広電で行く宮島崇拝の原点 地御前神社(広島県廿日市市)

広島電鉄(広電)で行ける神社と言えば、世界遺産の厳島神社が定番。しかし、広電宮島線の終点・宮島口駅から連絡船に乗って対岸の宮島まで渡らなくてはいけない。つまり、厳密に言えば「路面電車で参拝できる神社」ではない。そこでおすすめなのが、厳島神社の外宮である地御前神社だ。

JR広島駅南口(在来線改札方向)前の広電乗り場から宮島口行き電車に乗る。途中、自動車に挟まれるようにして広島市内の繁華街や市街地を通り抜け、広電西広島・己斐駅に到着。ここからは道路上の併用軌道を走行しない鉄道線となるが、軌道線(路面電車)と直通運転をしているので乗り換えの必要はない。広島駅を出て1時間4分で地御前駅に到着する。

広島駅から並行するJR山陽本線を利用し、途中の新井口駅か五日市駅で広電に乗り換えれば46分で到着する。お急ぎの方は、そちらのルートを。ただ、せっかくの初詣、のんびりと広電に揺られながらお正月の沿線風景を楽しみたい。

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(画像=地御前神社前を通過する広電のトラム、「M&A Online」より引用)

下車した地御前駅から徒歩10分ほどで地御前神社に着く。現在も宮島は「聖地」だが、かつては島そのものが「神」とされ、一般人の上陸は許されていなかったという。「神」である宮島を崇拝するため、対岸に建立されたのが地御前神社なのだ。

創建は厳島神社と同じ593年。1168年の「伊都岐島社神主佐伯景弘解」によると、境内には19もの殿舎が立ち並ぶ荘厳な神社だったと伝えられている。後に宮島への渡航が一般開放されると参拝客は厳島神社へ向かうことになり、現在は「拝殿」(1914年再建)と「本殿」(1760年再建)、祭神と縁故の深い神を祀った摂末社の「客人本殿」(同)の三つを残すのみの静かな神社となっている。

宮島崇拝の拠点だっただけに、地御前神社と厳島神社、弥山にある奥宮の御山神社は直線で結ばれる位置にある。江戸時代までは神社が海に直接面しており、拝殿のすぐそばまで船で入ることができた。目前の海中には鳥居が建ち、さながら厳島神社のコピーだったようだ。

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(画像=かつて上陸を禁じられた宮島の厳島神社を崇拝する霊場として栄えた地御前神社、「M&A Online」より引用)


祭神は厳島神社と同じ市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、湍津姫命(たぎつひめのみこと)。いずれも女性の神様だ。主祭神の市杵島姫命は天照大神とスサノオの誓約の際に、アマテラスがスサノオの剣を噛んで吹き出した霧から生まれた三女神の三女。絶世の美女とされ、商売繁盛、芸能、金運、勝負、豊漁、交通安全、五穀豊穣、海の神として信仰されている。

最寄り駅の地御前駅から宮島口行きの広電に乗れば、3駅で宮島ボートレ―ス場駅。開催日であれば地御前神社でご利益の勝負運をつけてレースに興じるのも一興。さらに1駅先は終点の広電宮島口駅。そこから宮島に渡って厳島神社、同神社を見下ろす弥山山頂に平清盛が奥宮として建立した御山神社も参拝すれば、世界遺産の宮島初詣もコンプリート(完全制覇)だ。

厳島神社へは広電宮島口駅からフェリーと徒歩で約20分。御山神社は宮島ロープウェー獅子岩駅から、弥山本堂経由で徒歩約30分。

文:M&A Online