本記事は、土井英司氏の著書『人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。
世界一の投資家、ウォーレン・バフェットの生い立ちと投資哲学
『ビジネスは人なり投資は価値なり』
(ロジャー・ローウェンスタイン ビジネスバンク・訳/総合法令出版)
世界で最も尊敬される投資家、ウォーレン・バフェットの生い立ちと投資哲学を紹介した一冊が『ビジネスは人なり投資は価値なり』です。
この本の表紙には、バフェットの驚異的なリターンを、こう記しています。
もしあなたが1956年にバフェットに1万ドル(150万円)投資していたら、今日それは8,000万ドル(120億円)になっているだろう。
この本が出された後もバフェットの資産は増え続けたので、おそらくそれ以上になっていると思います。
ウォーレン・バフェットは、幼い頃から変わった子だったようで、この本にはこんなエピソードが紹介されています。
ウォーレンは当時の父親のビジネス・パートナーだったカール・フォークの家に昼食をごちそうになりにいくことが多かった。ある日奥さんが作ったチキンヌードル・スープを食べているとき、「僕は30歳までに億万長者になるんだ」「もしできなかったら、オマハでいちばん高いビルから飛び降りるよ」
といった。フォーク夫人は驚いて、二度といわないようにたしなめた。彼女は、ほかの者がまだしたことのない質問をウォーレンにした。
「ウォーレン、なぜそんなにお金が欲しいの?」
ウォーレンの答えはこうだった。
「お金が欲しいんじゃないんです。お金を稼いだり、それが増えていくのを見るのが好きなんです」
その言葉通り、ウォーレン・バフェットは、お金持ちになってもお金を使うことを好まず、いくつかの武勇伝を残しました。
- 1958年に3万1,500ドル(約472万円)で購入したネブラスカ州オマハの自宅に今でも住んでいる。
- 奥さんが1万5,000ドルかけて家具を買いそろえたときには、「もし、投資に回していれば、このおカネが20年後にはいくらになっているか想像できるかい?」と言った
- 子どもにお金を貸すときは、正式な金銭貸借契約書を書かせた
この本には、バフェットを支えた父の哲学と、その後出会う師匠ベンジャミン・グレアムの教え、そしてバフェットがどのようにして自身の投資哲学を確立していったか、そのプロセスが書かれています。バフェットの父の哲学は、こうでした。
「偉大な人物は、群衆のなかにあり孤高の精神を持ちつづけることができる人物である」
(エマーソンのマキシムより)
コロンビア大学で師と仰いだベンジャミン・グレアムもストイックな人物でした。グレアムの方法論は、「割安株を探せ」というもので、今では「バリュー投資」として知られています。バフェットは師を尊敬しながらも、そのやり方に反発し、自身の投資法を確立していきます。
店舗網や顧客の選好、サービスなど、バフェットは企業の「隠された価値」を積極的に評価して、投資していきます。それもいわゆる「分散投資」なしで。
「卵をいくつかのカゴに分けて保管しなくとも、注意さえしていればすべてを壊してしまうことはない」というのがバフェットの主張でした。
倹約をモットーとし、常識とは違う考えで、見えない価値に投資する。優れた投資家の資質が、ここから見えてきます。
「投資で一発当てたい」人からすれば、あまりにイメージからかけ離れたストイックな姿勢ですが、大金持ちになる人というのは、こういうものなのだと思います。
メールマガジン『ビジネスブックマラソン』編集長。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。ゲーム会社、編集者・取材記者・ライターを経て、Amazon.co.jp立ち上げに参画。27歳で同社の社長賞にあたる「Company Award」を受賞。数々のベストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。2004年、30歳で独立。国内160万部、世界1400万部を突破した『人生がときめく片づけの魔法』の近藤麻理恵氏をはじめ、多くの著者の出版プロデュースに携わる。
2004年7月に発行開始した日刊のメルマガ「ビジネスブックマラソン」は読者数5万3000人。著書に『「伝説の社員」になれ! 』(草思社文庫)など多数。これまでに読破したビジネス書は30,000冊を超え、日本随一のビジネス書の目利きとして知られる。(数字は2023年12月現在)※画像をクリックするとAmazonに飛びます。