相続対策としての事業承継税制

―相続対策として事業承継税制の活用はメリットが大きいですか?

納税猶予のリスクを考えると、株価が高いときに承継してしまう事態は避けたいです。先代への退職金の支払いなども含め、長期的にプランニングをする必要があるでしょう。事業承継対策は税対策だけではなく、主眼は事業の承継ですので、5年から10年程度の中長期のプランニングをすべきでしょう。

相続対策の鉄則は、計画的に贈与すること。累進課税のデメリットを抑えるには、長い期間で承継するのが一番よいのです。例えば、総額1千万円を1年でもらうと税金が231万円かかるところ、10年だとゼロで済みます。また、相続時精算課税制度といって、子供が本来お金が必要となる時期に前もって贈与する制度もあります。納税は相続時の最後に。80代の親から60代で相続するより、40代など本当にお金が必要な時期に贈与することが出来る制度です。国も推進しており、令和5年度税制改正でも拡充されています。

―事業承継税制を活用したいと思ったら、どこに相談すればよいですか?

まず相談すべき人は税理士。ほかにも東京商工会議所や地域金融機関などの認定支援機関に窓口があります。

税理士でも事業承継税制の仕組みを正確に理解している人は一部です。「特例制度を使いたいです」と相談したとき、「わかりました」や「いいですよ」という返事だけでなく、「特例承継計画を出しますか」とか「免除ではなく猶予ですよ」と助言があるか、「特例制度が御社にはまらない場合もあるので、他のスキームも一度検討しましょう」とメリット・デメリットを解説してくれる人なら信頼できると思います。

80歳の社長が55歳の後継者に承継をしたら、あっという間に次の承継を考える時期を迎えます。代々どうするのかなど、長い目で税金だけでなく経営を含めた承継全体のサポートができる人にお願いするのが良いでしょう。

取材・文:M&A Online

M&A Online

(画像=ビジネス・ブレインの畑中孝介CEO・税理士、「M&A Online」より引用)

畑中孝介(はたなか・たかゆき)さん
株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役・税理士
北海道長万部町出身。1996年横浜国立大学経営学部経営情報学科卒業。1996年武藤会計事務所(現税理士法人無十)入所。2015年ビジネス・ブレイン税理士事務所設立。2020年BBHD(ビジネス・ブレインホールディングス)設立