本記事は、土井英司氏の著書『人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。
【重要スキル】 話し方
わかりやすく話すための3段ピラミッド
『1分で話せ』
(伊藤羊一/SBクリエイティブ)
わかりやすい話し方という点で言えば、おそらくこの『1分で話せ』は過去30年間でナンバー1の本ではないでしょうか。
この「結論」+「根拠」+「たとえば」という型は、デキる人ならみなやっていることですが、なぜかこんなにシンプルにまとめた人はこれまでいませんでした。
まるで清少納言に「春はあけぼの」「夏は夜」と言われたぐらいのやられた感がありますね。
この『1分で話せ』は、かつてソフトバンクアカデミア国内CEOコースで年間1位の成績を収め、その後LINEヤフーアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長を歴任する著者が、その伝え方の技術をまとめた1冊です。
「1分でまとめる」技術は、いろんなところから出されていますが、この本ほど仕事におけるコミュニケーションの本質を突いた本も珍しいと思います。
コミュニケーションのゴールが「相手を動かす」ことであることや、「相手の身になる」ための具体的要素とは何か、論理的なプレゼンに欠かせない述べ方の順番など、大事なことが過不足なく書き込まれています。
まずは、「結論から話す」について見ていきましょう。
- 企画を通す場合などにおいて、「こういう企画です」ということと「これは売れます」ということと、どちらが結論なんだ? と思われませんか? 正解は「これが売れます」が結論です。もっといえば、「これは売れます。だからやりましょう」が結論です
次に、「根拠を示す」際のポイントを見てみます。
- 「主張と根拠を言う時、聞いている人にとって、意味がつながっているとすぐにわかるようにする」ことが大事です。この、「主張と根拠の意味がつながっている」のが、ロジカルということです
この「主張と根拠のつながり」と同様に大事なのが、根拠を示しすぎない、ということ。この本のなかで、「話が長い人」の問題点を指摘した部分を読んでみましょう。
- 話が長い人は、根拠をたくさん話します。「あれもよくて、これもよくて……」。会話ならいいですが、仕事では、たくさん言うと、かえって印象に残らなくなります。「あぁなんかたくさん言ってたね」という感じです
こういった点に気をつけて、「結論」→「根拠」→「たとえば」の3段ピラミッドをつくれば、話は伝わりやすくなります。「それだけ?」と思われそうですが、それだけなのです。ぜひ試してみてください。
【重要スキル】 話し方
知的人間になるための思考法と行動習慣
『頭のいい人が話す前に考えていること』
(安達裕哉/ダイヤモンド社)
「話し方」の最後に、「深い」と思われるための話し方です。紹介するのは、ベストセラー『頭のいい人が話す前に考えていること』(安達裕哉/ダイヤモンド社)です。
この本の著者は、デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て、マーケティング会社「ティネクト株式会社」を経営する人物。
話し方の本というと、いわゆる「型」を示すものや、ちょっとしたTips(ヒントや秘訣)を述べる本が多いのですが、それらの本の弱点は、相手や状況が変わると通用しないこと。
逆に言えば、相手のニーズや人間性、置かれた状況を正しく把握できないで「型」を使うと、思わぬトラブルを引き起こすこともある、ということです。
そうならないために大事なのは、相手のニーズや思いを想像すること、よく聞くこと。そして議論になった際、忘れがちですが、議論の奥にある、本質的な課題を見極めることです。
この本では、「頭のいい人が話す前に考えていること」を整理し、知的人間になるための思考法と行動習慣を伝えています。
なかでも、「話を深くする2つのコツ」、「言葉の定義や成り立ちを考える」、「整理しながら聞く技術」などは、知的活動の基礎ともいうべきものです。
ここは、ぜひマスターしておきたいところです。
まずは、どうして話が「浅く」なるのか、著者の考えを見ていきましょう。
話が浅くなる3つの理由
- 根拠が薄い
- 言葉の「意味・定義」をよく考えずに使う
- 成り立ちを知らない
逆に言えば、この3つを避けるだけで「浅い」とは思われなくなります。
それでは話を「深く」するにはどうしたらいいのでしょうか。
話を深くする2つのコツ
- 自分の意見と真逆の意見も調べる
- 統計データを調べる
ネットや文献から、述べようとするテーマについてどんな反対意見があるかを調べましょう。
安易に「多い」「少ない」と述べるのではなく、実際のデータがどうなっているのか、公式サイトやシンクタンクのレポートをチェックしてみましょう。
また、こんなヒントも示しています。
- 成り立ちを知ることで人と違うアイデアも深い議論も生まれる
物事の成り立ちや歴史を知ることで、今のモノの見方を離れ、斬新なアイデアが生まれる。組織や地域のルーツに根ざした、深い提案ができる。
こんなことができたら、理想的ですよね。
あなたの話が「深い」と思われるためにも、ぜひ読んでみてください。
メールマガジン『ビジネスブックマラソン』編集長。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。ゲーム会社、編集者・取材記者・ライターを経て、Amazon.co.jp立ち上げに参画。27歳で同社の社長賞にあたる「Company Award」を受賞。数々のベストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。2004年、30歳で独立。国内160万部、世界1400万部を突破した『人生がときめく片づけの魔法』の近藤麻理恵氏をはじめ、多くの著者の出版プロデュースに携わる。
2004年7月に発行開始した日刊のメルマガ「ビジネスブックマラソン」は読者数5万3000人。著書に『「伝説の社員」になれ! 』(草思社文庫)など多数。これまでに読破したビジネス書は30,000冊を超え、日本随一のビジネス書の目利きとして知られる。(数字は2023年12月現在)※画像をクリックするとAmazonに飛びます。