が2023年4月に公表した「2023年版中小企業白書」にある株式会社東京商工リサーチの「2022年『休廃業・解散企業』動向調査」によると、2022年の休廃業・解散件数は4万9,625件で前年比約11.8%の増加となっている。

同じく株式会社帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2022年)」では、2022年休廃業・解散件数は5万3,426件で前年比約 2.3%の減少となっている。株式会社東京商工リサーチと株式会社帝国データバンクのデータに差が見られるが、休廃業・解散件数が高水準で推移していることには変わりはない。

「2023年版中小企業白書」にある株式会社東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」では、2022年の倒産件数は6,428件となっており、休廃業・解散件数は倒産件数の7倍以上の高水準で推移していることがわかる。同じく中小企業白書にある株式会社帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022年)」によると後継者不在率は、2017年の66.5%をピークに減少傾向にある。

2022年では57.2%と調査を開始した2011年以降、初めて60%を下回った。しかし休廃業・解散企業の半数以上が黒字経営であったデータもあり、後継者不在が廃業を選ぶ大きな要因となっていることが考えられる。

経営者が廃業を選ぶ理由

経営者が廃業を選ぶ主な理由は、以下の3つが考えられる。

  • 後継者不在
  • 財務内容の悪化による経営不安
  • 資金繰り悪化による倒産懸念

・1.後継者不在
中小企業の事業承継は、親族内承継が多い傾向だ。しかし企業経営のリスクを恐れて息子など経営者の親族が後継者となることを希望しないこともある。なかには、後継者が見つからないことを理由に廃業を余儀なくされている企業もある。経営状態が悪い企業であれば、経営者のなかには「親族に同じ苦労をかけたくない」と考える者もいるだろう。

経営者の親族に事業承継するのであれば、後継者育成のために候補者に業務経験を積ませることが必要だ。また自社の社員から後継者を選ぶのであれば社内・社外への周知、経営参加など経営者としての経験を積ませることが重要となる。いずれにしても早い段階から後継者候補を決めて、後継者育成をしていかなければならない。

・2.財務内容の悪化による経営不安
経営状態の悪化により赤字体質の経営が続くと企業の財務上の負債が資産を上回り、債務超過に陥る可能性がある。企業の財務状況が債務超過となれば、金融機関から融資を受けることが困難となるだろう。資金調達に支障が生じるため、経営状態が不安定となる。経営状態が不安定な企業の後継者となるには、相当な覚悟が必要だ。

・3.資金繰り悪化による倒産懸念
資金繰りは、企業経営上最も優先すべきことの一つだ。資金繰り悪化により取引先への支払いや金融機関への返済が困難となれば、倒産の危険性が高まる。注意すべき点は、黒字経営の企業でも資金ショートを起こすと「黒字倒産」に陥ることがありえることだ。資金繰りの悪化は、売上発生から売上代金の回収までサイト、つまり現金の回収までに時間がかかることが原因となって発生する。

そのため企業は、黒字経営でも資金繰りの悪化によって倒産することがある点は押さえておきたい。資金繰り悪化の兆候があれば、取引条件を見直し、早急に資金繰りの改善に取り組むことが必要となる。