廃業を回避する方法

後継者不在を理由に廃業をする企業が多いが、廃業を回避する方法も検討すべきだ。廃業を回避する方法には、主に以下の3つが考えられる。

  • 従業員等自社企業の生え抜きへの承継
  • 経営改善・事業再生
  • 第三者承継・M&A

従業員等自社企業の生え抜きへの承継

事業承継は、なにも親族内承継だけではない。自社の役員や従業員などから有能な候補者を選び事業を承継することも可能である。自社企業の生え抜きなど従業員から後継者を選べば、業務に熟知しており、社内の混乱を避けることができるだろう。生え抜きであっても経営者としての経験を積ませることは必要だ。

しかし社内・社外への対応、業務の専門的な知識の有無という点では、社内の人物を後継者にするのが最も適している。

経営改善・事業再生

企業が経営難の場合は、経営改善・事業再生を図ることが必要だ。赤字体質ならば「収益力の強化」、資金繰り悪化であれば「取引先との取引条件の見直し」などで資金繰りの改善を図り、経営を安定させることが重要となる。自社努力を尽くしても経営改善が困難な場合は、金融機関での返済条件の緩和や債務減免などの支援を受ける方法も選択肢の一つだ。

また赤字部門の事業を事業譲渡で売却して売却益を黒字事業の拡大に充てるなど、M&Aによる一部事業譲渡により経営を効率化し、改善を図る方法もある。

第三者承継・M&A

M&Aによって第三者の企業に事業承継する方法は、近年中小企業においても増加している。後継者不在により廃業する企業が多いなかで、中小企業においてもM&Aの成功事例は多い。M&Aを選ぶメリットは、株式譲渡などによる売却益によって現経営者に金銭が残ることが挙げられる。相手企業(買い手)にとっても後継者教育が不要になったり比較的短期間で事業承継ができたりするなどメリットは多い。

また後継者不在が問題なだけで事業経営自体が順調であれば、売手側に良い条件で交渉することが可能となる。買い手にとっても事業を承継しただけで利益を生み出してくれる企業の価値は高く、黒字企業であるほど魅力的な企業に映るだろう。そのためM&Aで提示される金額も高額になりやすいといわれている。

将来を考えて幅広い選択肢を

経営者が廃業を選ぶ理由には、後継者不在、財務内容の悪化による経営不安、資金繰り悪化による倒産懸念などさまざまなことが考えられる。廃業を回避するには、自社の問題点を把握・分析し、状況に合った方法を選択し、早い段階で手を打たなければならない。将来的な経営の見通しが厳しい企業は、経営が悪化する前に廃業の選択をすることも一つの方法である。

倒産とは異なり必ずしも悪い結果ばかりではない。早期に対処することで、経営者の手元に資産を残すことも可能となるため、幅広い選択肢を持っておくとよいだろう。

加治 直樹
著:加治 直樹
特定社会保険労務士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。銀行に20年以上勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務を行う。退職後、かじ社会保険労務士事務所を設立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能であり、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。
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